見出し画像

私と確かに一緒にいた人

中目黒に、自分の好きな香りを何種類か選び、それを上手い具合に調合して、1つのオリジナル香水を作ることができるお店があることを、去年あなたに教えてもらった。

2日に一度のペースであなたのアパートに泊まりに行っていた私は、単行本や雑誌や少しのレコードが、綺麗に整頓されている棚の小さなスペースにあるその香水をみて、小さなあなたの分身だと思った。私にとっては価値のある特別な。

あなたのインスタを毎日チェックするのは日課になっていて、そこに大きな変化がないと、ほっとする。あなたをタグ付けした投稿までしっかりと抜かりなくチェックする。よし、今日も変化なし。

目に見えなければ、それでよかったんだと思う。
見えなければ、心がざわざすることはない。
私が知らない世界で、あなたが誰といようとなにをして何を思っていようと、
なにがダルくて、なにがウザくて、なにが楽しくて、なにが辛くても。
初めてみるその女の子は、私と同い年で、誕生日プレゼントであろう見覚えのあるラベルの香水を、インスタグラムに載せていた。あなたのページに飛ぶことができる、タグ付きで。

私といたあなたはどこに行ってしまったのか?
確かに間違いなく、あのアパートの部屋に居たのは私で、あなたの小さな分身をみていたのも私で、こんな香水を中目黒で作れることを教えてもらったのも、一緒に作りに行こうと言われたのも、私だったはず。

香りは消えてくれないんだよな。なかなか。

私もひとつ、私の分身を作りました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?