祭りの日

金木犀が咲く頃この村には雨は降らない

その匂いは太陽とともにぎらぎらと熱くなり

匂いを飲み込んだひとびとの喉元には太陽が蓄えられる

小さな黄色の花を星にみたて

ひとびとは酒に花びらをつけて飲みほす

そうやって世界を体にとりいれ

村の祭りを迎える

祭りの日には雨は降らない

村の神はひとびとを待っている

アキツヒメが守ってくれるので

大勢が船で祭りにやってきても

もろもろの穢れは海底でじっとしている

くすの木が光を連れてくる

あこうの木が風を連れてくる

子供たちは化粧をして大人になり

大人たちは踊り子供になり

とうに肉のない魂も

笛や太鼓にぴったりと寄り添っている

獅子舞が少年を飲み込もうとするとき

村は生まれ変わる

私たちは村の神と一緒に生まれ変わる

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