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【働くあのひと case.6】もっと好きになる

6人目は、広告代理店で働く鈴木 野々子さん(通称:ののたそ。わたしはさらに略して「たそ」と呼びます) 早稲田大学で出会った、ひとつ年下の後輩です。社会人一年目ですが、持ち前の明るさでバリバリ働くしっかり者!

―まずは、たそのお仕事について教えて!

総合広告代理店で「デジタルソリューション」という部署で働いています。
わたしがいるチームは、その中でも「システムソリューション」に特化したところなので、広告代理店の中でも、広告っぽくない分野というイメージがあるのかもしれないですが……。

たとえば、IoTやAIなどのテクノロジーを使って、アプリや新規サービスを作っています。
広告の中にあるデジタルの領域で、世の中にまだないサービスや企画を作りだすお仕事です!

―どうしてこの業界で働こうと思ったの?

小さな頃から、なにかを作ったり企画するのが大好きだったんです。

4歳から12歳までタイのバンコクに住んでいて、向こうのインターナショナルスクールに通っていました。
その頃は、周りのみんながほんとうに想像力豊かだった。
友達の家で、自分達で0からミュージアム(博物館)を作ろうってなって。
ひとりずつ部屋の展示を担当して、それぞれ絵をかいて壁に貼って、お客さんを招待して遊んだりしていました。
みんなでなにかを作ることが楽しくて、「作ること」を楽しむのが当たり前の環境で育ってきたんです。

中学や高校では演劇部に入っていたので、みんなで舞台をつくったり、演技で表現することに夢中になりました。
特に、「演出」という役職として全体をとりまとめ、ひとつの舞台を作ることが好きでした。誰かに楽しんでもらうとか、空間で表現することとかが、すごく好きで。

いざ働くってなったときに、なにをしたいか考えたら、一番に広告が浮かびました。
広告やCMって、誰かの心を動かしたりできるものだと思ったから。
なにかを作って表現するなら、芸術とか他の方法もあるのかもしれないけれど、わたしは「広告」がいいと思ったんです。
クライアントにとってはもちろん、それを受け取った消費者にも、なにかを伝えたり語り掛けることがしたくて。

―広告に憧れたきっかけとかってあるの?

「東京ガス」のCMを観たときに、泣いたんです。あの感動が、ずっと忘れられません。

毎日、お母さんが息子にお弁当を作ってあげるお話で、お弁当がお母さんと息子を繋ぐものになっていて。
いつも、お弁当は空になってお母さんの元に返ってくるんですけど、
卒業式の日、ずっとお弁当をつくってきたけど最後だから、お母さんが「お疲れ様、わたし」って呟くんです。そして、帰ってきた空のお弁当箱の中に「いつもありがとう」って紙が入っているんです。それを見て、お母さんが涙を流すシーンで終わる。

そのCMを観て、わたしもお母さんに「ありがとう」って感謝の気持ちを伝えたくなって。
高校の卒業式の日、手紙とかは書かなかったけれど、しゃもじを買って「いつもありがとう」ってお母さんにプレゼントしました。

映画を観ているわけでもないのに、ただテレビをつけて眺めていただけなのに。
人生を変えるほどの感動をくれるCMに出会った。

あの時のわたしのように、誰かの人生に関わるだけの強いメッセージ性のあるものが、広告だったら作れるんじゃないかって思ったんです。
たまに炎上したり、批判されたりもするし、CMって怖い部分もあるけれど。
だけど炎上って、それだけの人に見られているってことだから、誰かに影響を与えることができるってすごく素敵だと思うんです。
そのCMを観てから、街のポスターとかPRイベントとかをよくチェックするようになりましたね。
他にはどんなCMがやっているのかとか、どんな広告があるかとか、自分で積極的に探すようになったんです。
いろんな素敵なものに出会ってきたけれど、それでもやっぱり、広告ってとても魅力があるものだなと思いました。


―どうしてデジタルの分野に進んだの?

世の中に「まだないもの」や、最先端に触れられると思ったのが一番の理由です。
今の部署にきてからは、それこそまだ日本にきていない技術などにいち早く触れることができて、ワクワクします。
既存のものでなにかをつくることももちろん素敵だと思うけれど、デジタルだともっと未知の領域に踏み込める可能性がある気がしたんです。

あとは、わたしがそこの分野にそこまで詳しくなかったっていうのも大きいですね。
「将来は広告に携わっていきたい」って思ったときに、「いまの私が一番弱い部分ってなんだろう?」とか、「もっと知りたいって思う分野ってなんだろう?」って考えてみたんです。
そしたら、わたしがまだ手を伸ばしていない「デジタルの世界」に飛び込んでみたくなって。
将来、広告人として働いたときに、いろんなことに強くありたかった。
英語もできて、企画力もあって、デジタルにも強い人。
新卒で入社するからこそ、自分がまだわからない領域を学んで勉強させてもらえるって思って、この部署を希望しました。

ー実際に働いてみてどうだった?

やっぱり……。
自分の弱い分野だったので、すごく大変でした。

まず、部署の半分以上が理系だったんです。
周りの人は、プログラミングもできるしスクリプトも書けて当たり前だし、その道のプロである人がほとんどでした。
わたしはというと、先方との打ち合わせに行っても、その場の会話をひたすらメモしてわからない単語を後で調べるってことくらいしかできなかった。

最初はすごくしんどいこともあって、「わからない!やばい」ってなったんですけど……。
でもそれよりも、「もっと知りたい」って思いのほうが強かったんです。
新しいものをつくったり、企画を考えるのって楽しいって思えたから。
わからないなりにたくさん先輩たちに質問をして、とにかくいっぱい勉強したんです。

そしたら、だんだんできることやわかることが増えてきて!
今ではプロジェクトリーダーを任せてもらえるようになりました。
新規事業の立ち上げでメインメンバーとして動くこともできていて。
最初のわたしからは想像できないくらい、前に進めたなって思えます。

わたし、昔から本当に数字が苦手で仕方なかったんです。
バイトでもレジ打ちが一番へたくそで、「鈴木さんにレジを任せると、レジロールが長くなる」って言われていたくらい。
自分はプログラミングやデジタルとは程遠い人物だと思ってたんですけど、でも苦手な分野だったからこそ「やってやろう」って思いもあって。
だから、働き始めて勉強して、できないことができるようになっていくのがすごく嬉しい!
数字が苦手だったあのわたしが、SEやプログラマーをとりまとめて仕事をできているなんて!って感動します。

―広告という仕事を通して、世の中をどうしていきたいって思う?

「世の中」を動かすことはできないかもしれないけれど…。

でも、その中にいる「誰か」の気持ちを動かしたりはできるんじゃないかなとは思っていて、それがわたしのしたいことだと思います。
それこそ、「もしかして、これってわたしだけが思っていることなのかな…」っていう気持ちを抱えている人に、そっと寄り添ってあげられる広告をうちたいなって。

対起業でつくるものだから、広告ってすごく難しいんだって痛感します。
広告を使って、わたし自身が描くような感動を、誰かに届けることもできるかもしれないけれど。
でも「広告の持ち主ってだれ?」って思うと、クライアントが一番なのは変わらなくて。
そこのさじ加減は、すごく難しいです。

広告って、クライアントの一番いいところとか、世の中の一番役にたっているところとかにフォーカスすることだと思ってて。
その商品をもっとみんなに好きになってもらえるように、スポットライトをあてられる役割でもあるんですよね。
クライアントのためになることができて、その上で自分の伝えたいメッセージを重ねて、それがうまくかけあわさったらいいんじゃないかなって思います。

―この仕事を通じて、どんな人間になりたい?

広告人として、魅力のある人になりたいです。「なんかわからないけど、この人に仕事を任せたい」とか、「この人に任せたら面白いことをしてくれるんじゃないか」とか思って欲しい。

わたしの周りの魅力的な先輩は、なにを質問しても答えてくれるし、なんでも自分でできちゃう人で。みなさん、すごく知識が豊富なんです。
だからわたしは、コンペで誰にも負けないような面白いアイデアをだせるように知識を蓄えたり、クライアントに寄り添って、「わたし」に任せてもらえるくらい強くなりたい。
そのためにまずは、今いる部署でいっぱい修行をして、勉強しています。

あとは、「海外に住んでいた」という経験があるので、住んでいたからこその経験を仕事に活かしたいと思ってます。
異文化を認めて許容して、それを活かしていけるのは、わたしの良さなんじゃないかと思うので。
もっと海外に行って、海外のことを知りたい。将来は海外で、広告人として働きたいです。
日本にいるだけでもこれだけいろんな知識や世界を観れて、まだ知らない自分を知れる。
海外に行ったらもっといろんな文化に触れることができるだろうし、もっともっと知らない自分に出会えるんじゃないかって思うんです。

今、海外に住んでいた日本人の方とお仕事をしているんですけれど、その方の働き方を見ていると、日本と全然違うなと思いますね。
もちろん、組織に属する人だから完全に「個」として働いているわけではないんですけど、「自分」が確立されていて、自立しているんです。
日本ってまだまだ縦社会だし、一番下がより働くのが当たり前っていう風習があるけれど、わたしは本当にそれが無駄だなって思うんです。
年下だからどうとかじゃなくて、わたしは自分が持っている力で勝負できるようになりたい。


ーそんな、たそちゃん!
あなたにとって一番の「好き」ってなに?

わくわくすること!

わたし、さくさんのこと大好きじゃないですか。ほんとうに、大好きなんですよ。ほんとに好きで。

でも、なんでさくさんのこと好きなんだろうって考えると……。
さくさんと会ったときって、仕事の話とか、将来の話とか、これからのことを話すとすごくわくわくするんです。
頑張ろうって気持ちになれるんですよね。
いつもそうなんです。自分の将来が、もっと明るくなるような気がして。
これからが楽しみになるような感覚になれて、それがすごく好きなんです。

さくさんとこの前遊びに行った時にもやっぱりそう思って(ここで、たそのある日のインスタグラムの、わたしへの思いを綴った投稿を見せられる)
さくさんと会うと夢が広がるんです。

ーヒェッ…
つまり、それってどういうこと?

基本的に、「自分の将来は、今よりもっと明るくなる」って思ってるんです。
未来のわたしは、今の自分よりももっと進化しているんだろうな、と。
そういう面では、自分には向上心があるんだと思います。
将来海外で働きたいとか、広告人として一人前になりたいとか、誰にも負けないくらい強くなろうとか。
そういう「希望」がわたしの原動力で。
将来のことを考えてわくわくするのが好きです!

―今の自分のことは、好き?

好きです。
泥臭いけど、一生懸命になれるところが好き。

この前上司に言われたんですけど、「あの子って雑草みたいな子だよね」って。
バラとか桜とか、きれいな花じゃないけれど、ちゃんと地に足つけて立ってるよねって。
踏まれても自分の力で立ち上がれるところが、自分のいいところなのかもって思います。
もちろん、嫌いなところもたくさんあるけれど…。
でも、自分のことは好きです。
まだまだ頑張れるって思うし、今よりもっと将来は楽しくなるって思います。


―たそは、どんな「人間」になりたい?

どんな人のことも受け止められる「器の大きさ」は持っていたいです。

やっぱり、「差別」って多い気がするんです。海外に住んでいた時に、私自身も差別をうけたことがいっぱいあって…。
今でこそ、日本や韓国などのタイへの企業進出が進んでいる国もあって、日本をはじめとするアジア人が多く住むタイですが、わたしが住んでいた2000年頃は、日本人はおろかアジア人が非常に少ない環境でした。

タイのインターナショナルスクールにいたときに、学校の展示物がびりびりに破られていたことがあったんです。
その日のその時間に、わたしは学校にもいなかったのに、私が「アジア人」っていうだけで「あの子じゃない?」って疑われてしまって。先生に呼び出されて、大泣きしながら「わたしはやってない」って言ったのに、先生は「わたしがやったっていえば、まるく収まるから言いなさい」って言う。
悔しくて悲しくて本当に嫌だったけど、そのときはそうするしかなかったから、「わたしがやりました」って、言ったんです。

違う日には、友達とたまたまテストで同じ成績になって。
隣の子は白人で、その子の回答をわたしがカンニングしたって疑われたりとか。
味方になってくれる人なんて周りにいなかったし、先生も白人だから、もうどうすることもできなかった。

いざ日本に帰ってきても、わたしが海外帰りで英語の発音が少し良いってだけで「かっこつけてる」って言われたりもしました。
だから、わざと発音を悪くして話したりとかしていましたね。
海外って、学校に掃除当番の文化がないんです。ずっと海外に住んでいたから、教室の掃除なんてしたことなくて、ぞうきんの使い方もわからなかった。
日本の学校に通うようになったとき、掃除の仕方がわからなくて、笑いものにされたりもしました。

わたしがインターナショナルスクールに通っていたからというのもあるんですけど、多国籍の人が集まる場所にいる人って、「自分ひとり」として自立していて、且つ国民意識を持っている人が多いんです。
色んな国を渡り歩いている人には「帰る場所」がなかったりするから、自分として生きていくために、アイデンティティが確立されている人がとっても多い。
自分が日本人ってだけで嫌われることって、日本に住んでいたらまずない。でも海外に行くとある。
「日本人だからなかよくしておこう」とか、「日本人だから好きじゃない」とか。
わたし個人としてではなくて、「日本人として、どう思う?」とか、その国の人として見られることも。
それしか判断基準がない場合があるからなんです。

自分が差別を受けてきた分、日本に来ている留学生の子とか、馴染めていないような子には、対等に接してあげたいって思います。
サークルとかでも、たまに外国の子がくるんですけど、力になってあげたいって思うし、そばにきてくれて仲良くできると嬉しい!

そういう経験もしてきたから、自分は結構、客観的に日本を見ている気がしています。
良い意味でも悪い意味でも、日本人って、あんまり自分の考えとか意見を言わないですよね。海外の友達と話すときって、お互いの意見のぶつかり合いになるんです。
「わたしはこう思う」「こういう意見を持っている」とか。みんな、確固たる芯がある。
でも日本人って、会話のなかで「たしかに」とか「そうですよね」とか、相手の言うことに同調していることが多いなって。
久しぶりに海外の友達と会うと、全然自分の意見が言えなくなってることに気づいて、「ああ、わたし日本に染まったな」とか思います。

ー日本だからこその「いいところ」って、どこだと思う?

「わかってあげようとする気持ち」は、他の国の人と比べて、日本の人は強いかもしれないと思います。
海外の人って、「この人はこうで、こういう考え方なんだ。終わり!」って、許容して終わっちゃうことが多い気がして…。その先のことは、あまり知りたがらない。

でも日本人って、「この人はどうしてそう思ったんだろう」とか、「そう思うようになったのは、なぜなんだろう」とか、その人がその考えに至るまでの背景を、深くわかってあげようとする部分がある気がします。
相手のことを知りたがって、理解しようと努力するのは、日本人ならではなのかなって。
それは素敵だと思いますね。

いろんな差別を受けてきたけれど、でもそれって自分の「経験」だって思えます。
国による考え方の違いとかは、日本にいたらわからなかった。
だから、いずれはまた海外に行きたいって思います。海外で働きたい。
なんでもいいから行きたいわけじゃなくて、広告というお仕事をするために海外に行きたいって思うんです!


―逆にこうなりたくない自分っている?

決めつける人にはなりたくないです。
まずは、どんなときでも相手の話を聞く。
最初に「この人はこうに違いない」って思っていたとしても、実際に相手と話してみないとその人のことはわからないと思ってて。
話を聞くうちに「思っていた人と違った」って発見があったりもするし。
ファーストインプレッションで決めつける人にはなりたくないですね。

わたしの知り合いに、読者モデルみたいにとびきり可愛い子がいるんです。
最初、「絶対この子人生楽しんでるじゃん」とか思ってしまって…。
自分が顔にコンプレックスがあるから、最初は決めつけてしまった。
でも、話してみたら、その子はその子なりにいろいろ悩んでいたりとか知って、面白いところとかも知れて。
見た目で判断してはいけないなって思いました。

―最後に!
たそにとって「働く」ってなに?

仕事を通じて、自分をもっと好きになること。

今の部署で働いていて一番思うことは、「自分って、意外とやればできるじゃん」とか、「できなかったけど、できるようになったじゃん」ってことなんです。
できないことができるようになっていくのが好きで。
新しい自分に出会えるのって、すごくワクワクします。

わたしは、自分の向上心とか未来とか、この先の自分が進化していくことを信じている部分もやっぱりあるから。
だから、わたしにとって「働く」って、将来の自分がもっと今より素敵になるためのものでありたい。
仕事を通して自分を魅力的にしたい。
いっぱいワクワクしてどんどん成長したい。
仕事をすることで、自分を好きになれれば嬉しいな、とか思うんですよ。

「自分が成長できるような、ワクワクすることがしたい」ってことと、「広告を通じて誰かに寄り添えるような、ものづくりがしたい」っていう、2つの軸があるんです。
でも、そもそも仕事をする自分が成長して進化できないと、仕事としても結果は残せないんじゃないかなって。
自分が進化することで、仕事ももちろん、自分の未来もいい方向に行くんじゃないかって考えたりします。

ただ生きるために働くとか、したくないことをいやいやするのはなんだか嫌です。
自分の好きなことや信じれることをして、結果的に自分が魅力的になれていればいいのかなって思います。
できないことができるようになるためだけに仕事をしているわけではないけれど。
でも、そこに自分の成長は必須だと思っています。
仕事での成長を通じて、より魅力的な自分になることで、もっと自分を好きになって。
好きになった自分だからこそつくれる感動を、広告に落とし込んで届けたいって思います。

見たことのない彼女の内側を見れたインタビューでした。
広告のお仕事の話はもちろん、海外で味わった彼女なりの思いを聞いて、心の底から自分の置かれている環境について考えさせられました。
いつも一生懸命でまっすぐなたそ、いつか一緒にお仕事したいなって思います。
たそ!ありがとう!

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いつも応援ありがとうございます。