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人生がひとつの「物語」だとしたら

ドラマで言ったら私の人生、まだ4話目くらい。自分以外の主要人物の誰かと出会って、関係が深まって、こじれて、またであって、いまちょうど色々始まろうとしているところ。
気にくわないことがあるのは良いことが起こる前兆だし、別れがないとハッピーエンドにつながらない。
今日会った気にも留めない出来事はこれから起こるであろう何かの伏線で、もしかしたらまだ出会っていない運命の人に、数時間後に出会うかも。

わたしたちは先のわからないこれからを一歩ずつ、そして確実に「死」へと近づきながら歩んでいく。どんな有名な占い師にだって、霊媒師にだって、きっと他人の先の人生はわからない。当たったように見えたとしても、それは結果でしかないのだから、本当の意味での予言なんて、この世にはないのだと思う。
未来に起こることは不透明なのに、過去に起きたことは鮮明に心に残る。甘かったり苦かったり、そんな過去の積み重ねをしながら、未来に期待をしながら、今日も生きていくのだ。

自分の人生にシナリオがあるとしたら、たぶんわたしはまだ、折り返し地点にもきていない気がしている。
否、本当は明日死んじゃったりする予定になっていて、今日が最終話なのかもしれない。あるいはまだ1話目で、なにもかもが始まりもせず始まったかもわからず、でもとりあえず1話目は見てやるかって、そんな感じで生きていたり。

人の数だけ人生があって、そこにあるシナリオはみんな違う。全く同じストーリーを歩むなんてことはどうしてもできなくて、みんなちょっとずつ違う未来を歩んでいるのだ。
見るものも、聞くものも、出会う人も、食べるものも、泣くタイミングも、愛を知る瞬間も。
全部違うから、人のことを知るのって難しい。
同じ時間を生きているのに、まったく違う世界に生きている、それが他人。
人を知る前に、まずは自分のことを知りたいのに、なんかいまだにわからない。明日のこともわからない今日で、今の自分がうまくみつからない。
今日をちゃんと生きて居られている自信がないのに、明日にやけに希望を抱いている。
明日はきっといい日になる。今日を生きているはずなのに、今日を諦めて、不確かな未来に希望を抱いてしまうのは、見えないものに期待してしまうから。
目の前のわたしから目を背けていたのは、今の自分の人生を受け入れられていないからなのだなと、やっと気づけた令和2日目。

人は、生まれた瞬間に自分だけの物語を紡ぎ始める。
呼吸を始めたその瞬間から、その心臓がとまるいつかまでを、オリジナルのシナリオで生きていく。先のページはきっと真っ白、その時間にならないと、そこに文字は用意されない。
過去は増えていく一方で、これからのことは絶対に明かされないトップシークレット。

人生がひとつの物語なのだとしたら、今日という日にも、何かしらの意味があるのかもしれない。
キマらない髪形に、いつのまにか汚れたお気に入りのスニーカーに、なんとなく目に付くあの子のインスタの投稿とか。
暑くて涼みたくて入ったスタバの店内がやけに寒かったり、わたしの両隣の席だけなぜか空いていて「もしかして、わたし危険人物だって思われてる?」なんて無駄にドキドキしてしまったり。
気にならなくなった元彼のSNSに、最近気になるあいつの投稿。久しぶりに帰ってきた実家で見つけたナイロンパーカから500円玉がでてきたり、上手に彫れた消しゴムはんこたち。

1つ1つの出来事が、もう二度と戻らない記憶になっていって、この先のわたしが戻りたい過去になっていく。
願っても、泣いても、死ぬ気で祈っても、先を生きるわたしは、今に戻れない。巻き戻せない。
今を生きるわたしは、願うことならば、もう一度祖母に会いたい。あの時のあの言葉、苦笑いで聞き流した優しさ、今ならきっと。
あの時のわたしに戻りたいけれど、何を頑張っても、あの優しい過去には戻れない。

別れや出会いを経験し、受け入れて、これから訪れる新しい別れや出会いのために生きていく。それはこれから先もやってくるもので、時間が進む限り、変わらない環境なんてないのだろう。

今日という日は、人生で最後だ。
一分一秒、どこにいても、何があっても、進む時間の中で。
人は、自分の人生を歩んでいく。

そのシナリオが終わりを迎える時に、「これがハッピーエンドだ」と胸を張れるように、今日を生きていきたいのです。
あの時ああしていれば、この時こうしていれば。
後悔は尽きることはないけれどそれ以上に。
今日が最高だと、今日という最後が最高の日であると。
そう言えることが「幸せ」なんじゃないかって思ったりするのです。

平成最後だの、令和最初だの謳われているけれど、まてまてまて。
いつだって、今が最後なのだ。
今が、わたしの人生の「ある時」の最後なのだ。

いつかのわたしが戻りたくなるような、羨ましくなるような、そしてそれを乗り越えてでも幸せを掴めるような。
そんな風に、今日という日を最高の思い出にしてあげたい。

#エッセイ #令和


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