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【MTGミドルスクール】合作杯参加レポ〜スタックス"憤死"花伝~

ミドルスクールの大会への参加を思い立ったのは、レガシーのスタックスにある種の限界を感じていたからだった。
ほら、マスターまでこんなことを言い出す始末だ。

EWEでも第7回武藏野MTG會でも(どちらもまだレポは書けていない)、キーカードである《煙突》の遅効性は悪目立ちしていた。
現在のレガシー環境では、ストンピィやコンボには速度で間に合わず、コントロール(特に最近は豆の木コン)にも容易に触られてしまう。
第一、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がいるだけでこちらの方が不利になっていくなんて。

このままではいけない。

常滑で再会した盟友も、苦しい環境で新しい道を模索している。
烏滸がましい言い方だが、僕らが模索をやめた時、このデッキの命運も尽きる可能性さえあるのだから。

稽古は強かれ、情識はなかれとなり。

世阿弥『風姿花伝』序

僕も何かを差し出したいと思った。
そのために、長いこと使うのを避け続けていた1枚のカードに手を伸ばす。

ネメシス最高のイラスト
(異論は認める

《煙突》と共にスタックス史の一部とも言えるカードだが、この2枚は役割が大きく異なる。
《煙突》がリソース要求系のカードなのに対し、《からみつく鉄線》は行動制限系のカード。

レガシースタックスの基本構造

この《からみつく鉄線》、白スタックスとの相性が頗る悪い。

一般的に《からみつく鉄線》を効果的に使うには、〈茶単スタックス〉のように行動制限の上から展開する爆発的なマナ基盤か、或いは誘発スタックでマナを使い切る手段かが必要となる。
5マナさえ鬼門である白スタックスには、前者は到底見込めない。

然らば、後者。
白は元来、瞬速生物が弱く、デッキの構造上インスタントも入れづらい。
だが、昨今は魂力やサイクリングのようなインスタントタイミングの動きも入ってきており、かつては使い熟せなかったこのカードにも活路があるかもしれない。

それは藁にも縋る思い。

然して、まずは《からみつく鉄線》を強く使うデッキから学ぼうと考えた。
餅は餅屋。
それが、ミドルスクールの〈ティンカースタックス〉だったという訳だ。

MTGは15年以上前からほぼレガシー専門のため、《修繕》を撃ったこともない。

否、正確には、2週間前の武藏野會で初めて撃った。
AHEさんにヴィンテージハラスメントを受けた時のこと。

そこで、まずはミドルスクールのティンカー系のデッキリスト(主にryujimさんのもの)を少し眺めてみて、あとは自分なりに組んでみた。
素人のくせに完全なコピーリストにしなかったのは、「人と同じ」が元来嫌いなことと、「シナジー厨」としてどうしてもやりたいことがあったから。

カードよりライフカウンターの方が有名とか言ってはいけない。
《煙突》下でこいつを撃つと…

コンボルートがある方が強いのだろうが、コンボで勝ちたいとは思わない。
僕には僕の志向があり、趣向がある。

この芸、その風を継ぐといへども、自力より出づる振舞あれば、語にも及びがたし。

世阿弥『風姿花伝』第五巻「奥義」

EWEが終わってからでは実戦練習をする時間も全く取れず(未だDiscordの使い方がよくわからず対戦募集ができないことはナイショ)、せめて通勤時間だけはとひたすらアプリでソリティア。

……

大会当日、会場の東京MTGさんは移転してから初訪問。
水道橋の頃はレガシーのイベントに参加させていただいたり、妻と一緒にアート系の物を見に行って楽しませていただいていた。

御茶ノ水駅で降りて神保町方面以外に行くのも初めて。
地上に出ると一瞬、足が古書店街へ向く。
習慣とは、げに恐ろし。

人見知りな上にぼっち参加なので、nayanabeさんと添削さんにご挨拶だけして、あとは下を向いていた。
(※実はMTGと全く関係ないところで帰ろうか悩むレベルの事態が発生してしまい、精神的に落ちていて、思い返すと大変申し訳ない気持ちです。)

Round1 vs パララクス補充

Game1
うまいこと《黒の万力》と《煙突》で締め上げた後、手札の《からみつく鉄線》を出すか《Mishra's Factory》でライフを詰めるかの二択で後者を選び、返しでソルランドから《補充》を撃たれて負け。

Game2
あまり覚えていないけれど《補充》を撃たれて負け。

0-2
G1の選択ミスで心が折れたのが悪夢の始まり。
《補充》ってシングルシンボルだったんだなって。

Round2 vs 白黒緑エンチャントレス(クラフト)

Game1
頑張って時間は稼いだものの、あれよあれよでリスクラスト。

Game2
《火薬樽》の切りどころがよくわからず、気付いたらメサクラフト。 

0-2
初めて《煙突》下で《瞑想》を撃てた!
対応して《帰化》されて死んだけど。
そもそも《帰化》ってミドルスクールのカードプールだったのか…M10初出くらいのイメージだったんじゃが(

Round3 vs 黒単ベリードアライヴ

Game1
初手《黒の万力》から、《からみつく鉄線》やら《煙突》やらをばら撒いて、《ゴブリンの溶接工》2体でぐるぐるできる状態にして。

Game2
サイクリングなどで墓地を肥されてるなあと思っていたら、気付けば《灰燼のグール》が3体ぐらい並んでおり、陰キャの《銀のゴーレム、カーン》は防波堤にすらならず。

Game3
お相手の《Hymn to Tourach》2発でプランが崩壊した後、残ライフ2で《罠の橋》に引き篭もって《煙突》を全力で回したけど、生物生け贄で本体に1点飛ばす子が止まらず負け。

1-2

Round4 vs スライ

Game1
《からみつく鉄線》で展開を遅らせたけど、最後は《稲妻》《火炎破》を投げつけられて負け。
チャリスと三玉が恋しい。

Game2
《火薬樽》で流しても再展開され、それに加えて被《不毛の大地》でスクリュー死。
マナ基盤を攻めるなんて反則よな。(どの口が言う

0-2

Round5 vs 青緑マッドネス

Game1
《入念な研究》から《日を浴びるルートワラ》2体がこんにちは。
あ、左上マナシンボルのテストプリント見かけたら教えてください。
なんて言ってる暇もなく走り切られて負け。
《からみつく鉄線》3枚プレイしても負け。

Game2
《野生の雑種犬》から《尊大なワーム》が共鳴。
止めようと思ったら《不可思議》で飛んでて、手札全捨て12点ぐらいピッタリーサル。
この感じ…懐かしい…!

0-2

Round6 Bye

結果、迫真の0-5!

今回ミドルスクールを初めてやってみて、ティンカースタックスはレガシーのスタックスとは全くの別物だった。
やる前は《修繕》の有無が一番かと思っていたが、実際は《ゴブリンの溶接工》のぬるぬるとした動きが独特で、完全にレガシーのペインターのあの感じ

今から白くならないか?

《ゴブリンの溶接工》は攻防一体で、守りに徹する"いつもの"スタックスとは志向が異なる。
これにミドルスクールなら《修繕》、レガシーなら《ゴブリンの技師》等が組み合わさり、状況に応じた柔軟な戦い方を実現しているのだろう。

だが、残念ながら今回、乗り手の僕とデッキがシンクロできていなかった。
これについては、デッキに対して申し訳ないことをした。

僕自身は、やることはデッキが完成した時点で決まっているタイプ。
その理想を具現化できるかどうかがゲームの焦点であり、理想がゲーム中に変わることを好まない。
(編集注:対戦相手がおらず10年近くソリティアだけの世界で過ごすと、斯様なプレーヤーが出来上がります。

毎回土地ハメして勝ちたいし、20点削ったり勝利条件を満たしたりするんじゃなくて、相手に投了してほしい。
人が何かを諦める瞬間の顔を見るのが好きだから。

……

性癖の話はさておき、やるならやるでもっと徹底的に《煙突》と《瞑想》に寄せ切ればよかったなあ、と。
最後まで悩んだ《厳かなモノリス》型にしなかったのを少し後悔。

また、環境を知らなかったのは完全な過ちだった。
特に、ミドルスクールでは土地ハメだけで勝ち切るのは(ポンザやPOXのようにスペルで直接攻めるのは例外として)難しそう。

《虚空の杯》や《三なる宝球》による行動制限がなく、《世界のるつぼ》や《トロウケアの敷石》のようなリソース維持手段もないため、《ゴブリンの溶接工》のようなテクニカルな手段を用意しないと一方的には得ができない。

最後に、今回の主役《からみつく鉄線》について。
レガシーであれば《虚空の杯》《三なる宝球》《エメリアのアルコン》などを駆使して、相手を全く動けなくすることも不可能ではなさそうだった。

また、《精霊界との接触》の魂力でカウンターをリセットできるので、テンポ寄りの縛り方もできるかもしれない。(かなり練習は必要そうだけれど…
最近はインスタントタイミングの動きに《ウルザの物語》2章の起動も追加されたから、白スタックスでもできることは少なくないだろう。

一方、相手の瞬速の動きには当然弱く、現在なら《オークの弓使い》や《力線の束縛》が筆頭。
それでも、ゲームレンジを引き延ばし、《世界のるつぼ》と《煙突》の土俵に持ち込むためのピースになれそうな感覚の〈種〉のようなものがあった。

特に、横に並ばないテンポデッキ相手には、消耗戦後の目の上のタンコブである《濁浪の執政》に辿り着かせない有用な手段になるかもしれない。

…本当はもう少し深掘りしたいところだけれど、気力と体力の限界なので、これからじっくり考えていきます。

その時々にありし花のままにて、種なければ、手折れる枝の花のごとし。種あらば、年々時々のころに、などか逢はざらん。

世阿弥『風姿花伝』第七巻「別紙ノ口伝」

ミドルスクールで得た〈種〉は、レガシーの舞台で。

……

末筆ながら、主催のnayanabeさん、添削さんを始め運営の方々、参加された皆さま、対戦してくださった皆さま、昨日はお疲れさまでした。
門外漢を快く受け入れてくださった皆さまに、心からの感謝を。

(了)