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【MTGレガシー】神挑戦者決定戦参加レポ〜《孤独》か、それに等しいカード〜

1.イニシアチブの冬

明けましておめでとうございます。(某ニキのネタではない
URデルバーとイニシアチブと高速コンボしかいないと言われる歪なメタとなって久しいですが、白スタックスにとって〈冬〉は悪いことばかりでもありません。

第一に、メタが踏み均され、固まってきます。
〈守り〉のデッキはここからが本領です。

第二に、白スタックスの苦手カードやデッキが駆逐されつつあります。
具体的には、速度もサイズも足りない《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、イニシアチブを取り返せない《時を解すもの、テフェリー》、押し付け力で劣る赤プリズンなど。
改めて口にすると誠に恐ろしい環境です…。

2.神挑戦者決定戦への参戦表明

職業上、年明け~年度末が死ぬほど忙しいため、当面はメタを眺めているしかないかなと思っていました。
そんな矢先、仲間内からレガシー神挑戦者決定戦参戦のお誘いが。

「Top8プロフィールの所属コミュニティに武藏野MTG會の名を残すことを目標に(後略)」
熱い言葉に血潮が躍る。
やるしかないだろう。

「競技」レガシーと聞くと尻込みしてしまうところもあったけれど、物は試し。新年だし、初物に手を出すのもいい。
そうして、出るからには勝利を目指し、調整のために重い腰を上げました。

3.MOリーグボロ負け

MO民を自称していながら、リーグは11月中旬以来です。
エタパに向けてテーブルトップに移り、エタパ以降は絵に描いたような燃え尽き症候群でした。

エタパではイニシアチブに当たることもなく、また個人的に十分満足のいくリストだったため、ほぼリストは変えずにリーグへ。
細かい変更点としては、《爆発域》を1枚減らして《ボジューカの沼》をピン挿し。わかりやすく《濁浪の執政》対策です。

結果は、1-4→2-3の計3-7。
ボロ負けです。

白スタックスは基本的に3-2製造機なのですが(キリッと言うことではない)、どうしてここまで勝てなくなったのか。

第一に、イニシアチブが環境を食い荒らしているためか、各デッキが以前より非常に尖っている印象でした。
多方面に尖られると非常に守りにくい。

第二に、白イニシアチブ対策がそのまま白スタックスに着弾する。
デスタクからは《廃院の神主》、コントロールからは《氷牙のコアトル》や《真の名の宿敵》まで。

そして、件の白イニシアチブとの初対面。
白スタックスと白イニシアチブは共通パーツが非常に多く、採用カード的には〈双子〉みたいなもの。
僕もサブデッキとしてちょこちょこ回してブイブイ言わせており、実際に相手にするのは初めてでも動きは把握している。…つもりでした。

はい、手も足も出ない完敗です。
確かに2ゲームともお相手がいい回りだったのですが、先攻のこちらがいい初手だったとしても対抗が厳しかったであろう展開に、少なからぬショックを受けました。

4.調整迷走

あまりに明白な力の差を見せつけられ、ここから対イニシアチブに絞って調整を開始しました。
現状、一番手のURデルバーは4:6不利。
而して、二番手のイニシアチブに遅れをとっていては生存権はありません。

アプローチ①:《倦怠の宝珠》《謙虚》等のETB無効化

まず試みたことは、イニシアチブ自体を無効化することでした。
具体的には、《倦怠の宝珠》やそれに類する効果を持つカード群です。
白スタックスでは《静翼のグリフ》等の白生物系も使いやすく、さらには最終兵器《謙虚》も控えています。
特に《謙虚》はイニシアチブデッキでは触ることが難しく、期待していました。

しかし、これらの大きな問題点は先置きが必須だということ。
青白系のデッキでは《静寂をもたらすもの》が最近採用されていますが、これは初動をカウンターできる、または、先にクロックを置けている(+《孤独》を弾ける)という前提に基づいていると思われます。

それができない白スタックスに於いては、これらは先手でしか機能させられません。
一度イニシアチブを取られたが最期、取り返さない限り自動的に進んでしまうため、基本的に殴らないデッキとしては対処が困難でした。

アプローチ②:《ミシュラの工廠》《異端聖戦士、サリア》等のクロック

次に試みたのは、イニシアチブを取らせた上で速やかに殴り返しつつロックする方法。

例えば、《ミシュラの工廠》をセットした上でイニシアチブを取らせ、盤面を捌き切って組立作業員でポカポカ殴る。
余りに、余りに時代が大正である。

しかも、このプランは結局相手の《孤独》だけで瓦解してしまうのも致命的でした。
《静翼のグリフ》なら《孤独》を封じられますが、3マナ立てながら、先にイニシアチブ生物をこちらが《孤独》で捌き、その上で出す必要があります。
つまり、先手初手で要求されるのは、
・《モックス・ダイアモンド》
・捨てる土地
・ソルランド
・《静翼のグリフ》
・《孤独》
・想起コストの白いカード
・他1枚
という非現実的なもの。

そんな初手が引けるなら、
・《モックス・ダイアモンド》
・捨てる土地
・ソルランド
・《三なる宝球》
・《煙突》
・土地
・他1枚
を引きたい。

この辺りで、上の2つのアプローチは実現不可能だと悟りました。
もうイニシアチブストンピィは当たったら諦めるしかない。そんな思いが渦巻き始めた矢先ーー

アプローチ③:《四肢切断》から地下街へ

レガシーの厳しい現実から目を背け、pipoニキのモダン動画を眺めていた。
僕のレガシーのサブデッキの1つであるマーフォークが、モダンの海で盛大にボディビル大会を開いている。
逃げるのをやめて筋トレに目覚めただけある。

そんなことを考えていた時、ある異質なカードに目が留まりました。

《四肢切断》。

長いこと白スタックスの調整ストレージに眠らせているカードで、恐らく《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《濁浪の執政》登場後は見向きもしていなかったことでしょう。
このカードが、《創造の座、オムナス》のぽっちゃりボディをバキバキにしばく。
そして、魚たちは《レンと六番》のひ弱なボディをボコボコにする。

こ れ だ 。

もちろん、それを孤独と呼ぶことはできない。でも、うまくは表せないけれど、それに等しいものなのだ。

大崎善生「孤独か、それに等しいもの」より引用

《四肢切断》を《孤独》と合わせることで、可能な限り少ないマナで盤面を捌き切れるかもしれない。
《虚空の杯》を捨ててまでメインに《剣を鍬に》を採用するなど正気の沙汰ではなかった!

盤面を捌く方法は考えられました。
ただ、タスクはもうひとつ。どうやってイニシアチブを取り返すか。相手の《孤独》のガードの上から。
白スタックスの生物スペックでは殴り返すのは不可能に近く、《ウルザの物語》こそサイズでは対抗し得ますが、いかんせん遅い。

残る方法はひとつしかありませんでした。
一度は諦めたイニシアチブの採用です。

イニシアチブは殴らなくても取り返せる。出してしまえばいい。
あとは右回りの地下街巡りで守り切る。
土地補充→ドロー効率アップ→マナ供給→フィニッシャー生成×2!
白スタックスに必要なものは全て右ルートにあった!

結局、年始はどうしてもMOや紙で遊ぶ暇がなかったため、調整は脳内・通勤電車のMTG BUILDERさんでの一人回し・夜中の一人対戦のみ。
結果から言えば無謀な調整でしたが、それでもなんとか回せるかなというところまでは漕ぎ着けて本番へ。

5.結果と所感

語るに値しない恥ずかしい結果に。
最後は迫真の10連敗。

とはいえ、内容には今回のアプローチを通じての学びがありました。
敗北から学ぶしかない。強くなるために。

まず、4/7を占めた対デルバー。結果は2-2でした。
数字だけなら悪くないのですが、実際にはイニシアチブ要素がほぼ裏目となるため、《白羽山の冒険者》4枚は毎回サイドアウト。《練達の地下探検家》も抜きたかったけれど、他に入れるカードもなく。(お前のせいだぞ《大いなる創造者、カーン》。)

対デルバーは4:6と先に書きましたが、プレイングやサイドボーディングで補える部分は十分あります。
そんな中で、このイニシアチブ7枚の異物感がデッキを明確に弱体化させていました。勝てたRound1・2はイニシアチブを引かずにスタックスらしい動きで押し切っており、それが如実に表れていました。

次に、分水嶺となったRound3の対白赤イニシアチブ。乗り手は赤プリズンマスター。
(いつも対赤プリの仮想デッキを組む際に参考にさせていただいていおり、足を向けて寝られない。)
ところが、最近イニシアチブでリストを載せられているのも把握しており()、それでもこの方が赤を捨てる訳もないはずで、ボロスカラーだろうと一方的に顔メタ()。

脳内で幾度となくシミュレーションしてきました。
この対戦のためにこそ編まれた、白スタックスの新しい形。

Game1、るつぼ不毛嵌めで取った。
Game2・3、イニシアチブの取り合いで取られた。
今 回 の コ ン セ プ ト は ど う し た 。

しかし、何よりこのGame1こそが最も生を実感できた時間だった。
これがしたくてこのデッキを握っているのだ。僕の性癖だ。

――回想。
当初の白イニシアチブは、《モックス・ダイアモンド》型の方が多いぐらいだったように記憶している。
きちんと土地を伸ばし、確実に1ターン目に3マナから仕掛け、間延びしても《ウルザの物語》が埋め合わせていた。

しかし、《別館の大長》の発見は《モックス・ダイアモンド》型を過去の物にし、《ウルザの物語》や《石鍛冶の神秘家》でさえも遅いと抜け落ちていった。
加速度的にリストは先鋭化され、《選定された平和の番人》はおろか《エメリアのアルコン》さえも減少傾向にある。
対ミラーを意識した《虚空の杯》不採用型まで出てきたこともあった。
最近は専ら対デルバーを意識した《歩行バリスタ》メイン採用型がスタンダードとなってきている。――

鏡は確かに世界を映すけれども、そこに映っているものは本物の世界ではないのである。(中略)私たちは鏡に映っているものが、自分自身の姿であることを十分にそして常に認識すべきときを迎えていたのである。

大崎善生「孤独か、それに等しいもの」より引用

目の前に座るイニシアチブは、白スタックスの〈鏡像〉ではなかった。
最早〈双子〉と呼ぶことすら憚られるほどに、道は分かたれていたのです。
違う生き方に。

この後のラウンドはプレイングミスの連続でした。完全に乗り手のスタミナ切れでした。
個人的にはスタミナと集中力には自信を持っているのですが、その自信を支える柱の一つは〈使い慣れた白スタックス〉でした。スポーツでも勉強でも兎にも角にも反復練習えぐい好きなんで。

しかし、このRound3のイニシアチブ合戦の中で、慣れないタスクの多さに頭の処理が追いつかなくなっていました。
アップキープ誘発、打点計算、そもそもイニシアチブが今どちらにあるのか…
(イニシアチブ使っておいてダンジョン探索忘れお相手に指摘していただくとか恥ずかしすぎるから一生やめろよな

強いお相手、負けて元々でした。むしろ善戦したと言えるぐらいかもしれません。
ただ、マッチを落としたことよりも集中力の面での疲労が大きすぎたのが誤算でした。MTGの中で経験したことのない類の疲労でした。

ちなみにこの後最大のプレイングミスは、グリクシスデルバー相手にサイドインしてマリガンしてまで探した《虚空の力線》をゲーム前に置き忘れたことです。まる。

私は何とかその前で足を踏ん張り、押し流されないように持ちこたえようとした。しかし、それは無意味な頑張りだった。踏ん張れば踏ん張るほど、傷は深まっていくばかりだったのである。

大崎善生「孤独か、それに等しいもの」より引用

乗り手の力不足によってデッキを負けさせることほど悔しいことはありません。
調整者の力不足によってデッキを弱体化させることほど(略
エタパでの出し切った上での悔しさとは、全く異なる悔しさを知った1日でした。

6.2023年の目標

お通夜みたいな話ばかりしていてもアレなので、最後に今年の目標を。

エタパ・神挑戦者決定戦と、大きい大会に出てみて感じたのは、勝ち上がるためにはMOリーグ5試合とはまた違うアプローチが必要だということでした。MOチャレンジも同様だろうと思います。
MOチャレンジはあまり出る時間を取れそうにないのですが、何らかの大きい大会でトップ8に残ることを目標に、本年は頑張りたいと思っています。

また、自分が立ち上げた会をきちんと継続できるように、会長業にも勤しみたいと思います。むしろこれが第一目標まである。
お通夜のような成績とは裏腹に、仲間内で開始前やラウンド間に集まったりしながら、僕はイベントを最高に楽しんでおりました。

持つべきものは仲間です。ハンカチ世代の僕は知っています。

Top8プロフィールの所属コミュニティに武藏野MTG會の名を残すことを目標に。
やるしかないだろう。

(了)

追伸:
《四肢切断》のアイディアをくれたpipoさん、《殺し》からのプランニングで道を示してくれたアルーレンマスター・otbさんに多大なる感謝を。