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能勢広 その映画世界(2)


 自身の祖父であるカメラマン・鈴木喜代治氏が原爆投下後の広島に入り、当時の状況を記録したフィルム映像とメモをもとに短編記録映画「広島原爆・魂の撮影メモ」を作り上げた映像カメラマンの能勢広氏。同作へのこだわり、自身が主催するドキュメンタリー映画祭「さがみ人間未来フィルムフェスティバル」への思いなど、その映像世界を全4回で語ってもらった。

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音へのこだわり~「空気を切り裂く“一音”を入れた」

田下:続けて「広島原爆・魂の撮影メモ」のお話を聞きたいと思います。

この作品は、流れている空気がよどんでいなくて、すごくさらさらときれいに流れていて。そして、音楽を担当した植田彰さんがすごく緊張感のあるいい音を入れてくれましたね。

能勢:今回ピアノを演奏してくれた稲岡千架さんの紹介で作曲家の植田彰さんにお願いすることになったんです。どういう曲を作る方か知らなかったのでドキドキはしていたんですが、「自分で映像を見て、これに合うように思う存分曲を作ってください」という形で頼みました。田下さんが「見ている人たちを信頼する」と言っていたのと同じように、植田さんを信頼しておまかせした感じですね。だから、どういう曲ができるかわからなかったし、失敗するかもしれなかったけれど、それも映画の製作するうえでの面白いところかなと思ったんです。

田下:植田彰さんの音楽を聴かせていただいたとき、この方も喜代治さんのメモの書かれていない部分にある重さや厳しさを感じとられたなと思いましたよ。最初の出だし、一音だけで入っていったでしょう。あれで、みんながぱっとひきつけられる。

能勢:あの音の入りのあたりは、僕が音を決めていったんです。

田下:あ、能勢さんが、決めたの?

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