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「Hands & Hearts」 始まりの物語

僕たちはいつも、大工さん達と共にGuest Houseを、Hostelを、Hotelを作ってきた。新しいプロジェクトが始まると、棟梁のなべさんを筆頭に全国津々浦々、文字通り北は北海道、南は沖縄といった広い地域から「仲間」が集う。多い時はチーム全体で20名近くになることも。木工職人、鉄職人、皮職人、庭師、左官職人、ツリーハウスビルダー。

工事の最中、ある大工さんにふと尋ねたことがあった。

「自分が作るもののデザインや仕様を決めるとき、何を基準にしてるんですか?」

庭師のよもさんは作業の手を止め、ニヤっと笑って僕に言った。

「隣で仕事してる大工の熱を感じるんだよ。」

くうー。たとえ冗談でもたまらなく格好良い。そしてきっと、冗談じゃない。

それはまるでお祭りのよう。toco.を、Nui.、Len、CITANを作る一定期間、スタッフも大工さんも、同じ屋根の下で同じ釜の飯を食いながらものを作った。毎晩皆で飲みながら「あの壁の色は何にしよう?」「ここの素材はこれがいいんじゃないか」といった現実的な話から、自分たちは何のために仕事をしているのか、生きているのかといった抽象的な話までをする。

一度も就職せずに会社を作った僕からすると、上司と呼べる唯一の存在がこの大工さんたちで、甘えられるというか、自分が間違ったことを言っても気持ちよく怒ってくれる人たちである。

「お前が間違った方向に行ったらオレが殴るから。思いっきりいけ。」

なんて言われ、とても嬉しかった記憶もある。何があってもお前らを見捨てない、という宣言にも聞こえた。

そんな大工さんたちと共に時間をかけ、少しずつ出来上がる空間は、圧倒的に「重ねられた想いの量」が違うと自負している。

そう、私たちBackpackers' Japanが運営している宿は全て、皆に愛されて作られた空間だ。

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光を観る。

観光とは世界の光を観にゆく行為だと僕は理解している。自分が住んでいる「ここ」を飛び出し、広い世界に触れる。

自分とは違う暮らし方、考え方。今までに想像もできなかった美しい景色。見たことのない光に触れ、視野が広がり、人は少しずつ自由になる。そして少しづつ、この世界のことを好きになる。

そんな観光の拠点である宿。それを作り、運営していくのが私たちの仕事。

宿一つでは、世界は何も変わらないかもしれない。しかし、そこに集う人々が持つ「世界への見方」は、少しだけ変わるんじゃないか。この世界を好きになる人が増えれば増える分だけ、ここはきっと明るくなる。

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私たちの3つめの宿、Lenを作った当時に撮りためた映像を、1つの短いムービーにまとめた。あの頃の葛藤や喜びを詰め込んだ瞬間の連続。

この時の記憶は、一生の宝。

Hands & Hearts - The Beginning of Our Story -

(Director/Cam/Edit : Yikin Hyo)


ホテルの未来を考える。toco./Nui./Len/CITANを手がけるBackpackers' Japan代表、本間貴裕のノート。