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餃子について考えている

先日、週末に新大久保界隈を歩いていたときのことです。週末の新大久保はたいへん混雑しておりまして、このまちは東西に伸びるメインストリートである大久保通りに沿って様々なお店がひしめきあっており、またこの通りから路地を一本入るとコリアンタウンと呼ばれるエリアが碁盤の目のように広がっているまちでして、当然人々の足は大久保通りに集中するといいますか、この通りを中心にまちが形成されています。それだけ重要なストリートであるにもかかわらず、ここに設けられた歩道はたいへん狭く、ちょうど人がすれ違えるくらいの最低限のスペースにたくさんの人が行ったり来たりしておりますので、週末の新大久保はたいへんな混雑をするということです。

新大久保というまちはコリアンタウンと呼ばれるくらいですので、多くの韓国系のお店をはじめ、近頃は中国系のお店などが増えてきているわけなんですが、メインストリートである大久保通りに面したお店はある程度ローカライズされているといいますか、日本人が受け入れやすい形に整えられたお店が多く並んでおります。一方、路地に入るとそれこそ各国出身の方々向けのお店が広がっています。大久保通りに面したお店を町中華としますと、さながら路地裏のお店はガチ中華の様相を呈しているということです。

当初、おれはこの大久保通り沿いを歩いていたのですが、さすがに人が多すぎたので路地を一本入りまして、蛇行する形でまちを闊歩しようと思い立ったのです。路地を一本入りますと、当然各国の方々向けのガチ店舗が軒を連ねているわけなんですが、その中にひときわ気になるビルを認めました。

そのビルは飲食店を中心に構成されており、ガチ中華麻辣麺のお店や韓国料理のお店、またネパール料理、アジア各国の食材が売られているスーパーマーケットに台湾等のマッサージ店舗等が入居していたのですが、その中に餃子の王将が入っていたのです!アジア各国のお店が並ぶ中でジャパニーズ・チェーン・ストアが入っていたのです!中国に由来する中華料理ではあるものの、大いに日本人好みに調整された中華料理店なわけで、この風景は少し異質と言えばいいのか、イタリアでサイゼリヤを営業するような感じがしますよね。

当然このビルを訪れる人々というのはアジア各国からやってきた方が中心となっておりますので、ネパール料理屋さんにはネパール風のお客さんが、麻辣麺のお店には中国風のお客さんが入っております。そんな状況の中、日本を代表する中華料理のジャパニーズ・チェーン・ストアであるところの餃子の王将にはどんなお客さんが集まっているのだろうか、そう思ったおれはこの餃子の王将を遠巻きに眺めながらどんな客層が入っているのかを観察し始めたのです。

もちろんバラバラと日本人が入ってはいたものの、なんと多くのお客さんがアジア各国風の人たちだったのです!日本人風に調整された中華料理の味が、海外の人たち、それこそ中国の方にも受け入れられているのです!まさに世界の中の日本、ガチ中華に引けを取らぬほど海外の方に受け入れられているのです。同じビルには、より現地の味に近い麻辣麺のお店が入っているにも関わらず、敢えて餃子の王将をチョイスする方というのが一定数いらっしゃるということです。これは例えるならばそう、ジャパニーズ・トラディショナル・スシスタンドが隣で営業しているにも関わらず、カリフォルニアロールの店舗にこぞって日本人が集まっているようなものです!たいへんな事態です。

新大久保というまちはアジア各国の方々が多く住んでいるまちですので、時にはふるさとの味が恋しくなることもあるでしょう。そんなときに敢えて日本人風アレンジが加わったお店を選ぶ方が一定数いるという事実。そういったふるさとの味といった強敵と正面から対峙している餃子の王将に対して何かいじらしさのようなものを感じてしまったというか、思わず心の中でエールを送ってしまいました。

それはそれとして、さらに気になるのが中国における中華料理の定番メニューの位置付けです。というのも、餃子の王将の看板メニューといえば当然餃子になるわけで、日本人にとってたいへんポピュラーな、中華料理といえば餃子がまず挙がっても不思議ではなくらい馴染みのある料理なわけですよね。他に中華料理と言えば麻婆豆腐、青椒肉絲、ラーメン、チャーハン、ザーサイなどでしょうか。中国でも餃子は当然メジャーな食べものなはずなんですが、日本では餃子といえば焼き餃子である一方、中国では水餃子が主流であると聞いたことがあります。このように日本と中国の間に微妙な差があるわけです。

また、先日こういった記事を読みました。

これを見ますと中国人が好きな中国料理は日本人が好きな中華料理とはまったくと言っていいほど異なっています。そういえばこの頃日本に増えている中国系の飲食店を見てみますと、火鍋に羊肉の串焼き、鴨肉、それこそ麻辣麵など日本の定番中華メニューとは明らかに違うラインナップが並んでいますよね。中国である程度支持されているからこそ日本にも進出してきたわけであって、一方で日本人には耳なじみのない料理ばかりというところ、ここにあるギャップめちゃくちゃ面白くないですか。なんで!?ってなりますよね。おれはなっています。

それから気になっているのが餃子の王将の出店戦略についてです。そういえば餃子の王将ってメインストリートに面していてもおかしくないくらいメジャーなチェーン店なのに、メインストリートから少し距離をおいた場所にありがちじゃないですか?

同じ新宿区内の餃子の王将を調べてみますと高田馬場と早稲田にあるということですが、高田馬場もメインストリートである早稲田通りから一本入った、高架線沿いの路地裏に位置しておりますし、早稲田のお店もどちらかというと学生たちが集まる高田馬場方面よりも、比較的閑静な若松河田寄りの夏目坂の途中に位置しています。

また渋谷の店舗についても思いを巡らせると、今もまだあるのかわかりませんがミヤシタパークと渋谷の高架の間くらいにある本当に細い路地の一角に位置している等、なにか意図をもってこうした立地を選んでいるとしか思えないほど共通項が見られます。これはいったいどういうことなのか、今まさに調査・分析をしているところなんですけど、まさか新大久保の餃子の王将を通りかかっただけなのにここまで興味関心が飛躍するとは自分でも驚いています。いずれもまだ結論が出せていないので少し恐縮してしまうのですが、ともあれ、新大久保の餃子の王将は引き続き心の底から応援し続けたいと思っています。世界の中の王将であれ!そんな感じです。



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