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広島AIプロセス:G7サミットでのAI政策、その現実離れした取り組み

 AIの進化は早く、技術の変化は目まぐるしいですが、これに対する政策は追いついていません。最近のG7広島サミットで発表された『広島AIプロセス』は、その典型的な例です。一方で、我々の社会や経済、それ自体がデジタル化の波に揺さぶられている中、政策作りは常に遅れているという現状を直視する必要があります。
 
 このG7広島サミットで議論された『広島AIプロセス』は、生成型AIと没入型技術のガバナンスを迅速に議論するというものです。しかし、AIの急速な発展と技術の深化を考えると、政策が追いつくのは困難でしょう。生成型AIについて議論し、その結果を本年中に報告するというのは、理論上は可能かもしれません。しかし、実際には、AI技術が日々進化する中で、議論が常に遅れてまるで意味をなさないアプローチです。
 
 また、岸田総理は『人間中心の信頼できるAI』の構築『信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)』の具体化を求めました。しかしながら、現実にはDFFTは2019年の提唱以来、具体的な成果を上げることができていません。データ流通を制御するための国際的な枠組みを求める声は多いですが、それを具現化するのは非常に困難な課題です。
 
 全体として『広島AIプロセス』のアプローチは、AIの急速な発展と現実の課題に対して、追いつけていないと言えるでしょう。現状の技術進歩と、その速度を考慮すると、政策策定の方法そのものを見直す必要がありそうです。 

G7広島サミット『分断と対立ではなく協調の国際社会へ/世界経済』概要)
令和5年5月19日
 
 デジタルについて、G7首脳は、G7の価値に沿った生成系AIや没入型技術のガバナンスの必要性を確認するとともに、特に生成系AIについては、『広島AIプロセス』として担当閣僚のもとで速やかに議論させ、本年中に結果を報告させることとなりました。また、岸田総理から、『人間中心の信頼できるAI』を構築するためにも、『信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)』を具体化させるべく、閣僚レベルの合意に基づき、国際枠組の早期設立に向けて協力を得たい旨述べました。これを受け、岸田総理は、議長国として相応の拠出も含め、貢献していく旨述べました。

G7広島サミット

DFFTとは
 DFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通)とは、『プライバシーやセキュリティ、知的財産権に関する信頼を確保しながら、ビジネスや社会課題の解決に有益なデータが国境を意識することなく自由に行き来する、国際的に自由なデータ流通の促進を目指す』というコンセプトです。DFFTは、2019年1月にスイス・ジュネーブで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて、安倍総理(当時)が提唱し、2019年6月のG20大阪サミットにおいて各国首脳からの支持を得て、首脳宣言に盛り込まれました。

DFFT:デジタル庁

デジタル経済に関する国際的なルール形成などへの貢献
1 信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)
DFFT(Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通))については、DFFTに関する協力のための G7 ロードマップが 2021 年(令和 3 年)4 月に開催された G7 デジタル・技術大臣会合で策定され、同年 6 月に開催された G7 サミットで承認された。

第 8 節 ICT 国際戦略の推進

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