砕け散った心に 藤井風カバーによせて
悲しいことがあった
とてもとても悲しいことがあった
部屋の隅で、膝を抱えて止まらない涙
仄暗い部屋の鏡に半分写っている
それは、私の形をしたただの容れ物
周囲には、砕け散った心のようなものが散らばっている
夕陽の差していた部屋は知らぬ間に真っ暗になっていた
扉の鍵がカチリと音を立て、あなたがそっと肩を滑り込ませてくる
「おいでや」優しい声で囁くあなたの顔を思わず見上げる
あなたはそっと手を引き、ピアノの斜め後ろに座らせてくれる
ピアノの蓋を静かに開け、あなたは弾き始める
あなたの少し骨ばった広い背中を見ている
背中の骨が天使の羽根のように自由に動く
そっと額を寄せてみた
そのままキミの背中に片頬を押し付けて泣きたいだけ泣いた
まるでガラスが砕け散るのを逆再生のスローモーションで見ているように、小さな破片がキラキラと集まり、やがてひとつになる
いま、あなたに向かって心が輝き出した
fin
以前から書きかけでどうしても仕上がらなかった文章。
それが風くんの優しい''grace"ピアノバージョンを聴いて、するっと出来上がりました。
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