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「現場で実装されるAI事例とノーコードでのAI内製化の展望」AIデータフォーラム

 AOSデータ主催の「AIデータフォーラム」が2023年3月17日に行われました。東大発のスタートアップ企業である株式会社Lightblue Technology 安達 琢朗氏が登壇し、現場で実装されたAI事例やノーコードでのAI内製化について解説されました。本稿では安達氏が解説された講演内容をご紹介していきます。

株式会社Lightblue Technologyとは

 代表の園田氏をはじめ、東大・京大卒のメンバーで構成されている株式会社Lightblue Technology(以下Lightblue)。監視カメラなど映像解析の要望が多くあり、取得したデータを解析し、さらに分析したデータをシステム化することを得意としている企業です。
 
AIの社会実装や計算社会科学技術など優秀なAI人材と、最先端の研究環境ですべての方にデジタルの恩恵を届けることを目標にされています。

リアル空間にアルゴリズムを導入し、人の動作を解析できる画像解析AI「Human Sensing」を開発。建設業界をはじめ飲食商業施設など、すでに70社以上に導入実績があります。

Lightblueでは解析したデータを構造化して、データを分析する仕組みづくりも行っています。マスクありの目線推定はLightblueの技術が詰まっていて、高い精度で視線を推定しているのがわかります。
 
Lightblue独自モデルの高い検出精度やデータクレンジングの精度は、検出漏れや誤認識防止、よりクリアなデータセットでの学習が可能になるでしょう。

現場実装されるAI事例

ここでLightblueが実装したAI事例についていくつかご紹介します。

駅構内の危険行動検知

LightblueでAIを活用した事例として、駅構内での危険行動をしている人物を検知し、アラートを出すシステム開発・実証実験まで行っています。乗客への迅速なフォローを目的としていて、駅に設置したカメラからキョロキョロと辺りを見渡している人を検出します。

危険行動を検出するとシステムがアラートを出すため、従来よりも駅職員が乗客の挙動に気づきやすく、素早く駆けつけられるようになりました。

商業施設の来店社分析

商業施設の来店分析は、商業施設内の什器や商品カテゴリの最適配置提案を目的として導入されました。すでに設置されている監視カメラ60台を活用し、来店からどのように動くのか検出しています。

こちらの事例では非常に少ない計算資源量で解析したことが挙げられていました。
 
通常400万円程度のサーバーが必要とされるところ、1/10くらいの費用感に抑え、システム全体の軽量・高速化を実現しています。Lightblueは少ないリソースでの解析も得意だと安達氏は説明されていました。

パッケージ事業

Lightblueでは安価かつ手軽に導入できるよう、パッケージ化されたシステムも提供されています。

パッケージ化されたシステムはそれぞれの機能に特化したモデルを開発し、システムを動かすためのハードウェアやパソコンもセットで提供されているようです。
 
パッケージ化されたAI事例は次の3つです。

  • 作業工程の見える化:映像解析ツールを導入し、工程ごとにマニュアルが遵守されているか、作業時間を計測

  • 階段昇降時の安全管理:労災防止ルールに違反している動きを検知するとアラートが発報

  • 重機カメラシステム:人と重機の接触回避システムで、重機から直接電源を取得し、AIもカメラも稼働する独自の仕組みを採用

 作業工程の見える化では作業の抜け漏れやマニュアル外の動作を検知できるため、リコールが発生した場合そのロット製品のみを回収できるようになります。

これまで、画像解析が難しかった階段昇降時の事故防止措置も、AIを活用して労災防止意識の醸成に貢献しています。手すりを持っていない、よそ見、一段抜かしといった危険動作も、AIが姿勢や顔の向きなどで判断し、リアルタイムで検出することに成功しました。
 
また、清水建設とのプロジェクトでは、人と重機の接触事故を防ぐために状況判断ができる安全管理AIを導入。赤外線センサーでは判断しきれない状況であっても、アラートがなるので作業員もすぐに気付けます。雨やホコリなど劣悪な環境でも正常に作動するよう、コンパクトなAI単眼カメラを重機に取り付け、電源などの機材も設置しています。

ノーコードでのAI内製化

 Lightblueでは誰でもAIツールが作成できる「Human Sensing BASE」サービスを提供しています。安達氏によると直感的な操作で誰でもAI導入を内製化できるため、社内にAIノウハウを溜められるメリットがあるそうです。
 
AIのデメリットである高額なコストを抑えて導入ができるため、中小企業や予算の限られている部門での導入も実現できるのではないでしょうか。作れるモデルは物体検出モデルと動作分類モデルの2種類です。

また、SaaSサービスのためパソコンがなくても、現場のエッジマシンにインストールすればオフラインでも稼働できます。推論結果をCSVに吐き出せるので、より詳細な分析を行いたい場合も安心でしょう。
 
AIモデルの作成から運用までの流れは、以下の画像の通りです。

まずは学習させたいデータを収集し、教師データを作成してからモデルを構築します。構築したモデルで映像解析をし、現場でモデルを運用していきます。

構築したモデルはエッジマシンにダウンロードすればオフラインでも使用できるため、情報管理が厳しい現場でも利用できると安達氏は話していました。

オフラインでもAIモデルが使用できるのは製造業や精密機器を扱っている企業にとって、画期的なツールといえるのではないでしょうか。
 
データの収集はアップロードした動画からアノテーションタイプを選択し、それぞれアノテーションのタグを作っていきます。アノテーションしたい動作が始まるところで一時停止をし、先ほど作成したタグを選択。

再度動画を再生し、アノテーションしたい動画が終わった所で一時停止をすると、アノテーションした部分が動画のシークバーへ反映されます。

まとめ

今回は事業概要とともに、AIを活用した導入システム事例、ノーコードでのAI内製化について安達氏に解説いただきました。

提供されているHuman Sensing BASEは、誰でも操作しやすいAIツールでありながら、低コストで運用できることが特徴です。予算が合わず、AIの導入を見送った企業担当者の方も、この機会にAI導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

また、今回のAIデータフォーラムでは安達氏の他にも、AIについてたくさんの講演がありました。

主催であるAOSデータも「AIデータリスクマネジメントALMとAIライフサイクルについて」について講演を行いましたので、次回6/5(月)に当日の様子をお伝えします。


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