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ブレない価値観を譲ってはいけない。


自分の本当の気持ちを引き出してくれる人ってそうそういない。
それって本当の私を見てくれていないとできないこと。
思いを言葉にしているのはほんの一部でしかない、それでも中には発した言葉の裏側まで読み取って心の声を拾ってくれる人もいる。


私はどちらかというと「思いを表に出せないタイプ」。人に弱みを見せられなくて仮面をかぶるように笑顔を作っていた。いつもヘラヘラしていたから周りから悩み事なさそうだねといつも言われて。私もそうですね~なんていいながらごまかして本性を見せて嫌われるよりもいつもニコニコしていたほうがましと思っていた。当時の私はそんなスタイルで仕事をしていた。組織に入って仕事をするには時には妥協する事も必要だし、納得いかないこともやらなきゃいけない、当然のこと。私も少々のことは目をつぶれるくらいの大人になっていた。


中間管理職で仕事をしていたある日、スタッフの面談で先輩に入ってもらったことがあった。その子は退職の申し出があったためどうにか辞めないように話をもっていってほしいという上からの指示。面談が始まって私は驚愕する、スタッフの声を一切聞かずに先輩が一方的に話していたから。

これは面談じゃないよね?

こういう時、私はまずは相手の思いを聞き取ることをしている、何を思っているのかが理解できて初めて自分の言葉が届くと思っているから。自分のやり方とまるで違う進め方に正直戸惑いを隠せないでいる中、間髪入れずにそれっぽい言葉を投げかける先輩、うなずいている相手という光景が奇妙でならなかった。私も負けじと話そうとするもことごとくかき消されていく。翌日先輩は私に言った、

「ああいうのやめてほしいんだけど、その場を和ませようとして笑ったりしてたよね、こっちは真剣にやってるんだから。」

結構な剣幕で。

「私は、彼女の本当の思いを聞き出すことが大事と思ったので、それからじゃないと話は進まないと思ったんです。」

と反論するも

「今の状況分かってる、そんなに悠長にしてられないから。次からは割り込んでこないで。」

と一撃された。先輩の言う通り私が担当している部署は危機的状況ではあった。でもそれとこれと話は別、みんな意思を持って仕事をしているそれを無視するのはどうしても納得がいかなかった。

自分のことを分かってくれないと感じるとひとたびレッテルを貼ってしまったなら、心のシャッターを静かに降ろしてしまう。

本当の気持ちを引き出すのはより一層難しくなる。

少しでも抱えているものを一緒に持ちたい、そう考えのは間違っているのだろうか?当時の私は「それは間違っている」と主張する自分と「間違っていいても呑み込まないといけない」と思う自分が交互に出てきて混乱していた。

そんなときに就職してからいつも気にかけてくれていた副部長が声をかけてくれた。顔を合わせるといつも「頑張っていますね」とはめてくれる優しさと看護を熱く語る熱意のある人だ。いつも真剣に話を聞いてくれ本質を見抜いて語る言葉に信頼があった。

「組織として働いている以上、納得できないことも間違っているんじゃないかと思うことはたくさんある。でもみんなはどうにか処理して働いている。納得できなくても流して働かないといけない。でもここで信念を曲げてしまえば自分が大事にしているものがなくなるような気がするんです。だから私はどうしても譲れないんです。」

気づけば泣きながらつっかえていたものを吐き出していた。こんなアンチな意見を言う部下を普通は煙たがられるに決まっている。でも副部長は

「今聞いたことで私は確信しました。あいかもさんは看護観をしっかり持っている看護師さんなんだって。どんなに揺さぶられてもブレない気持ちがあるってことが分かりました。」

と。私の中にあった絡まった糸がほどけたような気がした。


自分以外の人の気持ちを分かるって本当に難しい。だから会話をして本心を聞き出したりその人の行動を見て分析したりして理解を深める。人の上に立ているからこそ発する言葉には重みをもたなくてはいけない。私の思いを汲み取った副部長の存在で大事な物を見失わないで済んだ。ほかの人に理解してもらえなくてもいい、副部長だけが知ってくれているだけで心は軽くなった。

上司の指示に従う先輩と本心を引き出すことが出来る副部長どちらも間違っていないのかもしれない。社会人であれば従わないといけないことも往々にあるし、私も社員である以上やるべきことだ。でも人の話に耳を傾けその真意を引き出す力は持っていたいと思ってしまった。足りなかったのは説得力。先輩には私の思いは届かなかった。


みんな仮面をつけて生きている、社会に適応するために。苦しくても辛くても隠しながら。心をすり減らしながら毎日頑張っている人、意見を持っていても言えなかった人、これでいいのかと葛藤している人。心の叫びを言葉の端々にサインとして出している。誰かに助けてほしいと思っている。そんな微かなサインを逃さずに引き出すことが出来る大人でいたい。

嘘や上辺の表情ではなく仮面の中の表情を

あなたのことを本当に理解してくれている人はいますか?





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