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築きたい世界観を言語化するまでの遠回り [コンセプトの話]

今でこそ“renacnatta”(レナクナッタ)のブランドコンセプトは「文化を纏う」というフレーズに収まっていますが、立ち上げた当初のコンセプトは「日本の着ら“れなくなった”着物とイタリアの使わ“れなくなったシルクが融合し新たなものへと生まれ変わる」というものでした。
というか、正確なフレーズというのは定まっていなくて「日本とイタリアの文化の融合」「デッドストックに新たな価値を」とも言っていたり。
コンセプトはあるのだけどそれを上手く言語化できていない時期というのがありました。
(ブランドを立ち上げてから多くの失敗→修正を繰り返しているので、今まで書いたことのなかった失敗談や反省点もnoteでは書いていきます..!!)

今回はブランドコンセプトが「文化を纏う」というフレーズになるまでの経緯を書いていこうと思います。
最後に私が実践するコンセプトの導き出し方も。

目次
・ブランドコンセプトの定義
・ブランドコンセプトが決まるまでの経緯
 - クラウドファンディング時代
 - エゴから目が覚める
 - これだけは伝えたい!を選ぶ
・ブランドコンセプトの導き出し方

ブランドコンセプトの定義

経緯に入る前にブランドコンセプトの定義について書いておこうと思います。
ブランドコンセプトの定義には様々な言い方があると思いますが、私はビジネスが打ち出す世界観だと認識しています。
具体的にはビジネスが掲げる「築きたい世界」を一瞬で伝えらえる言語、です。
ブランドコンセプトを作ることで、ブランドの軸が決まると同時に、他の人がそのブランドがどんなものか瞬時にイメージができ、他のブランドとの違いも理解できます。ブランドコンセプトがなかったり、定まっていないと、ありとあらゆるモノが溢れるこの世界に埋もれていってしまいますよね。

有名どころのコンセプトの例を見るとわかりやすいかも。

・ダイソン
吸引力の落ちないただ一つの掃除機
・ウイダーinゼリー
10秒チャージ2時間キープ
・AKB48グループ
会えるアイドル
・シャネル
女による女のためのモード

などなど。

これらを見てわかるのは決してぼんやりとしたイメージやただキャッチーなフレーズや単語の並びなのではなく、短いフレーズの中にその企業のビジョン(志)・ミッション(成すべきこと)・バリュー(価値)が詰まっているということ。

とツラツラ書いていますが、かくいう私も以前まではコンセプトの定義を理解しつつも、コンセプトでブランドの良さをすべてわかってほしい!というエゴがあったので短いフレーズに収めることを恐れ、冒頭で書いたような説明ったらしい長いフレーズになってしまったり、場合によってフレーズを変えたりとブレてしまったりしていたのでした。

それでは、前置きはここらへんにしておいて、次に私のブランドのコンセプトが決まるまでの経緯を書いていきたいと思います。

クラウドファンディング時代

私は2年前、クラウドファンディングで自身のブランド"renacnatta"をローンチしました。当時のプロジェクトページは、アピールしたいことがありすぎて内容は盛り盛り。見てみたい方はこちらのリンクからどうぞ。
ヴィンテージ着物×伊シルクのリバーシブルスカート「renacnatta」を世界へ
リンク先に飛ぶのが面倒な方はプロジェクトページに載せたこちらの画像をご覧ください。

言いたいことが溢れすぎているのがよくわかる画像ですね。

ただ言えることは、クラウドファンディング実施中にプロジェクトページを訪問してくれる人はプロジェクトを知りたい、支援したいという気持ちをすでに持ってくれている人が多いということ。なので長いランディングページでも、しっかりと構えて見てくれている人が多いので簡潔にさらっと書くよりも、長く熱く書いた方が逆に良かったりします。
そのため、私のブランドのように伝えたいことが盛り盛りの熱血ブランドはクラウドファンディングとの相性がよかったようにも思えます。実際、当時SNSのフォロワー数も今よりだいぶ少なかったですが、結果は大成功でした。

エゴから目が覚める

クラウドファンディングが終わって、無事EC限定で販売がスタートしました。その時期から人に「どんなブランドか」を口頭で説明すると、大抵の人が頭がパンク状態になっていました。あまりにもアピールポイントが多いからです。上記の写真の内容をペラペラ喋るんですから、視覚から入るよりもこんがらがりますよね。(それに加え私の説明能力が高いわけでもなく、、、)
それでも私は全部伝えたかったのです…!!

ECがスタートしてから数ヶ月たったある時、VOGUEなどの一流雑誌やCMなどのスタイリングも手がけるスタイリストの知り合い(私よりずっと前にミラノに住んでいたこともある人生の先輩)に相談する機会がありました。
ブランドについて一通り説明し終わると最初の一言は「盛り込みすぎ」。続けて「それは独りよがりだな」とも言われました。それまでは周りに褒め言葉しかもらっていなかったので、正直グサっときました。
しかしそれと同時に「独りよがり。。。た、し、か、に…!!」と目が覚め、視界が広がったように感じました。
私自身がアピールポイントを盛り込んで満足しているだけで、買う人はそこまで理解が到達しないし、興味もそこまで持たない、むしろ意識を散漫させて興味を遠ざけかねないということに気がついたのです。
「ブランドはワンフレーズでシンプルに説明できないと人には刺さらないよ。」
その方のこの言葉から私がそれまで避けていたブランドのアピールポイントの削ぎ落とし作業がはじまったのです。

これだけは伝えたい!を選ぶ

イタリアと日本の生地を合わせて作っているんだよ!
それは私がイタリアと日本在住だからだよ!
デッドストックだけを使っているんだよ!
着物からヒントを得ている巻きスカートなんだよ!
など、口からポロポロ出てくる言葉たちを飲み込み、
私が1番築きたい世界観はなにか、を冷静に考え直しました。

そうして出てきた答えは、お客様にはブランドを通してファッションアイテムではなくて文化を身にまとってほしいということ。
その想いを素直に表した一文「文化を纏う」がブランドコンセプトとなりました。

あとのアピールしたいポイントは、コンセプトとして掲げないからといって事実でなくなるわけではないですからね。ブランドの骨組みとして支えてくれる大事な要素には変わりありません。
ただ、新しくブランドを知ってくれる人に大きなファーストインプレッションを与えるためにはブランドコンセプトは簡潔に、言葉選びを慎重に、ということ。

そして気づいたのは「文化を纏う」という余白さえ感じるフレーズは見た人に想像する隙を与えていて、いろいろな解釈をしてもらえそうだなと。
人によって解釈の仕方は違うかもしれないけど、それもまたよし。

コンセプトの導き出し方

最後に具体的にどうやってコンセプトを導き出すのか、その具体的なやり方をちょっとだけ書きます。

上にもブランドコンセプトはそのブランドのミッション・ビジョン・バリューが詰まっている、と書きました。逆に言うとそれらの要素がないとコンセプトをゼロから考え出すことはできません。
まず、コンセプトを導き出すには次の質問を自分に問いかけてみます。

1. Target 誰のため? 
2. Method どんな方法で?
3. Benefit 何が得られる?
4. New どう新しい?
5. Why なぜ私が行う?

私のブランドの場合は、
1. Target 誰のため? 
→着物が好きな人、着物を知らないけど興味がある人
2. Method どんな方法で?
→シルクと組み合わせる
3. Benefit 何が得られる?
→1着だけで何通りも見た目を変えられるリバーシブルスカート。
 貴重な生地を使ったスカート。
4. New どう新しい?
→日本の伝統文化(着物)とイタリアの伝統文化(シルク)の融合。
 デッドストックのみの使用。
5. Why なぜ私が行う?
→イタリアと日本の両方で育ち、それぞれの国の文化をよく知っているから。

“renacnatta”の場合はBenefitやNewへのアンサーが多くて削ぎ落とす作業が入ってしまいましたが、この質問を迷いなく埋めることができれば、その中にブランドコンセプトのキーはあるはず。

あと最後のWhyが結構重要だと思っていて、なぜ私がこのビジネスをやるのか、というのを突き詰めて考えていくと、私にしか生み出せないもの、が出てくるはず。
それがブランドの強みになっていくと思います。

以上、ブランドコンセプトを定めるまでに私がした"遠回り"について書いてみました。
コンセプト作りに限らず言えると思いますが、遠回りをすることで見えてくることもあるし、私は結果的により良い答えにたどり着けたと信じたい。

 遠回りも悪くないよ!(どんなまとめ)

Cover photo from my Instagram (@by_aika): 10 Corso Como (ミラノの大好きなセレクトショップ)

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