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ヒヨドリのこと。

交差点を赤茶色のキャスケットが転がっている。歩行者用の信号はどちらも赤だ。車に轢かれてしまうのか?落した人が見当たらな…、あっ拾いに来た。帽子も人も無事で良かった。

信号が青になり横断歩道を少し行ったところで、鳥が2羽空から落ちて来た。1羽は地面すれすれで飛び去り、1羽は私から遠い方の車線の真ん中でじっとしている。本当に鳥なのか?歩道から良く見ると、確かに鳥だけど、雛だ。動く様子はない。真ん中にいれば大丈夫だけどタイミング悪く動けば…、このままではいづれ車に轢かれてしまう。
幸い両車線とも車はない。人間の匂いが付いてしまったら親鳥に見捨てられるかもと少し躊躇するが、こちら側の車線に車が2台来ているのが見え、今行かないと渡れない。待ったら雛のいる車線にも車が来てしまうだろう。
轢かれるのを見たくはないと、思い切って、駆け寄り雛を拾う。
抵抗なく拾われる。左手に収まるくらいのサイズ。柔らかい羽と暖かさを感じる。
落ちていたところの一番近くの街路樹の根元に雛を置く。雛は大きく口を開けた。鳴いた?でも直ぐに口を閉じ小石のようにじっと固まった。
親鳥らしき鳥が街路樹(3mくらのヤマモモ)の高さより少し低いくらいを鳴きながら飛んでいる。「ここだよ!早く来て!」と声をかけるも逆効果だよね。立ち去ることにした。
それでも気になり携帯で「野鳥、保護」で検索しながら歩く。飛ぶ練習をしている可能性があることを知る。明らかに雛って顔しているのに飛ぶ練習の段階なのかそれなら良いけど…。
雛の感触の残る左手の血行が悪くなり、右手に比べ赤黒くなって来た。
どうしても気になり来た道を引き返す。雛はまだ小石のようにそこにいる。
あまり近くにいても親鳥が探せないので、6mくらい離れた花壇の縁に座って、まずは市役所に電話した。自然環境保全センターが担当だと電話番号を教えてくれた。合わせて5時で終わってると思うとも言われた。
ダメもとで電話をすると繋がった。担当者がまだいるか声をかけてくれたみたいだけど、5時22分、もういなかった。
何か良い知恵はないかとtwitterに雛の写真と共に「雛が道路の真ん中に落ちて来た。街路樹の下に避難させた。保全センターに連絡したら5時で終わってしまって必要なら明日連絡してと言われた。どうして良いか分からず途方に暮れている。」とツイートした。
姿が見えなくなっていた親鳥を道の反対側に見つけた。街路灯や街路樹の辺りをウロウロしている。「雛はここだよ。早く見つけて。」と願う。しかし雛は相変わらず小石みたいに固まっていて、親鳥は気が付きそうにない。
続けてツイートしているとこちら側近くを飛んでニアミス。「気が付いて!」雛も鳴けば良いのにと思う。
更にツイートしていると私の直ぐ横を何かを咥えた親鳥が地上1mくらいの低さで飛んで、雛のいる街路樹の真ん中くらいに止まった。街路樹の上と下で呼び合っている。「良かった!」
と思ったら、私が座っている花壇の陰辺りから、もう1羽雛が歩道に出て来た。私の足元から2mくらいしか離れていない。びっくりして携帯で写真を撮っていると、私が助けた雛が飛んだ!兄弟雛の上を越して少し離れた花壇の植物の上に着地。飛ぶ練習を始めたばかりだったんだ!兄弟雛も飛んだ!

ひょっこり出て来た兄弟雛


街路樹にとまっている親鳥を少し通り越して、車道に止まってる車の後輪の前に落ちた。助ける間もなく発車し、プチんと音を立てて逝ってしまった。直ぐ後ろの車は轢かれた雛に気が付いて避けたけど、その後ろの車は気が付かず、もう1回プチんと音がした。


5時間後くらいに同じところを通った。
兄弟雛の骸は交通量が多いからもう何があったか知っている人しか何の痕跡か分からない。
でも似たような痕跡は他になかったぽいから私が助けた雛は今日は生き延びられたのかもしれない。
明日はもっと上手く飛べるようになっているはず。

20220808


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