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いろいろな5月

こんばんは、おかむらです。

毎日が超駆け足で過ぎ去っていって、もう6月。この前までコートを着ていたのに、毎日半袖に腕を通す度に不思議な気持ちです。


今回のタイトルの『いろいろな5月』は、今日まで足立区は小台にあるBRÜCKE(ブリュッケ)さんというカフェで1か月開催していた展示タイトルです。


この展示は、活版印刷とデザインの工房・まんまる〇さんによる展示だったのですが、まさに『いろいろ』!

先日の投稿でもふれた紙屋さん・竹尾さんが取扱う紙が収録された紙見本帳と呼ばれる小さなサンプル冊子ほぼ全種に、活版印刷を施した実験的な作品をメインにした展示で、色とりどりの紙に1枚1枚印刷をしているのです。
(しかも2色印刷!活版印刷では1色毎に印刷をする&手動の印刷機なので1枚1枚手で機械にセットし印刷…!)

紙の種類によっては、同じ紙でも数種~数十種類もカラーバリエーションがあるので、数えきれないほどの色にあふれたカラフルな作品。

もともとは竹尾さんの展示用に製作された作品なのですが、竹尾さんでも全種の紙に活版印刷をしたことは無いそうで、前代未聞の超大作なのです。


ここで個人的な話になるのですが、わたしは現在このBRÜCKEさん、まんまる〇さんどちらでもお手伝いさせていただいているのです。BRÜCKEさんを知ったのもまんまる〇の若林さんに連れて行ってもらったのがきっかけでした。(その時はまだ会社員で、まんまる〇さんはお客さんだったのです)

日々お世話になっているお三方(まんまる〇さんはご夫婦ふたりのユニット)によるこの展示は夢のようで、この展示の実現が一番うれしかったのはわたしだったといっても過言ではない!!はず!


BRÜCKEでコーヒーを淹れていると、ドリップしている湯気の向こう側がちょうど作品を展示していた窓際のカウンター席で、お湯を注いでふくふくふくらむコーヒーの粉を見ながらチラリチラリと、みなさんが作品を見ている姿を覗き見ることができるのが、とってもしあわせな時間でした。



展示を見てくださった方の中には、きっと紙見本を見るのもさわるのもはじめてで、どういう用途で、どうやって見ればいいのかわからないという方もいらっしゃったと思います。

紙選びのサンプルとして、または厚さ毎の風合いの違いを見るために、特定の紙を探し出すためにetc…、紙を作ってなにかを作りたい!と思った時に欠かせない紙見本帳ですが、紙を選ぶという行為自体、まだ広く一般的なものではありません。


この作品のすごいところは、その説明がなかったとしても、パラパラとめくっていても十分に目を楽しませてくれるというところだと思います。
紙の種類がこんなにあるんだ!という驚きや、同じ内容なのに頁ごとに微細に異なる印刷の変化に気づいたはず!

お客さまの中で、恐らく小学校低学年くらいの女の子が『色の絵本』、とこの作品を指して言っていたのがとても印象的で、そんな意図はなかったかもしれないけど、いろんな色の紙に、紙毎にすこしづつ変わる印刷のかすれやベタの輝きが、説明はなくとも絵本のようなリズムやストーリーを見出すことができるのかもしれない、と紙と印刷の関係を思ったりもしました。


もちろん説明を受けてはじめてわかることも多いですし(まんまる〇さん在カフェ日の盛り上がりはここ!展示の意図やおもしろポイントをじっくり説明してくださって超ありがたかった!おかむらはもじもじバタバタしてなかなか話掛けられなかった…)、手に取ってよいのかしら…?と作品に触れるのも恐る恐る、という方もいらっしゃったと思います。


でも、説明を飛び越えて、手に取った方それぞれの想像や思考の幅がこの作品には隠れていて、ひとつの重要な紙への目線や楽しみの誘いになっていたと思うのです。


BRÜCKEの店主と豆ごとに異なるコーヒーの風味をどう表現するか?という話題に時たまなるのですが、よく「それぞれの人によって感じ方はちがうから、指針をだすことでそれに縛られてほしくない」というようなことをよく店主が言うです。

その度に、コーヒー初心者のわたしとしては、なにか一個代表的な例えだけでも提示してもらえるとうれしいのにな~と思っていて、これ、そのまま紙の見方にも同じことが言えるんですよね。


わたしは紙は好きだしそれなりに詳しいから紙見本帳の見方も使い方も、紙の特徴もスラスラ(比較的…)言える。

でも、コーヒーはまだよく分かんないし国の名前とか農園の名前とか、カタカナ多いし頭に入ってこない子が多い…超納得した特徴しか言えない…!


ただ紙を見て!さわって!ね、超楽しいでしょ??!というだけでは少し心もとなく感じる人もいて、色や質感や厚さに触れるだけでよく知らなくても超楽しい!という人もいる。


伝える事の難しさ…と言ってしまうとネガティブすぎるけど、多種多様であるが故、外から見ているだけじゃ分かりづらい、人それぞれの向き合い方感じ方すべてに寄り添うことは、紙にまつわる仕事をしている中で何度も壁になっていた気がします。


どんな人にも、というのは難しいけれど、紙を伝えたいと思った時に少しでもたくさんの方法やフックを提示できるようになりたいな。

日々の生活でとても身近で親しみのある紙とのよりよい出会いや驚き、気付きになるような、フォローや誘いの術。

見る人の感じる考える力を信じながら、受け入れやすい言葉や例えをストックしていつでも手渡せるように。



いろいろな5月。

5月、思えば本当にいろいろで(憧れの”印刷のいろはフェスタ”に紙meで出れたし、父の定年退職祝いで旅行にも行ったし、尊敬する人の展示にも行けて、久しい知人や前職の上司・先輩とも会えた)、あっという間の1か月。

次のオープンの水曜からはBRÜCKEであの作品が見られないと思うとさみしい。

見本帳をめくりながら、真剣に、わいわい、びっくり、???、いろんな表情を見ることのしあわせよ。

わたしは人と紙の風景がとても好きだなぁ、と改めて気づくことができた1か月でした。



この場を借りて改めて、まんまる〇のお2人、BRÜCKE店主、いつもいつも本当にありがとうございます。最高の展示でした!

↑展示の『いろいろ』に合わせ、まんまる〇さんアドバイスのもとクリームソーダ&フロートを全8色(冒頭の展示告知の画像を参照!)も用意したのが会期中大好評でした!
写真はグレープ味。1か月で100杯以上出ました!(ヤッター!)

*展示終了後もしばらくはお出しできるのでぜひ!


…と、ここまで書いて読み返して、長ッ!!!!ってびっくりしてだいぶ消したんですが、それでも超長いですね…

わたしだったら途中で読むのやめる長さなので、ここまで読んでくださった方いたらば本当にすみません…うれしいです…

精進精進~!(簡潔にまとめる能力をnoteで養いたい…)

紙や印刷や加工にまつわる色んな方に会いにいく旅に使わせていただきます!