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療育にまつわる「からだ」へのまなざし vol.49

今回から、美術手帖「ケアの思想とアート」(2022、2月号)も扱い、まずは「傍らにある生を照らす、美術の向き合い方」の項をシェアしました。2人のアーティストは、身近な兄や妹に、ケアのまなざしが必要だと感じながら生きてきた人達。
この「ケア」という言葉を、深く丁寧に噛み砕いていくことで、このバオバヴカフェのテーマ「療育にまつわるからだへのまなざし」の根幹を編み出すことができるのでは、と思いながらのスタート。ここ数年、このカフェで扱ってきたさまざまな事例を、このまなざしから、編み直すような、整理するような。昨今のコミュニティダンスのワークショップから「ケアの苦しみを母親に押し付けてきた」(by 佐々木健)というようなところまで、また「パターナリズム」についても言及しました。話題の振り幅も容赦なく、参加者も、問題意識の高い方々ばかりで、どんどん意見が出ました。
次回は、より「ケア」という言葉について、掘り下げていきたいと思います。

また、もう1つの継続テーマ「ポリヴェーガル理論」について。
以下、文責:花沙。

最近続けて、伊藤二三郎「ポリヴェーガル理論で実践する子ども支援」(*)の内容をシェアしてきましたが、今回が最後になります。第3章の内容の続きを見ていきました。その中でも、特に印象に残った内容が、小4のツカサさんの例でした。
ツカサさんの担任の先生は、宿題を忘れたり算数の問題が解けなかったりすると、強い叱責を行っていました。また、子ども達同士で、注意や点検をさせるルールを作っていました。忘れ物や、算数の問題を解けないことも多かったツカサさんは、先生だけではなく子ども達からも批判されたり、悪口を言われるようになりました。学級に安心安全を感じられなくなったツカサさんは、「真っ青:背側優位になって『凍つく』状態に日常的に追い込まれる」(p93)ことになり、腹痛や頭痛を訴え、学校に行けなくなってしまいました。
担任の先生は、強く叱責すること(赤モード)によって、子どもが反省して、忘れ物や算数を頑張るはず、子ども達同士で、注意や点検を行うことで、切磋琢磨して皆が向上するだろう・・と思われたのでしょう。これははっきりいって、見当違いで、「虐め」になっていると思います。子ども達は、学級に安心安全を感じて(緑モード)になってはじめて、学習意欲を持つことができるはずです。
令和の時代になっても、まだまだこのような指導者側の勘違いは横行しているのではないかと思わせる事例でした。

(*)伊藤二三郎「ポリヴェーガル理論で実践する子ども支援」(遠見書房,2022)の内容:脳の自律神経系が作用し、人間は3つの心身状況 ①激しい闘争モード、②恐慌状態の逃避モード、③穏やかなモード、を有している。本書では、これを①赤、②青、③緑、と色で表現している。


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