逢見るい
たらたらと吐き出してゆく
未発表の短編たち置き場。 まだ未修整ですゆえ、誤字脱字諸々ご了承くださいませ。
わたしはとても強いので、弱いひとの気持ちがわからない。 理解しようとは思うのだけれど、完璧に理解することは難しい。 ずっとそう思っていたのですが、眠れない夜にちょっと考えてみて、思ったのですよ。 「いちいち怒っても無駄だから我慢しよう」 「弱音吐いても解決しないから呑み込もう」 「他人に頼るより自分でやったほうが早い」 「自分のことは自力で解決しよう」 「できないのではなくやるのだ、周りに迷惑かけるから」 こんなふうに考えがちなのですが、 こうなってくると周囲は自然と
網戸にしていた窓の向こうから、無機質な室内へと金木犀の香りが風と共に運ばれてくる。なびいたカーテンがパタパタと音をたてて、まるで心地のいい子守唄のようだった。 「山口さん、山口忠雄さーん」 名前を呼ぶと、一列に並んだ待合室のベンチシートから、老人がゆっくりと立ち上がった。 「はいはい、はい」 右膝に手を添え、まずはお尻を持ち上げると、よいしょっと掛け声をつけて、曲がった腰を伸ばし、一歩ずつ受付に近づいてくる。 「お待たせしちゃって申し訳ありませんね。足がね、やっぱり
美しさは隠せないと、彼女を見ているとそう思う。 「ひさびさーっ」 でもないか、と片手をあげて、改札口を抜けた彼女が小走りに近づいてくる。平日とはいえちょうど帰宅ラッシュの時間帯のせいか、駅前はひとで溢れていた。たった数メートルの間に、ひとり、またひとりと男たちが彼女を振り返ったのだけれど、当の本人はちっとも気づいてなどいない。 街中で見ると、彼女のスタイルがどれほど抜きんでているかということがよくわかる。身長はさして高いほうではないけれど、小さな顔に細く長い四肢、全体的