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■埼玉県の公園で起きたのは地方行政のバタフライ・エフェクトだったの?という話。

○はじめに

 お疲れ様です。あいなです。
 今回も引き続き、埼玉県で起きた『水着撮影会直前中止事件(仮)』の話です。

 皆さんは『バタフライ・エフェクト』という言葉をご存じでしょうか?
 「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす」や「風が吹けば桶屋が儲かる」というような、小さな動きや全く関連が無いと思われていた行為が次々と連鎖してゆき結果的に大きな動きや結果を生み出すという事象に使われる寓意的な表現です。

 今回は、この事件は『バタフライ・エフェクト』のように、今までの積み重ねが徐々に大きな問題に繋がったのかもしれない…という視点からの記事です。

○2023年7月19日 公園の管理団体が暫定条件を公表

 6月の事件から約1か月後、埼玉県公園緑地協会は公式HP上で『県営水上公園における水着撮影会の再開について』という記事を公開しました。

 公園での水着撮影会イベントの中止を撤回するにあたって、改めて許可条件を暫定的に定めた、ということが書かれています。

 この条件は3つの県営水上公園全てで適用される統一基準です。

 それと併せて、今回の中止事件に関して、一般市民からのクレームや当時行われていたイベントの実際の状況の報告やその後の検討した様子が、時系列順に改めて分かりやすく掲載されています。

○『お詫び』しているのは誰?

 まず最初に、この管理団体のHP上で公表された謝罪文をご紹介します。

当協会は、埼玉県から指定管理を受けている3つの県営水上公園において令和5年6月10日から同月25日までに水着撮影会の開催を予定していた6団体に対して、同年6月8日に水着撮影会の開催中止の要請を行い、併せて、今後、水着撮影会は、一切許可しないことを判断いたしました(詳細は下記を御参照ください。)。
 この件について、同年6月11日に、埼玉県から、明確な許可条件が定められていない施設において、他の施設の許可条件を当てはめ、予定されているイベントを中止させることや、詳細な許可条件提示後に違反が認められない者に対し中止させること、更には今後全ての水着撮影会を行わないこととする判断は適切ではないため、6団体の内4団体への中止要請を撤回するよう指導を受けることとなりました。
 当協会は、上記埼玉県からの指導を重く受け止め、中止要請をした6団体の内4団体に対し、同年6月12日及び13日に中止要請の撤回を行いました。
 この件により、事業者並びに関係者の皆様には多大な御迷惑をおかけしましたこと、また世間をお騒がせしたことに対し、改めて心からお詫び申し上げます。

リンク先引用

 まず申し添えておくと、公園の管理団体の最高責任者である理事長は、中止の申し入れがあった6月8日以降になぜか退任し、ネットでは物議を醸していました。

 その後すぐに新しく理事長に就任したのは副理事長でもあり『埼玉県都市整備部付』という、都市整備部から出向してきている人物です。

『判断いたしました』
『指導を受けることとなりました』
『撤回を行いました』

 公園の事務所を管轄する公園緑地協会からの謝罪文が出されることは妥当であると思うのですが、人事を見る限り、この判断や指導などのやりとりは、結局のところ、全部、埼玉県都市整備部の中で起きている事ですよね。

 さて今回の問題は公園緑地協会が責任を取って謝罪する話だったのでしょうか?
 みなさんは、この文章で実際に謝罪しているのは、いったい誰だと思いますか?
 わたしは、結局のところ都市整備部なのだと思います。

○公表された経緯と根拠

次に、『埼玉県営水上公園 水着撮影会中止申し入れに至るまでの経緯と根拠について』の文章を、ざっくり引用&時系列に沿って箇条書きで紹介いたします。

●2023年4月下旬:S公園において一般利用者から「水着撮影会の様子が見えている。県営公園で行うのはふさわしくない」という意見が出る。
●2023年5月下旬:S公園で開催されたイベントにおいて「18歳未満のモデルを使用している」「成人女性が被写体であっても公園で行うにはふさわしくないイベントだ」という意見が出る。
●2023年6月上旬:意見を受けて、4月&5月開催水着撮影会の状況を確認
<公園管理団体が状況確認して分かったこと>
・S公園では令和5年度から主催者に禁止事項を例示した詳細な許可条件を示していた。
・にもかかわらず、禁止事項に該当する過激なポーズでの撮影行為が行われていたことが複数確認された。
・つまり、『一部の団体は、許可条件に反した水着撮影会を開催していた』という事実が確認できた。
・2023年4月&5月に開催された水着撮影会で、18歳未満の児童がモデルとして参加したことが伺えた。
(注:これはこのタイミングで主催者側に確認したわけではなく、恐らくSNS等ネットにある情報から『確認』したのではないか)

<確認後、公園管理団体が判断・勘案したこと>
・違反行為が具体的に確認できなかった他の団体も含めて、主催者側では撮影者やモデルの禁止事項に反する行為をコントロールできないおそれが高いと判断
・18歳未満の児童がモデルとして水着撮影会に参加した場合、水着撮影が法令(児童ポルノ法、埼玉県青少年健全育成条例)に抵触するおそれがある懸念
・県営施設であることを勘案
・過去にも何度か苦情や意見があったことを勘案
・近年のジェンダーに係る社会的意識の変化を勘案
・近隣他県の県営公園では同様のイベントを近年は実施しておらず、また民営においても使用させていない施設が出ていることを勘案

<諸々総合的に勘案して検討した結果>
・埼玉県都市公園条例第9条第2項第2号の「公共の福祉を阻害するおそれがある」ものと判断

●2023年6月8日:S公園とK公園で6月中(10日以降)に開催が予約されていたすべての水着撮影会の中止を決定。同日、各主催者にその旨を申し入れる。
●2023年6月11日:埼玉県(知事)から、6団体の内4団体への中止要請を撤回するよう指導を受ける。
<その理由>
・明確な許可条件が定められていない施設において、他の施設の許可条件を当てはめ、予定されているイベントを中止させることや、詳細な許可条件提示後に違反が認められない者に対し中止させること、更には今後全ての水着撮影会を行わないこととする判断は適切ではないため

●2023年6月12日&13日:中止要請をした6団体の内4団体に対し、中止要請の撤回を行う。
●2023年7月19日:当面予定されている2023年9月&10月の水着撮影会について、3つの水上公園で統一した許可条件を暫定的に定め、運用することに。
●来年度以降の許可条件については新年度の会場予約受付を開始する来年2月までに決める予定。

『埼玉県営水上公園 水着撮影会中止申し入れに至るまでの経緯と根拠について』を引用し
箇条書きにしたものになります。

○公開された暫定条件について

 こんどは、公式HP上にて公表された暫定条件(PDF)につきまして、気になる箇所を引用してご紹介いたします。

●許可について
・「公園内行為許可証」の発行をもって施設のご利用が確定したことになります。「公園内行為許可証」の発行までは、いかなる状況でも利用を許可したことにはなりませんのでご注意ください。なお、「公園内行為許可証」は、利用期間中、提示を求めることがありますので、施設利用終了まで保管してください。
●モデルの服装等について
・そのほか公園管理事務所職員が過度な露出と判断した場合は、着替えを指示することができ、従わない場合は許可を取り消してイベントを中止することができることとします。
その際に発生する費用・損害について、公園側は一切責任を負いません。
●撮影場所等について
・撮影可能場所はプールサイドとします(許可時に図示した範囲とします)。
・プール本体内に入ることは、公園側が許可しない限り禁止とします。
(モデルも入ることはできません。水のない状態の時も同様。)
・許可なく設備を使用したり、上に乗ったりする行為は禁止とします。
・許可なく備品を使用することは禁止とします。
・他の公園利用者に配慮するため、周辺の遮蔽に努めてください。
●事前打ち合わせについて
・円滑かつ安全なイベントの開催ができるよう、当公園管理事務所とイベント主催者は入念な事前の打ち合わせを行うこととします。

埼玉県営水上公園 水着撮影会開催許可条件 別紙より引用

○主催者と公園って元々良好な関係なんじゃなかったの?

 この経緯や暫定条件を読んでいくと、中止を要請するまでは良好な関係だった…というのは主催者側のコメントにありましたが、果たしてお互いが『良好』だと思っていたのでしょうか?という疑問が生まれます。

 『主催者側では撮影者やモデルの禁止事項に反する行為をコントロールできないおそれが高いと判断』した公園側は、『円滑かつ安全なイベントの開催ができるよう、当公園管理事務所とイベント主催者は入念な事前の打ち合わせを行うこと』を条件に含めています。

 また、主催者側のSNSやメディア取材でのコメントを見ると、果たして『中止』なのか『不許可』なのか分からない部分がありました。

 今回の暫定条件には『「公園内行為許可証」の発行をもって施設のご利用が確定したことになります。「公園内行為許可証」の発行までは、いかなる状況でも利用を許可したことにはなりませんのでご注意ください。』と記載がされています。
(これは元々の条件にも存在したのかもしれませんが)

 個人的な印象ですが、大きな問題があった後に、末端から洗い出された課題や新しいルールには、『今までやろうとしてできていなかった事』が強く出るようなイメージがあります。

 私は、今回の事件で県側が口にした『コントロール』という言葉に強い興味がありますが、これはどのような事例を想定して発したのだろう…?と思うと、今回の暫定条件には、そういった『公園側の要請に対して主催者側がナァナァで済ませていたこと』や『公園側が主催者側に本来要求しなければいけないこと』が現われているのかもしれないと思いました。

○おわりに

 いかがでしょうか。

 『公園緑地協会』…ひいては地方行政団体が『今までやってこなかったこと』が見えてくるのではないでしょうか。

 私個人が思うに、この事件のお話の一番最初の最初の最初の起点は、『外から見えないようにしてほしい』という市民の声だったのでしょう。

 その声を過小評価し場当たり的な対応をしているうちに、次第に県政や人権団体を巻き込みメディアで全国に拡散されるような、大変に大きな問題になっていきました。

 まるでメキシコの一匹の蝶のはばたきがテキサスで竜巻になったように…

 一つの地域で起きた水着撮影会の問題ではなく、日本の地方行政の運営や条例&法整備などの問題として、深く考えさせられる事件だなと思います。

 次回は『そこまで言って委員会』でこの事件が取り上げられた際のゲストコメンテーターのコメントをご紹介する記事にしたいと思っています。

 よろしければこのアカウントをフォローいただきまして、次回の記事を気長にお待ちくださいませ。

それでは。また。


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