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地域通訳案内士資格の理想と現実

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観光業が壊滅的ダメージを受け続ける2021年、観光業従事者の中には知識を深め、観光業復活の時を今か今かと待っている方も多いかと思います。

以前の記事で全国通訳案内士資格の残念な実情について書きましたが、その一方で別の動きが業界内で起こっているようなので、今回はそのことについて書きたいと思います。

それは、地域通訳案内士資格です。
国家資格である全国通訳案内士の資格とは対比的な存在として地域通訳案内士の育成が最近ちらほら見かけるようになりました。

令和3年4月付けの統計で、全国で40地域で地域通訳案内士の育成が行われており、すでに3500名を超える方が研修を受講しています。(研修を受講したからといって、その数がそのまま地域通訳案内士ではないというところが一つミソかもしれません)

個人的に、全国通訳案内士資格取得プロセスの残念な実情をふまえ、その代わりに(なるかどうか分かりませんが)とある地域通訳案内士の育成研修を受講してきました。

その前に前置きを少ししておきます。

ガイドになりたいなら

インバウンド向けのガイドをしたい!と思ったらまず全国通訳案内士資格の取得を目指すのは、個人的にはあまりお勧めしません。
たしかに2018年以前であれば、有償でガイド行為を行うには全国通訳案内士にならないといけなかったので、全国通訳案内士試験を受験することは必須の流れでした。
しかし、今となっては国家資格を持たなくても有償でガイドができるようになったのでその流れに従う必要はないのです。
しかし、無資格でできるようになったからといって誰しもが軽い気持ちで外国語でガイドをしてしまうと、ガイド業界全体の質の低下や不必要な価格競争により業界が荒れるなど問題点もあるという点は懸念材料としてあります。

そもそも外国人旅行客を相手にガイドをしたいと思った時にまず全国をまわって仕事することをイメージされる方はそれほど多いとは思えません。
多くの場合、住んでいる地域や自分の興味ある趣味などを外国人にシェアしたいという気持ちだと思います。
なので、ガイド業界の入口は特定の地域や自分が紹介したい内容がしっかり外国語で説明できれば良いのです。
にも関わらず、全国通訳案内士資格という日本全国に及ぶ範囲を網羅することが求められるのはどこかちぐはぐしています。

全国通訳案内士資格保有者は、都市部(東京、大阪、京都等)に集中していて地方都市や田舎の観光都市には極端に少ないというアンバランスな状況も起きています。

たしかに地方都市に住んでいてガイドを目指して全国通訳案内士の資格が取得できたら貴重な人材になれることは事実です。
ですが、業界としては地域に住む人が地域の知識を知ってその地をガイドできる人材が今求められているように思います。

そこで、個人的に注目していたのが、地域通訳案内士の存在でした。

地域通訳案内士

地域通訳案内士は、全国版と違い試験ありきではなく、地域別に育成プログラムが組まれていて受講生はその講座を受講し試験を突破することで地域通訳案内士になることができます。

全国通訳案内士資格のように試験一発勝負で、資格は取れてもその後は各々の努力と行動次第という状況に比べて、居住地などの特定の地域のみをガイドしたい人にとってガイドになるためのプロセスを講座としてサポートしてくれるのはアプローチ方法として正しいと思うのです。

というわけで、私はとある地域通訳案内士の講習を受けてきました。

育成研修の実情

結果からいうと、これまた残念なものでした。
正直、この研修を最後までやり遂げて試験も突破したところで、ガイド未経験者がガイドデビューできるかというと難しいのではと思ってしまいました。
たしかに限られた時間とリソースの中で、知識もあらゆる状況もバラバラな受講生を育成するのは簡単なことではないとおもいますが、一応ガイド経験者である私の目から見てももう少しガイドになるために直結する育成方法があるように感じました。
正直なところ語学力を向上したり、地域の地理歴史の知識を身に付ける必要があることはガイドになろうと思っている人には当たり前の認識だと思います。なので、その内容を限られた時間で使ってしまうのでは正直勿体ないと思うのです。
育成カリキュラムで求められているのは、ガイドとしての準備の仕方現場感だと個人的には思います。
ガイドの依頼をもらいガイドするまでに準備として何をしなければいけないのか、下見をする際にどういうことを詰めなくてはいけないのかなど、準備のノウハウを具体的に教えるべきだと思うのです。
そして、圧倒的に必要なのは外国人の前で外国語で説明をするアウトプットの機会です。ガイド経験がない人にとって外国人の前で外国語を話すことはかなりハードルの高いことで、それは経験し慣れることでしか上達してきません。その機会をできるだけ与えることが育成研修内で行われる必要があると思うのです。
正直、留学経験者などで日常会話などがなんの不自由もなくできる人であってもある程度決められている事実を外国人の前で説明することは簡単ではないのです。


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