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【論文瞬読】自然言語だけでアルゴリズムを実行?LLMによるプログラミングの新時代到来

こんにちは!株式会社AI Nest です。
今日は、自然言語プログラミングにおける大規模言語モデル(LLM)の可能性について、とても興味深い研究論文を読んだので、その内容を皆さんにシェアしたいと思います。

論文のタイトルは「Executing Natural Language-Described Algorithms with Large Language Models: An Investigation」で、アルゴリズムテキストからLLMがアルゴリズムを理解し実行する能力を評価したものです。この研究は、LLMの新しい応用分野を切り開く可能性を秘めていると感じました。

タイトル:Executing Natural Language-Described Algorithms with Large Language Models: An Investigation
URL:https://arxiv.org/abs/2403.00795
所属:Chinese Information Processing Laboratory, State Key Laboratory of Computer Science, Institute of Software, Chinese Academy of Sciences, Beijing, China, University of Chinese Academy of Sciences, Beijing, China
著者:Xin Zheng, Qiming Zhu, Hongyu Lin, Yaojie Lu, Xianpei Han, Le Sun

LLMのアルゴリズム実行能力を評価する実験方法

著者らは、コンピュータサイエンスの学生なら誰もが知っているアルゴリズムの教科書「Introduction to Algorithms」から、挿入ソート、クイックソート、ダイクストラ法、ナップザック問題など、30の代表的なアルゴリズムを選択しました。そして、各アルゴリズムに対して10のランダムなインプットデータを生成し、これらのアルゴリズムの説明とインプットデータを自然言語に変換しました。

次に、GPT-3.5やGPT-4などの最新のLLMに、この自然言語で記述されたアルゴリズムの説明とインプットデータをプロンプトとして与えました。LLMには、アルゴリズムをステップバイステップで実行し、正しい結果を出力することが求められました。

キーワード制約付きの反復文生成のためのプロンプトと、Text-Davinci-003モデルの応答
括弧の組み合わせが有効かどうかを判定するタスクのプロンプトと、Text-Davinci-003モデルの応答
バイナリサーチアルゴリズムのプロンプトと、GPT-4モデルの応答

実験結果: GPT-4の驚くべきパフォーマンス

実験の結果、特にGPT-4は驚くべきパフォーマンスを見せました。GPT-4は、自然言語で記述されたほとんどすべてのアルゴリズムを正確に理解し、各ステップを的確に実行し、変数の値を一貫して保持・更新しながら、最終的に正しい結果を出力することができたのです。

CLRS-miniデータセットに対する各モデルの性能
CLRS-Numericデータセットに対する各モデル

これは、LLMがプログラミング言語のインタプリタとして機能する可能性を示唆するものです。つまり、私たちは自然言語を使ってLLMにプログラムの実行を指示できるようになるかもしれません。コードを書く代わりに、アルゴリズムを言葉で説明するだけで、LLMが自動的にプログラムを生成・実行してくれる未来が想像できます。

課題と今後の展望

ただし、課題もあります。現在のLLMは、浮動小数点数の演算が必要な数値計算集中型アルゴリズムの実行には苦戦しているようです。この点については、LLMの改良や、外部の数値計算ツールとの連携などによって解決が図られるかもしれません。

また、LLMがプログラムを本当に「理解」しているのか、それとも単に訓練データを記憶しているだけなのかという疑問も残ります。しかし、著者らは、ランダム生成されたテストデータを使用していることや、Pythonコードよりも詳細な自然言語による指示の方がLLMのパフォーマンスが高いことから、単なる記憶ではないと主張しています。

自然言語プログラミングの未来

個人的には、この研究はLLMの新しい応用可能性を示唆する重要な一歩だと思います。自然言語プログラミングの分野が発展すれば、プログラミング教育が革新されるかもしれません。初心者でも自然言語を使ってプログラミングを学べるようになるでしょう。また、ソフトウェア開発の現場でも、LLMを活用することで、コーディングの効率が大幅に向上するかもしれません。

一方で、LLMの振る舞いをより詳細に分析し、その能力と限界を明らかにするための研究も必要だと感じました。LLMがどのようにしてプログラムを理解し実行しているのか、どのような種類のアルゴリズムが得意で、どのような種類のアルゴリズムが苦手なのか、などを明らかにすることで、LLMを活用するための指針が得られるでしょう。

まとめ

自然言語プログラミングの分野は、まだ発展途上ですが、大きな可能性を秘めていると思います。この論文は、その可能性の一端を示してくれました。みなさんも、LLMとプログラミングに関する最新の研究動向に注目してみてはいかがでしょうか。ではまた、次回の「論文瞬読」でお会いしましょう!