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【論文瞬読】全てのセグメンテーションはSegGPTに集約される!

こんにちは!株式会社AI Nestです。今回は、画像や動画のセグメンテーション(物体や部分の境界を検出するタスク)において、様々なタスクを一つのモデルで解決できるSegGPTの紹介です。

タイトル:SegGPT: Segmenting Everything In Context
URL:https://arxiv.org/abs/2304.03284
所属:Beijing Academy of Artificial Intelligence, Zhejiang University, Peking University
著者:Xinlong Wang1, Xiaosong Zhang, Yue Cao, Wen Wang, Chunhua Shen, Tiejun Huang,

SegGPTとは?

SegGPTとは、単なる研究プロジェクトではなく、画像や動画のセグメンテーションタスクを根本から変革しようとする野心的な試みになります。この分野で直面している課題は、画像の各ピクセルに正確なラベルを付けること。これは、物体の種類や個数、形や位置といった情報を識別することを意味します。そして、SegGPTのアプローチはここに革新をもたらします。内部には、Vision Transformerが搭載されており、これは自然言語処理の領域で大成功を収めたTransformerモデルを、画像に応用したものです。画像を小さなパッチに分割し、それらをトークンとして扱うことで、画像の豊かな特徴を捉えるのです。

さらに、SegGPTは「in-context learning」という手法を採用しています。これは、セグメンテーションの結果を色付きの画像として表現し、その一部をランダムにマスクして、元の色を予測する方法です。この学習プロセスを通じて、モデルはタスクの指示を理解し、さらには、特定の色に依存することなく、様々なセグメンテーションタスクに対応できるようになります。

SegGPTは1つのモデルですべての文脈のセグメンテーションに対応

今までの研究と何が違うの?

コンピュータビジョンの分野において、画像のセグメンテーションは非常に重要な役割を果たします。これには、セマンティックセグメンテーション(物体の種類ごとに画像を分割する技術)、インスタンスセグメンテーション(個々の物体を識別し、その形状を分割する技術)、パノプティックセグメンテーション(物体と背景の両方を同時にセグメンテーションする技術)など、様々なアプローチがあります。

従来のセグメンテーションモデルは、これらの異なるタスクを達成するために、タスクやカテゴリーに特化した異なるモデルや学習方法を採用してきました。これにより、特定のタスクにおいては高い精度を達成することができましたが、新しいタスクやカテゴリーに対応する際には、新たなモデルの開発や既存モデルの再学習、さらには詳細なアノテーション作業が必要となります。これは、時間とリソースの大きな投資を意味し、モデルの柔軟性や汎用性に大きな制約をもたらしていました。

ここで、新たなアプローチとして登場したのがSegGPTです。SegGPTは、従来のセグメンテーションモデルが抱えていた問題点、すなわちタスクやカテゴリーに特化しすぎていることによる柔軟性や汎用性の欠如を克服することを目指しています。SegGPTは、一つの統一されたモデルフレームワークを用いて、異なるセグメンテーションタスクに対応できるよう設計されています。これにより、新しいタスクやカテゴリーに適応する際の再学習やアノテーションの必要性を大幅に低減させ、より迅速かつ効率的なセグメンテーションモデルの開発と適用が可能となります。

SegGPTの登場により、セグメンテーションモデルの開発と適用における新たな可能性が広がっています。この革新的なアプローチは、コンピュータビジョンの分野におけるさらなる進化を促し、様々なアプリケーションでの応用が期待されています。

SegGPTの核となる技術は?

SegGPTの核となる技術は、Vision Transformer (ViT) とin-context learningです。ViTは、トランスフォーマー技術を画像認識タスクに応用したもので、画像をパッチに分割し、それらの関係性を深く理解することを可能にします。この技術により、画像内の微細な特徴やパターンを捉えることができ、セグメンテーションの精度を大きく向上させます。

一方、in-context learningは、モデルが与えられた例を通じてタスクを学習する手法です。このアプローチでは、モデルは特定のコンテキストや状況に基づいて、適切なセグメンテーション手法を選択し実行します。この柔軟性が、SegGPTを他のモデルと一線を画す特徴となっています。

SegGPTのトレーニングフレームワークの全体図

実験結果

実験の概要

  • データセット: SegGPTは、意味、インスタンス、パノプティックなど、様々なタイプのセグメンテーションデータセットを使用

  • モデル: Vision Transformer (ViT-L) エンコーダを使用し、307Mのパラメータを持つ

実験結果

  • Few-shot セマンティックセグメンテーション: COCO-20/PASCAL-5の設定で、SegGPTは専門家モデルと比較して競争力のある、または優れたパフォーマンスを示しました。

  • ビデオオブジェクトセグメンテーション: YouTube-VOS 2018、DAVIS 2017、MOSEなどのデータセットで評価され、専門家モデルと競合する結果を達成しました。

コンテキストチューニング:

  • ADE20KとCOCO: SegGPTは、学習可能なプロンプトを使用して、ADE20KセマンティックセグメンテーションとCOCOパノプティックセグメンテーションのベンチマークで評価されました。専門家モデルと比較して競争力のあるパフォーマンスを示しました。

COCO-20及びPASCAL-5の実験結果

まとめ

SegGPTは、その多様性と汎用性により、様々なタイプのセグメンテーションデータセットを使用した実験により証明されました。

しかし、全てが順調というわけではありません。新しいランダムカラースキームの導入により、特定のベンチマークでのパフォーマンスが低下する可能性があります。これは、モデルが新しいカラースキームに適応するための学習時間が必要であることを示しています。

しかし、この挑戦は、SegGPTの可能性をさらに引き立てるものです。モデルサイズの拡大や自己教師あり学習技術の探求により、さらなる改善が期待されます。これからもSegGPTの進化が楽しみですね!