『El empleado y el patrón（従業員と雇用主）』ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジル、フランス、2021年、106分

公開日：2021年7月6日 (カンヌ国際映画祭監督週間部門にて初公開)、2022年1月13日（アルゼンチン公開）
言語：スペイン語
英語タイトル：The Employer and the Employee

監督・脚本：Manolo Nieto
出演：Nahuel Pérez Biscayart … Rodrigo
Cristian Borges … Carlos
Justina Bustos … Federica
Fátima Quintanilla … Estéfanie
Jean-Pierre Noher … Papá de Rodrigo
Carlos Lacuesta … Lacuesta
Roberto Olivera … Sampaio

Instagram:　https://www.instagram.com/empleadoypatron/
予告編：英語字幕、　スペイン語
場面：1,
監督インタビュー：スペイン語
監督インタビュー：Festival de Cinemateca
監督インタビュー：Mar del plata
撮影時
カンヌ上映インタビュー：監督、ナウエルさん他
サンセバスチャン映画祭インタビュー：ナウエルさん以外
ナウエルさんインタビュー： El Capital, 
 El ciudadano
La Nacion
Infobae

コロナ禍に完成したこの南米多国籍映画は、やはり日本では公開されず、DVD化も結局なされず、配信も欧米のみ…ということで、ずっと見られないでいたのですが、先日、Youtubeに全編アップされているのを発見。すぐ消されるかもしれないので、取り急ぎ鑑賞しました。
オリジナルの言語はスペイン語で、部分的におそらくポルトガル語の部分があり（ブラジル国境付近が舞台）、そこにはスペイン語字幕が付く。
今回はYoutubeの字幕自動作成機能でスペイン語を表示し、Google翻訳のカメラ機能で読む、という、信用度20%くらいの字幕で鑑賞したため、理解できてないところも多いと思われるのですが、にもかかわらず、この106分の映画は、短編映画並みの密度と緊張感で、大変よくできた作品だということは分かり、ナウエルさんの演技も、過去最高なのでは？という繊細な巧みさで、参りました。素晴らしい。日本公開とDVD化切望。

物語はウルグアイ北部で農場を営む若い夫婦が主人公。夫ロドリゴ（ナウエルさん）と妻フェデリカの間には一人の赤ちゃんがいるが、発達に問題があるようで、病院で精密検査をしたり、心配を抱えている。父から譲り受けた農場は人手が足りず、ロドリゴの父がかつて雇っていた従業員に再雇用を交渉するが、彼の代わりに息子である18歳のカルロスが雇われることになる。カルロスにも若い妻と小さな子供がいる。

同じような家族構成のロドリゴとカルロスは上手くやっていけそうだったのだが、カルロスがトラクターを運転している際に事故が起こり、娘が亡くなってしまう。この事件をきっかけに、雇用関係、社会的境遇の差など、二組の関係の不均衡が露呈していく。
後半はカルロスが競馬？に参加するが、またしても…

本作には目に見える敵や悪人は出てこない。ただ事情が絡み合って状況が悪化する。主人公は何を相手に戦えばいいか不明（という地獄）。ナウエルさん演じる主人公は、親から引き継いで豊かな生活をしているものの、それを維持することは容易くはない。家庭を愛する父親として穏やかに暮らしてはいるが、とにかく色々なストレスがのしかかっている。

とにかく本作のナウエルさんの抑えた演技は素晴らしかった。どちらかというと、感情を激しく爆発させる役が多いナウエルさんだけど、それを内に秘めていることをこんな風に表現できるのは、本当にさすがです。あと、やっぱり乗馬も上手い。カルロスらは職業俳優ではない素人が演じているらしいけれど、そのリアルな表現の余裕の差みたいなのものは、ちょうど彼らの役柄のキャラクター差にもなっていた。

ナウエルさん、この作品の後も「父親役」が続いているのだけれど、それに関しては少しこのインタビューでも語っております。

ところで、ついに2024年2月のベルリナーレでナウエルさん本人に会えたので、いつか本当に日本にも来てもらうという夢も、現実となるよう頑張りたい所存であります！！ナウエルフィルモグラフィーも、幸運にもこの映画が見られたことで穴をあけず、この後ナウエル出演作は4作先まで見ている（１作はDVD予約中）ので、どんどん書いていきます！！！