夜景が星を殺せるなら

夜景が星を殺せるなら、人間、なんだって殺せるんじゃないか。
いま、私だって昨日を殺して、こうして生きている。
自分の都合で、なんだって殺せてしまうって思ったら、私は凶悪殺人者だ、なんてところまで考えて、一人で笑う。

これだけたくさんの私を殺して来たんだから、きっと死刑だ。きっと地獄行きだ。
私は私を殺した分だけかわいい服を着て、お酒を飲んで自分を殺したことを忘れて、次の日に思い出す、吐き気と頭痛によって。地獄。

生きていることなんて、お酒を飲んでいることと同じだ。なるべく汚いことは見ないように、楽しいことだけできるように、自分を麻痺させて、内臓をいじめて。あっちは見ちゃいけません。だってつらいもの。

つらいものばかり見てきた人が味のなくなったガムみたいにポイ、と社会から捨てられる。ビルの上から。電車のホームから。味がなくても気づかないふりして噛み続けないといけないような人生。

だからきっと、その長い二日酔いが、地獄なんでしょう。目に見える地獄。地獄から転生するのに、5京4568兆9600億年かかるんだって。

笑っちゃうね。5京4568兆9600億年かけて、生き返って、やっていることが今の私だとしたら、前世の私がかわいそうでならない。

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即興小説で書いたものを再掲。最果タヒさんの詩にかなり影響されてる時期ですね

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