新玉ねぎはカレー調理に適していないのか? 問題

春が近づいていますね。そろそろ新玉ねぎが出回るようになります。この時期に必ずと言っていいほど、カレーの世界では、「新玉ねぎはカレーに向かない」と言われます。理由は、水分を多く含みすぎているから。炒めて脱水してカレーのベースにする調理に時間がかかるというわけ。でも、本当にそうなんでしょうか?

全くそんなことはありませんよ。むしろ、新玉ねぎのほうが使いやすいとさえ僕は思います。玉ねぎを炒めてベースにしようとするとき、脱水が大切になります。だから水分が邪魔になるというのは確かにその通りなんです。ただ、問題は、どのくらいの量の玉ねぎを炒めるかです。

たとえば家庭で4人分のカレーを作るときに必要な玉ねぎは、1~2個程度。500グラム以下です。この量なら水分は問題にならない。適度に水分を含んでいたほうが、強火で焼き付けるように炒めていくときに玉ねぎが自分の水分で焦げるのを防いでくれたりしますから、加熱のコントロールがしやすいんですね。

新玉ねぎが適さないと主張しているのは、お店を営むシェフたちだと思います。5キロとか6キロの玉ねぎを炒めようとすると確かに水分がジャブジャブ出てきてしまう。これだってやり方次第だから、適さないとは思わないけれど、確かにこのくらいの量を炒めるなら新玉ねぎを避けたくなるのもわかります。

この手の主張は、誰がどんな条件で語っているのかによって、それが自分がやるときにも当てはまるのかどうかは判断しなければなりません。レストランで大量のカレーを作っている人の意見を聞いて、「プロの言うことだから正しいはずだ」と決めるわけにはいかない。業務用での正解が家庭用で不正解になることもある。その逆もあります。カレーの世界ではこういうことはたくさんあります。だから昔から「○○である」とされていることに対して片っ端から疑問を持ってみるのは大事なことだと思います。

先日、「食彩の王国」という番組で、新玉ねぎを特集しました。僕は玉ねぎの炒め方を2通り、それらを使ったカレーを2種類、紹介しました。ちょうど放送のあった日はイベントで大阪にいたため、見ることはできませんでしたが、このときに紹介したのが、くし形切りの新玉ねぎを蒸し焼きにするという手法です。これはオススメなので、近いうちにAIR SPICE LESSONで完全版の動画をアップしたいと思います。10分ほどです。

この手法では、新玉ねぎを蒸し焼きする時に玉ねぎと一緒にいくらかの水を加えます。新玉ねぎの水分が邪魔などころか、さらに水を加えて調理をスタートさせるんです。それでも調理時間は10分程度だったはずです。前半は、適度な水分で玉ねぎを蒸し煮していって、くたっと軟らかくなったところで水分の蒸発した鍋中で蒸し焼きにし、表面をこんがりさせていく。

このときに新玉ねぎだとまだ玉ねぎの内側に水分が残っているから、後から出てくる玉ねぎ自体の水分が適度に表面の焦げ付きを抑えてうま味を溶け出させてくれるんです。仕上がりは香ばしさと甘味が引き立ちます。そのまま湯を注いで煮立て、塩で味を調整したら、本当においしいオニオンスープができあがります。今日はカレーにするの、やめておこうかな、というくらい。

新玉ねぎ、そんなに嫌わないでくださいね。

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水野仁輔

カレー

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