101.豆を使わずにサンバルを作ることはできるのか? 問題

カレーの学校、第10期の全授業が終わり、恒例の懇親会が開催された。当日に僕が創るカレーとして、「野菜のカレー」というオーダーがあった。さて、何を作ろうか。野菜のカレーっていってもテーマ設定が広いからなぁ。そういえば、ここ最近、ずっと作っていなかったサンバルにしようかな。……ということで、南インドを代表する野菜カレーのサンバルを作ることに。サンバルは、日本でいう味噌汁に近い存在。そのくらい身近でメジャーなカレーである。逆に言えば、そんなに手の込んだ料理ではない。毎日のように家庭で食べられることもあるためか、材料さえそろえばとっても簡単にできあがる。(ほんとは、そういう料理こそとっても難しいのだけれど……)

さ、作ろうか、と材料を買いに行く段階になって、だんだんつまらなくなってきた。普通にサンバル作って懇親会に持ち込んで、誰か喜んでくれるだろうか。インド料理店に行けば食べられるメニューだ。やっぱり、サンバルはやめようか。このあたりの葛藤は、イベントでカレーを作るときに常に付きまとうものだ。そして、それがとっても楽しい。
サンバルを作るなら、前日から乾燥トゥールダルを水に浸しておかなくちゃいけない。サンバルというのは、僕の解釈では、表向きは野菜カレーだけれど、実際には、豆の風味を味わうカレーである。その点はラッサムも同じかもしれない。要するに豆がなければサンバルは成立しないのだ。

そこで、好奇心がむくむくと沸き起こってくる。豆がなきゃサンバルにならないのか。豆がなきゃサンバルにならない? 本当に? 本当だろうか。豆を使わずにサンバルを作ってみようじゃないか。俄然、やる気が出てきた。
豆を煮る代わりに玉ねぎを蒸し煮することにした。包丁を一切いれない丸のままの玉ねぎを寸胴鍋にごろごろと入れ、水をたっぷり注いでふたをし、強火にかける。クタクタになるまで煮てからふたをあけて水分を飛ばす。こんがりと色づいたあたりでにんにく、しょうがを最低限の油で炒めて加え、トマトを多めに加えて炒めた。その後は、通常のサンバルと同じである。

ダイコン、さつまいも、なすなどを加えて煮込む。タマリンドジュースも準備をしたのだけれど、遊び心がすぎて、「どうせならこれも使うのやめておこうか」と。タマリンドだってマメ科の植物だから、「豆を使わずに」としたからには徹底しようと思ったのだ。それにしても、「豆もタマリンドも使わなかったら、その時点で全くサンバルではないよな」とか自分に突っ込みを入れながら調理を進める。
ただ、ひとつだけこだわった部分がある。サンバルパウダーだ。これだけはきっちり自分で配合してホールから煎って粉に挽き、準備した。スパイスは、たしか「ターメリック・フェヌグリーク・コリアンダー・ヒング・クミン・生米」あたりを使っただろうか。パウダーにして鍋に混ぜ合わせ、しばらく煮込んだ。

さて、仕上げである。テンパリングと言って、油で炒めたホールスパイスをジャーッと煮込み鍋に加える“作法”が待っている。ここでは、マスタードシード、カレーリーフ、レッドチリに加えて、ウラドダルやチャナダルも使いたいところだけれど、「豆を使わずに」やらなければならない。ダル類は省いてテンパリングをした。
見た目はサンバルっぽい。香りはばっちりサンバルである。食べてみると、味わいは、「あれ? サンバルかも」という印象だった。豆を使わなくてもサンバルはできるということになる。いやぁ、さすがにそんなことはない。もう一度、試食する。やはり、サンバルっぽいのだ。

豆を一切使わなくてもサンバルは作れるのである。まあ、実際、「サンバルとはなにか?」という問題を無視しているので、くだらない遊びだと思ってもらえればいい。そもそも冒頭に書いたように僕の解釈では、「サンバルは豆の風味を楽しむ料理」である。だから、kん回、僕が作ったカレーはサンバルではない、ということになる。それでも極めてサンバルっぽい仕上がりになった原因は、スパイスにあると思う。サンバルパウダーとテンパリング用のスパイスの顔ぶれがそれなりに揃っていたら、ちょっと間違えてしまうくらいの味わいになるということだろう。
それだけスパイスのブレンドがカレーにとって大事なんだということを実感した実験となった。

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水野仁輔

カレー

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