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4. 鍋のふちを木べらでカンカンやっていいのか? 問題

カレーを作るのに最も欠かせない道具はなんだと思いますか? 鍋ですね。そりゃそうです。鍋でもフライパンでもなんでもいいけど、それがなければ始まらない。確かにそうですが、じゃあ、その次に大事なものは? 答えは皆さんにとって、意外なものだと思います。木べらです。鍋と木べら、この二つがあれば、究極的にはカレーは作れるということです。

僕は、木べらをコレクションしています。ただ収集して眺めるためではなくて、カレーをおいしく作るために木べらが必要なんです。作りたいカレーを考え、それを調理するために最適な鍋を選ぶ。その後、鍋の内側の形に合わせて木べらを選びます。カレーは前半戦の炒めるプロセスが大事なので、鍋と木べらの相性を気にする必要があるんですね。

さて、実際に玉ねぎでも炒め始めたとします。このときにどうしてもクセでやっていまうのが、「木べらカンカン」です。玉ねぎを炒めていると木べらに玉ねぎが付着します。この状態の木べらを鍋の縁に対して垂直にして、カンカン! と打ち付ける。そうすると、木べらに付着した玉ねぎをが再び鍋の中に戻るんですね。これをやりたいから、カンカンする。さらにこれが料理のリズムを取るのに役立っているんです。それはまるで、拍子木を打ち鳴らしているかのよう。「火の用心、カンカン、火の用心、カンカン」。このクセがを持っているカレーシェフは意外に多いと思います。

何年か前、銀座「ナイルレストラン」3代目のナイル善己くんとNHKの番組「きょうの料理」で共演したことがあります。編集のいっさいないぶっつけ本番のあの番組で、リハーサル時に、僕たちはふたりそろってカンカン、カンカン、とやっていました。クセだから、無意識なんですね。まもなくディレクターがひと言。「あの、すみません、そのカンカンって音、OAに乗ると視聴者からクレームが来たりする可能性がありますので、できるだけ控え目にしてください」。たしかに……。自分たちでは気づいていませんでしたが、たしかにかなりの音が鳴り響いているんですね。以来、木べらカンカン、には気を付けるようになりました。

木べらカンカンを自粛するために僕が白羽の矢を立てた道具がゴムベラです。木べらの代わりにゴムベラで、というわけではありません。あくまでも木べらで炒める。付着した玉ねぎ、もしくは、鍋の内側にくっついた玉ねぎをきれいに落とすためにゴムベラが大活躍するんですね。そういう意味では、カレーを作るのに3つ目に大事な道具は、ゴムベラなのかもしれません。

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