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93.脱水はどのくらいカレーをおいしくするのか? 問題 Part2

まずは、先週のおさらいから。玉ねぎ、にんにく、しょうがを炒めてベース(カレーの素)を作り、その後に水分を加えて煮込むカレーがあるとする。その場合、キッチリと脱水したカレーの素を作ってから多めの水分を加える(A)のと、ほどほどの脱水にとどめて少ない量の水分を加える(B)のでは、出来上がるカレーの総量は同じだが、確実にAのカレーのほうがおいしくなる。

★A……「カレーの素(150g)+鶏肉(400g)+水(200g)=カレー(750g)」
★B……「カレーの素(350g)+鶏肉(400g)+水(0g)=カレー(750g)」

おいしいカレーには、濃いカレーと深いカレーがあると思う。たとえば、Aのカレーは、深い味がする。Bのカレーは味気ない。じゃあ、濃いカレーとは? Aのカレーを作るときに加える水の量を減らすのがわかりやすい。たとえば、250gの水を加えるのでなく、100gの水を加えるとする。30分煮込んで50gを蒸発させよう。

★C……「カレーの素(150g)+鶏肉(400g)+水(50g)=カレー(600g)」

できあがるカレーの量に注目したい。Aの深いカレーが750gなのに対して、Cの濃いカレーは600gである。150g分、煮詰まっているわけだから、濃厚になる。ご飯が留まらない濃い味のカレーが好きならCの方向のカレーを目指すのがいい。濃いカレーを作るためにもうひとつの手法が、隠し味の活用だ。
仮に脱水をちゃんとしないBのカレーを濃い味にしようとする場合を考えてみる。水を加えるのをやめてふたをして鶏肉に火を通す、無水カレーにしてみる。30分煮込んだら、カレーの素から50g分が蒸発するとしよう。その上、隠し味として、はちみつ(20g)とバター(20g)とチョコレート(10g)を加えてカレーを作ってみる。

★D……「カレーの素(300g)+鶏肉(400g)+はちみつ(20g)+バター(20g)+チョコレート(10g)=カレー(750g)」

BのカレーとDのカレーは同じ量だが、BよりもDのほうが味が濃い。すなわちDのほうがおいしいという人は多いだろう。じゃあ、ここまでやったついでに、濃くする技を両方やったらどうなるかを検証してみる。脱水をちゃんとして、加える水を減らして、隠し味を加える手法だ。

★E……「カレーの素(150g)+鶏肉(400g)+水(50g)+はちみつ(20g)+バター(20g)+チョコレート(10g)=カレー(650g)」

いいとこどりみたいなEのカレーは、深くて濃い味になる。ただ、個人的にはバランスがあまりいいとは思えない。僕は、Aが好き。BとDは避けたい。CやEは、イベントなどで求められれば作ることもある、という感じだろうか。
ときどき僕は、「おいしいカレーを作るのは簡単だ」と発言することがある。「そのココロは……」をしっかり説明する機会がなく、言葉だけが独り歩きすると、「あいつは何を偉そうなことを」となってしまうが、このA~Eのカレーの考え方をベースにすれば、少なくとも、濃いカレーを作るのは簡単だということになる。実力が足りていないと味気ないカレーになる。深いカレーを作るのは難しい。
でもね、「味気ないところが味だよね」みたいなのも人の好み次第だったりするから、この問題は、結局、答えはない。それなら、書かなきゃよかったかもなぁ。実は、この計算式、F以降もいくらでもパターンを作ることができる。いつか、「おいしいカレー A to Z」みたいな形であらゆるパターンを解説する本とかが書けたらいいのかもなぁ。

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