レシピの【作り方】に番号をふる必要はあるのか? 問題

その昔、僕の所属する東京カリ~番長がまだ駆け出しのころ、あるメンバーが、肉じゃがカレーのレシピをこう書きました。

1.通常の作り方で肉じゃがを作る。

2.カレールウを溶かし混ぜる。

深夜のファミレスでメンバーからこのレシピを見せられた時は、唖然としました。僕の辞書には全くないレシピの表記だったからです。だって、これが許されるなら何でもいけます。「1.通常の作り方ですき焼きを作る。2.カレールウを溶かし混ぜる」とすれば、すき焼きカレーだし、「1.通常の作り方でミネストローネを作る。2.カレールウを溶かし混ぜる」ならミネストローネカレーができる。レシピ本を量産できます。当時、僕が、その場で彼のレシピに大きく「×印」を書いたことは今でも語り草になっています。

ただ、数字って言うのは不思議なもので、「1.2.」としてあるだけでそれとなくレシピっぽく見えてしまうものです。ところで、このレシピの作り方に番号をふる慣習については昔から疑問があります。これ、必要なんだろうか、と……。海外のレシピ本は番号をふらず、できあがるまで文章がつらつらと表記されているものが多い。段落分けがあるくらいです。レシピを書いていると、どこで切って番号をふるか、悩む場合があります。たとえば、「玉ねぎをきつね色になるまで炒めてからトマトを加える」レシピの場合、表記方法は大きく2通りあります。

●パターンA

「1.鍋に油を熱し、玉ねぎを加えて炒める。 2.玉ねぎがきつね色になったら、トマトを加えて炒める。 3.トマトの水分が飛んだら、パウダースパイスを……」

●パターンB

「1.鍋に油を熱し、玉ねぎを加えてきつね色になるまで炒める。 2.トマトを加えて水分が飛ぶまで炒める。 3.パウダースパイスを……」

要するに次の手順に行く前に今の手順の状態を示すか、次の手順の冒頭で前の手順の状態を示すか。番号をふる必要がなければ、何がどうなって次にどうするかを普通に書けばいい。特に頭を悩ます必要はないんですね。しかも、玉ねぎ、トマト、パウダースパイスと加えるものが変わるごとに番号を変えたら完成までに使用する材料の数だけ手順が増えることになります。かつて、とある料理雑誌の編集者に「作り方の番号は5番以内にしてください」と言われたことがありました。番号が多すぎると読者が「難しそうだ」と構えてしまうから。でも、あるカレーを作るのに必要な手順は同じです。5番以内にすれば、各手順が長くなり、10番まで使えば各手順はシンプルになる。番号に根拠はないんですね。

ここ数年、僕は、スパイスカレーに関しては、独自に提唱しているゴールデンルールという7ステップを基本にしています。スパイスで作るカレーはすべてこの7ステップのアレンジで作れる、というものです。これがあるから、僕のレシピは、できるだけ7ステップにわけている。これは、水野流なので、水野の都合です。ただ、僕の本を読んでくださる方には、すべてのレシピが1番~7番で表記されているのはしっくりくるんじゃないかと思ってやっています。ということでいえば、おそらくどんなレシピも開発者や著者の意図があって番号が振られているのでしょう。数字があれば、単純にステップバイステップで作りやすいイメージも生まれそうですしね。

ちなみに冒頭のメンバーのレシピ。あれは、もとはといえば、カレーのレシピを開発したことがないメンバーに僕がアドバイスをしたことが発端でした。「どんな料理でも普通に作って仕上げにカレールウを溶かし混ぜれば新しいカレーができるんだよ」と。彼の稚拙な(笑)レシピは、カレールウやスパイスの偉大さを証明していることにもなるかもしれません。

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水野仁輔

カレー

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