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87. カレーにニンニクとショウガは欠かせないのか? 問題

カレーを作ろうと思ったら、ニンニクとショウガを刻む。
昔はすりおろすのが好きだったが、最近は、みじん切りするのが気に入っている。ニンニクの皮は手早くむく手法を発見した。料理教室なんかで披露すると歓声が上がるから、ちょっと得意気になったりする。ショウガの皮も昔はスプーンで手早くむいて見せると撮影時には感嘆の声が上がって少しだけ調子に乗ったりした。でも、途中から、「この皮、むいて捨てる必要ないよね?」と思い始め、いまでは、「皮もおいしいし、栄養もありそうなんで」と曖昧なことを言いながら皮ごと刻んでいる。

いずれにせよ、カレーを作ろうと思ったら、ひとまず、ニンニクとショウガを刻む。何も考えずに手は動く。そのことにふと疑問を持った。ニンニクとショウガ、必要なんだろうか、と。玉ねぎを使わないカレーは色々とある。でも玉ねぎを使わないカレーでもニンニクとショウガは使う。ルウで作るカレーならまだしも、スパイスで作るカレーの場合は、もしかしたら、玉ねぎよりもニンニク、ショウガのほうが使用頻度は高いかもしれない。

やってみよう、と思った。ニンニクとショウガを使わずにおいしいカレーを作れるかどうか、を。ちょうど、東京スパイス番長のイベントがあって、100食分の鶏肉と冬瓜のカレーを作る。イベント本番を実験台にするのは僕のよくないクセだけれど、正直言って、この問題の答えはもう出ているようなものだったのだ。
ニンニクとショウガはなくても、カレーはおいしくなる、と。

5キロの玉ねぎを四つ割りにして、1リットルの水と一緒に寸胴に入れる。塩を30gほど混ぜ合わせてふたをし、マックスの強火にかける。蒸し煮をして玉ねぎがくたっとしてきたあたりで加えた水分が飛び、蒸し焼きに入る。たまにふたを開けて鍋中をかき混ぜる。途中から、ふたを開けて水分を飛ばしながらさらに加熱。最終的に玉ねぎは、2キロに。5キロから2キロだから、60%脱水したことになる。

続いて、800gのトマトピューレを加えて混ぜ合わせる。8キロの冬瓜の皮をむいて種を取り除き、7キロほどになったものを大き目のひと口大に切る。鍋に加えてふたをして、柔らかくなるまで煮る。冬瓜からかなりの水分が出てくるので、もともと鍋中にあった玉ねぎやトマトが焦げる心配はない。
通常ならこの後にニンニクとショウガが登場する。別のフライパンか何かを使って油で炒めてパウダースパイスを加えてさらに炒め、鍋に合流させる。……のだけれど、ニンニクとショウガは使えない。

パウダースパイスの準備をする。「ターメリック・30g、カシミールチリ・30g、フェヌグリーク・40g、コリアンダー・90g」を鍋に投入し、カレーリーフ・50枚をバサバサと振りかける。
ホールスパイスの準備もする。「フェヌグリーク・8g、カロンジ・12g」を計量。深めのフライパンに450mlの紅花油を熱し、フェヌグリークを先に加えて炒め、こんがり色づいてきたらカロンジを加えて炒める。30本のグリーンチリをみじん切りにして加えてさらに炒める。
油が熱々の状態のまま、寸胴鍋にジャーッと注ぐと、鍋中の表面にあったパウダースパイスとカレーリーフがバチバチバチと音を立てて瞬時に加熱されるのがわかる。

2リットルのココナッツミルクを沸騰直前まで加熱して寸胴鍋に加えて混ぜ合わせる。3キロの鶏もも肉は、3%の塩水に2時間、漬けてある。水気を切って、フライパンに皮面から並べ強火でこんがりと色づくまで炒める。脂が十分に出てきたら鶏肉を裏返し、その脂で反対側を焼く。ふたをして蒸し焼きにし、鶏肉に9割がた火を通し、粗熱を取ってかなり大きめに切りわけて鍋に加え、ざっと混ぜ合わせる。

総量14リットルのニンニクとショウガを“使わない”カレーが完成した。食べてみると十分うまい。やっぱりニンニクとショウガは必要ないんだよな。でも、あればあったほうがきっとうまいはずだよな、とも思う。ただ、どっちがうまいのかを判定するためには、もう一度、ニンニクとショウガを“使って”100食分の鶏肉と冬瓜のカレーを作らなきゃいけないわけだ。それはやりたくないなぁ……。

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