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129.カレーリーフはいつどこで加えたらいいのか? 問題

千葉にある薬草園蒸留所「Mitosaya」からカレーリーフがどっさり届いた。
今年はカレーリーフがよく育つ。せっかくだから、ちょうど週末に予定していた壱岐島でのイベント「カミテン」に持ち込んだ。4日間、フィッシュカレーを提供することになっている。毎日ランチ&ディナーで同じメニューのフィッシュカレーを出すのだから、僕が参加させていただくイベントとしてはかなり稀なスタイルだ。それなら試したいことがあった。
カレーリーフの使い方によってどのくらい香りが変わるのか、である。これまで既にいくつかの方法でカレーリーフをカレーに加えてきた。ざっと思い出せるだけでこんなところかな。

A. カレーの仕上げに油で炒めて加える
B. カレーの仕上げに手で揉んで加える
C. 玉ねぎを炒めるときに一緒に炒める

たいていは、これらかもしくはこれらをベースに少しだけアレンジした方法だ。他にマニアックなやり方でいえば、カレーの仕上がりに鍋中に生のまま散らし、その上からホールスパイスを熱した油をジャーッとかけるやり方も試したことがある。それぞれの使い方ごとに香りの実感はあるが、問題は、同じカレーで同時に複数の手法を試したことがないことだ。4日間、毎回同じカレーを出すのであれば、その差を確認できるチャンス。この機会に試してみたい手法があった。

D. カレーの仕上げに千切りして加える

葉を1ミリ程度の千切りにし、仕上げに加える。こぶみかんの葉で何度も試していて気に入っている手法である。とにかく香りがいい上に食べるときもそれほど気にならない。カレーリーフでも一度試してみたいと思っていた。
前提として、スパイスの香りは調理プロセスの後半に加えた方が食べるときに強い印象を残す。さらにスパイスは、形状をつぶせばつぶすほど香りが強まる。この2点を踏まえれば、南インド料理でよくみられる、仕上げにテンパリング(A)という手法は理にかなっている。ただ、ひとつ、疑問があったのは、油でバチバチとするまで炒めてしまっては、カレーリーフの持つエッセンシャルオイルが温度が高すぎることによって揮発すると同時に台無しになってしまうのではないか、ということだった。バチバチとやった瞬間、作っている人が一番いい香りをかいで、出来上がった料理を器に盛って食べる人に届くころには半減してしまっているのではないか、と。
僕がとても信頼している南インド・タミル出身のシェフは、手で揉んで仕上げに加える(B)ことが多かった。これなら“高温問題”は解決する。僕は基本的にはこの手法を採用している。玉ねぎを炒めるときに一緒に加える(C)のは、カレーリーフの香りを全面的に出すのではなく、そこはかとなく香らせたいときには有効な方法だと思う。

さて、こぶみかんのときにやっている、仕上げに千切りして加える(D)に関しては、「温度を上げずに、しかも徹底的に切り刻んで加える」のだから、Bよりも効果的な可能性が高い。実際にやってみると、ものすごい香り。会場となっていた調理場「チリトリ食堂」オーナーの漁志くんが入ってくるなり、「すごいカレーリーフ!」と声をあげるほどだった。
何度かカレーを仕込むタイミングがあったから、他の方法もやってみる。いつものようにAとBとCも試したが、やはり、Dが最も香り高かった。食べるタイミングでカレーリーフを存分に楽しみたかったら千切りは有効かもしれない。ただ、あの柔らかい葉をまとめて千切りにするのが少々大変だ。だとしたら、石臼でも使ってもっと激しくつぶせばより簡単に香りが高まるだろう。石臼がなかったため、この方法をやってみた。

・ミキサーでペーストにして加える(E)

カレーリーフを単体でミキサーでペーストにするのはなかなかうまくいかない。トマトピューレを混ぜて、玉ねぎを炒めた後に加えることにした。結果、確かに香りはよかったが、加えるタイミングは調理途中だから、仕上がったカレーにカレーリーフの香りはそれほど強くは残らなかった。
さて、この実験も結論はいつもの通り、出ない。つぶせばつぶすほど香りが強まり、加えてから食べるまでの時間が短ければ短いほど香りが強まる。もとから分かっていたことを確かめただけのことだった。
カレーの作り方に普遍的な正解があるわけではない。「どうしたいのか?」によって「それを実現するための手段が変わる」のだから。あーあ、そういう点では結局、また今回も同じ場所に戻ったことになる。

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