新聞家『遺影』が面白かった話

フェスティバル『これは演劇ではない』
@こまばアゴラ劇場
新聞家『遺影』
1月8日 12:30の回を観ました。
作・演出:村社祐太朗
出演:花井瑠奈、横田僚平
プロンプター:内田涼
アフタートークゲスト:渋革まろん(批評家)

※明日が千秋楽ですが、以下ネタバレ含みます

思い出せる派

アフタートークの場で、渋革まろんさんはこの上演の「思い出せない」という性質を繰り返し強調していた。けれど、これは村社さんの言うようにかなり個人差があることで、加えておそらく個人の中でもその時々で差があったりする。
私は新婦弟(と思ってたけど勘違いで本当は新婦妹夫)の語りが始まった時に、(冒頭の新婦妹と同内容だったので、それを思い出しながら)ひとつ先のセリフを予想できるくらいには、今回メチャクチャ思い出せる派だった。

言葉はほぼ全部追えたぞ、という実感がある。これは『遺影』のテキストが比較的シンプルだったことに加えて、2人の俳優さんの技量が高く、正確に演じていらしたからだと思う。

けど、2回出てきた「シンボウ」?が何を指すのかはわからなかったし、誰の遺影なのか、「あなた」が誰なのかもよくわからなかった。別にわからなくてもいいので、(そして金がないので)戯曲は購入しなかった。
思い返してみれば「わからなかった」ことはたくさんあるのだけど、私はこれを不快には感じておらず(わからない、ともさして思わず)「そういうもの」としてずっと俳優の発話をただ聴いていた。

説明すればわかるけど、しない

アフタートーク後、質疑応答の場での村社さんの説明によって、「新婦妹が新郎父にビールを注ぎながら会話したこと」と「折りの中に稲毛が入りこんで海岸線が佐倉まで侵食したこと」が ≪回想に伴われた比喩≫ という形で関連していたことが判明した。
観劇中の私は「折りの中に稲毛が入りこんで海岸線が佐倉まで侵食した」ことだけしか把握しておらず、それが スライドを映すスクリーンの上で起こったのか・会話の中で起こったのか・大昔に実際起こったことなのか、わかっていなかった。たぶんこれは私の読解力だけの問題ではなく、新聞家のテキストが、演出が、そういう風に作られている。

村社さんから口頭で説明されれば、(状況や文脈が)全員わかる。

けど、上演[=テキスト→俳優の発話]の中では、(簡単に)わかるようにはしていない。

このことが新聞家の演劇においては非常に重要な気がするんだけど、なぜだろう。

渋革さんや他のお客さんが言っていた「一般的な演劇」では、少なくともこの、「いまの話は新婦妹が新郎父と会話した時の咄嗟の返しを 後から思い出した時に浮かんだ比喩です」というような説明を、脚本・演出の両方において「しない」という選択を、あまり採らないと思う。

けれど私は、演劇の中で行われる「いまの話は〜(中略)〜比喩です」みたいな説明(もしくは匂わせ)のことが、好きではない。
そんなことを全員に対して説明が出来るのは【未来から来た第三者】だけで、演出っていう行為はそもそも、そのような鳥の目・神の目から行われるものなのかもしれないけれど、そこには(全員にわからせるための)様々な咀嚼や省略や忖度が必要不可欠で、そういうやり口を見せられると、演出者の「伝えたい」というエゴを感じて興醒めしてしまったりする。

なので、文脈や状況を「わかるようには説明していない」新聞家の上演は、むしろ親切というか親身なのかもしれない。
その場と、そこにいる観客に対して。
少なくとも私個人にとっては「余計なものがなくて助かる」という感じ。

こんな風に書くと「私ってめちゃくちゃ良いお客さんじゃない…??」という気がしてくるけれど、新聞家の上演を見たのはかなり久しぶりで、取り組みに少しだけ関わったことはあるものの、観客としては数えるほどしか見ていないので、そうでもない。戯曲も買っていないため、このnoteの中の台詞っぽい部分は引用ではなく、思い出しなので、全く正確ではありません。上演後のトーク含めて面白かったよ、ということを書いておきたかったので書きました。

あと、私は物語不感症というか、アンチ物語過激派(物語があっても そこを起点に感動することができないので、物語を伝えるための工夫がなされてると邪魔に感じる性格)なので、劇場という場において了解された状況が積み重なっていかなくても別に全然良いな〜と思える、そういう素質があるのだと思う。
世の人の多くは、きっとそうではない…とは、思うんだけれど、私が今やっているコンテンポラリーダンスはそもそも了解すべき状況などハナから無いような世界なので、そういった表現の居場所がこれから広くなっていくといいな、と個人的には強く願っている。

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アグネス吉井というダンスユニットをやっているんですが、フェスティバル『これは演劇ではない』の関連イベントに出ます。

これはダンスです!って言わないと、奇行インスタグラマー もしくは 街歩きブロガー だと思われがちな私たちの活動を、プレゼン&デモンストレーションするので、よかったら見に来てください。(アグネス吉井からは私1人のみ出演します)

1/17(木)
『これはダンスで?これはダンスで!これはダンスで、、、』@こまばアゴラ劇場
19:00開始 ~21:00くらい
2000円

出演:小暮香帆、荒悠平、アグネス吉井、たくみちゃん、田村興一郎、Aokid

前半に各組のショーケースやプレゼンテーション、
後半にディスカッション、ミーティングをします。

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書籍代と、稽古場代にあてます。よろしくお願いします。

白井愛咲

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