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Vol.3 両国ツアー備忘録。 近年注目されている「ダークツーリズム」とは?


こんにちは!
通訳案内士のアイです。

先日、両国にて第3回目となる”Tokyo Hidden Gems” 町歩きツアーを実施してまいりました。

今回も大変反響をいただき、キャンセル待ち8名、当日は合計8名でツアーを催行させていただきました。

あいにく今冬一番の寒さを記録した日に当たってしまいましたが、寒い中最後までご参加いただき、本当にありがとうございました!

本日はタイトルの「ダークツーリズムとは何か?」について、前回のツアーの様子及びこれからの”Tokyo Hidden Gems”について筆を交えながら書いてみました。

どうぞ最後までお読みいただけると幸いです。

私(左から2番目)と今回の参加者。ポーランド出身のマティ(写真右)は、忙しい中時間を縫って初回から毎回欠かさず参加してくれています!


「ダークツーリズム」とは何か?

皆さんは「ダークツーリズム」という言葉について、聞いたことがありますか?

日本の観光需要の高まりと共に、近年注目されている新しい観光概念です。

一般的には「人類の悲劇を巡る旅」と定義され、海外では盛んに研究が進められていますが、観光業に注力し始めてまだ日の浅い日本では、まだまだ認知されていません。


ダークツーリズムと呼称されるスポットは、多岐に渡ります。

今年の漢字は「災」が選ばれてしまうほど2018年は災害の多い1年でしたね。

災害や震災の被害を受けた場所の他には、ハンセン病を患った人々が隔離された瀬戸内海の大島や、放射能の影響が懸念されている福島、アイヌ民族差別の北海道なども、このダークツーリズムの概念に当てはまります。

広島をはじめとする負の遺産を有する日本ですが、
日本における研究第一人者である井出明さん執筆の著書を除き、ダークツーリズムに関する体系的な学術書は、日本語ではまだほとんど出版されていないのが現状のようです。

上記は、私も実際に購入し、その概念について現在勉強中です!日本の事例が豊富に掲載されているため、大変勉強になります。

世界の事例について、より広範囲な視点から分析されているようです。


娯楽産業としての旅行業界

私が初めてこの言葉を聞いたのは、所属していた学生向けビジネススクールにて、お世話になっていた先輩に、私のツアー構想についてお話させていただいた時でした。

旅行好きの両親に恵まれ、幼い頃から年に2回は必ず旅行へ連れて行ってもらっていた私。
訪れた国は33都道府県にのぼり、日本全国の3/4は足を運んでいることになります。

私にとって、旅とはもはや人生の一部であり、就職活動を考えた時も迷いなく旅行業界が第1志望でした。

業界最大手のリーディングカンパニーに内定をいただけ、卒業後は同社の代理店でカウンターセールスに従事。

お店へいらっしゃる富裕層のお客様へ、高額商品のパックを販売する毎日。

業務内容に対し特に不満もありませんでしたが、ある人の言葉がふと頭をよぎって離れなくなったのです。

「旅行は、ある程度恵まれた境遇にある、裕福な人が行くものだ。
僕の国では、日本人ほど皆旅行に出かけない。遠く離れたヨーロッパへ卒業旅行に行けるなんて、水準が高い。日本人は裕福だね。」

値段に関して言えば、OTAやLCCの普及により、今ではかなり割安に誰でも旅行に行けるようになりました。
ですが実際は誰もが旅に出かけているわけではありません。

未知の世界への高い知的好奇心を持ち合わせ、そしてその探究心を行動に移せるだけの文化的背景と経済力を持ち合わせた人間が、旅に出るのかもしれません。

娯楽産業としての側面が比較的強い旅行業界に対し、私はこのままでいいのか、他にやるべきことがあるのではないのか、と疑問を抱いていた頃、「ダークツーリズム」に出会いました。


“Tokyo Hidden Gems” Vol.3 両国ツアー参加者の声


4月に立ち上げた、”Tokyo Hidden Gems”というこのコミュニティ。
#feellikealocal #deeptokyo  をキーワードに、過去3回開催してきました。

ツアーのコンセプトは、”black”and “white”。

ざっくり言うと、
ポジティブな面しか見ない、あるいはpromoteしない観光産業に対し、
負の側面にも注視すること。じゃないと、物事の本質なんか分かりっこない。

といった感じです。

元々物事を深く考えることが好き、というかそういう性格で、二項対立的に物事を捉えることに注力してきたので、ツアーのコンセプトを考える時も自然とそれが表れてしまったように感じます。


ダークツーリズムという言葉を知ったのは最近なのですが、良く考えてみると、私が開催するツアーはこの概念にまるっきり当てはまっていることに気が付きました。

特に、先日開催した第3回目。
“相撲だけでない。両国のもう一つの顔”
をテーマに、清澄白河からスタート。
町に点在する様々な”相撲以外”の史跡を辿る、3時間の町歩きツアーです。


知っていましたか。
隅田川花火大会は、江戸の人口の60%が亡くなった史上最悪の火事・明暦の大火の犠牲者を悼むため、8代将軍吉宗が始めたものであることを。

知っていましたか。
47人の武士が一致団結し、主君の仇を討つために命を賭したことで知られる赤穂事件、または「忠臣蔵」の舞台は、ここ両国であったことを。

知っていましたか。
三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎が整備した美しい清澄庭園。関東大震災の時、同庭園に逃げ込んだ者は助かったものの、約2km北にある横網町公園に逃げ込んだ者は、持ち込んだ家財が原因で火災が発生し4万人が死亡。犠牲者の遺体は、3mの高さにまで積み上がっていたことを。



いつもツアー終了後に参加者アンケートを実施しており、興味深かったスポットなどについて回答していただいています。

忠臣蔵舞台の吉良邸がランクインしていることは予想の範囲内でしたが、上記に挙げた横網町公園についても、多くの参加者が興味深かったと回答していることはかなり意外でした。

ダークすぎて不評かと思っていたのですが、そのようなことはなく、今回のツアーに行かなければ知り得なかった、とそれぞれ心に思うところがあったようです。

この両国ツアー開催は、発起人である私にとっても非常に興味深い結果となりました。

東京大空襲犠牲者への追悼碑@横網町公園



これからのTokyo Hidden Gems

観光産業は盛り上がっていますが、良い側面にだけスポットを当てられ、負の側面は人々の目から刻一刻と忘れ去られてきてしまっているように感じます。

東京には、まだまだたくさんの隠れた宝石、Hidden Gemsが眠っています。
きらきらと美しく光り輝くものもあれば、
年月が経ち、鈍い輝きを放つものもあります。

前者は、放っておいても自ら輝きます。
ですが、
後者は、誰かがちゃんと光を当てないと、永遠に忘れ去られてしまうのです。

これからのTokyo Hidden Gemsは、ダークツーリズムの要素も取り入れたツアーとして、舵を切ることにしようと思います。

より広域で今後活動を展開していくためにも、NGO化することも視野に入れて現在検討しています。

次回のツアーは1/6または1/27開催予定。

内容は、またまた両国。

キャンセル待ちが過去最も多かったので、今回と全く同じ内容でもう一度だけやります。

参加枠は10名のみ。
早い者勝ちですので、この記事を読んでご興味持っていただけた方はコメント、または下記のページからご連絡ください。


次回の記事は、おそらく来年になりそうです。

コンテンツはまだ未定なので、書きたい内容が定まったらまたぼちぼち更新したいと思います。

それでは皆さま、良いお年を!


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