Hikari Sato

思うところあって書きはじめました。

Hikari Sato

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マガジン

  • おなかに蛇

    女のおなかには、ときどき蛇がいると思います。

最近の記事

さらば、クズ男たち

サナダくんと2月末に衝撃的な別れを果たしてから気づけば3カ月が経った。 彼のクズぶりがあまりに胃にきたので、しばらく何も書けなかったが、またそろりそろりと書きはじめたいと思う。 * ちなみにサナダくんとの最後は、婚約者がいる身でわたしとグダグダになったあげく避妊を失敗し、わたしに緊急避妊薬を飲ませた後にも「ひかりちゃんを尊重していきたい」と迷言を重ね、じゃあ一体どうするのかなと眺めていたら「彼女とは必ず結婚するけどひかりちゃんも大好き」とどこかの国の王様的な一言を放つの

    • 雲をしまう

      ここのところ、すごくもやもやしている。 それは時が経つごとに濃くなり、わたしの上に雲のように膨れ上がっていく。 原稿を印刷しているときも、重い紙束を押し込んで荷造りしているときも、トランクを引きずり歩いているときも、新幹線に乗り込んでメールを書いているときも、もやもやしている。 この雲の発生源は、確実にサナダくんだ。 これでよかったのだろうか。と、先日の約束を思い出す。 「ひかりがアップしてた日記、読んだよ。俺はきちんと距離をおくべきだと思う。仕事や人間関係

      • 生涯あなたを?

        「ひかり先輩は本当に終わりでいいんですか?」 サナダくんとの約束の日。手前の予定が早く終わってしまって落ち着かず、大学の後輩で恋愛師匠のサツキちゃん(仮名、3歳下)にメッセージした。 これまでの流れを解説し、これから彼と終わるための話し合いだと伝えると、悪魔の囁きが返ってきた。 「先輩、その男、奪えることなら奪いたいですか? それとも、そこまで深入りしたくないですか?」 * その後、サツキちゃんと一時間チャットしてから、仕事を終えたサナダくんと合流した。

        • 魔女として

          「別れるとして、サナダくんは何を失うの? このままではあまりにもバランスが悪いよ。あなたにも何か差し出してほしい」 大泣きをした一昨日、わたしはおとぎ話の魔女のような問いを、電話の向こうの彼に投げつけた。 「僕は……ひかりちゃんを失う」 「そうじゃない、浮気をしたサナダくんは、わたしと別れてもそれ以前の日常に戻っていくだけでしょう? 彼女にも親にも周囲にもバレず、気持ちいい体験をして、ちょっとロマンチックで切ない気分になって終わり。反省したことだってすぐに忘れるよ。

        さらば、クズ男たち

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        • おなかに蛇
          10本

        記事

          土偶オフセット

          やまない雨はないし、泣いて泣いて遮光器土偶みたいに腫れあがった目だってそのうち元に戻るのだ。 (今朝は本当に土偶そっくりだったなあ……やばかった) 夕方、仕事先のお手洗いで鏡をのぞきこみ、ほぼ元通りの自分の顔にほっとした。雪で寒かったからか、腫れがひくのが早い気がする。 「あれ、メガネやめたの?」 「はい、土偶が治ったので」 「どういうことだよ、それ(笑)」 土偶隠しの伊達メガネを外し、仕事相手のヤマさん(仮名、5歳年上)との企画会議に戻った。彼の企画に関する慎重

          土偶オフセット

          ゴクリと飲む

          心と身体は傷んでるのに、頭と手は動く。 ミーティングの議事は3番目を飛ばし、あと30分で移動。原稿確認はAから先に、アポイントはBなら延期可能。その隙に病院に寄って、終わり次第メールを返せば、明後日の締切には間に合うはず――。 東京で女ひとり生きていくためには、傷心している暇なんてない。そう割り切りつつも、わたしは自分の働きロボットみたいなところを見つけて悲しくなった。仕事しかできることがないなんて。 * 「僕はクズだ、どうしようもないクズだ」と、その日の早朝、サナダ

          ゴクリと飲む

          効率よく泣く

          効率のいい泣き方をご存知だろうか。 マスクを目元近くまで引き上げ、うつむき加減の姿勢をキープする。場所は路上でも電車の中でもいい。あとはただ涙を流すだけ。ほろほろと。 鼻をすすり上げさえしなければ、涙はマスクの中に溜まるばかりで周囲には気づかれない。今時のマスクは性能がいいので、水分が沁みることもない。 家まで涙腺が待ってくれないときにおすすめだ。泣き止んだら駅のゴミ箱にでも涙ごとマスクを捨てればいい。赤くなった鼻は、新しいマスクでまた隠せる。 * あの日わ

          効率よく泣く

          獣の子

          サナダくんに顔を近づけてみた。……獣の匂いがする。 * その日は、早く目が覚めたのでシャワーを浴び、下着をつけ、髪を乾かし、化粧をした。そうするとわたしの表面はすっかり洗い流されて、新しい膜に覆われる。その間にもサナダくんはぐうぐうと眠っている。 起きる気配がないので、彼が寝ている横に滑り込み、意外に長いまつ毛を眺めながら鼻と鼻を近づけた。ふたたび獣の匂いを嗅ぐ。 生々しい匂い。 汗とかオスとかメスとかそういう色々が混ざった匂い。いかにも「事後」という感じ。わた

          相当な彼

          時間どおりにビデオチャットが立ち上がり、モニタの向こうにはいつも通り、ニコニコしたメガネ姿の男の子がいる。 30過ぎたら男の子と呼べる年齢ではないけれど、サナダくん(仮名、同い年)は少年っぽい。大きなメガネをかけて、寝癖そのままで、ちょっとのびたセーターを着て。今日も背中には大量の本が積まれている。 「ひかりちゃん、こんばんは! 今日はどうだった?」 * 少し離れた場所に暮らすサナダくんと、定期的にビデオチャットをするようになって一ヶ月ほど経った。彼とわたしの関係は…

          相当な彼

          おんなの顔相

          わたしは毎朝、鏡をのぞき、自分の顔を注意深く観察している。 「おんなの顔相」が出てるんじゃないかと不安になるのだ。 ゆるんだ隙と傲慢さ、寂しさと頑なさ、そして男好きのする感じを滲ませた、独特のおんなっぽさ。 その道の諸先輩方には、どこか共通する「顔相」がある。 だが、平成も終わりかけの今、あの手の色気を世に晒して生きていくのは難しい。この本性がバレたら、あっという間に炎上だ。 ああ嫌だ。わたしは仮面を上手にかぶれているだろうか。 * 「まじでお前の恋愛、仕事でき

          おんなの顔相