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2年ぶりのフジロックで感じたこと

7月26日〜30日までの4日間、新潟県は苗場スキー場で開催される「FUJI ROCK FESTIVAL」(以下、フジロック)に行ってきました。昨年のこの時期は内臓の病気で入院していたので、2年ぶりの苗場、2年ぶりのフジロック。ただいま。

やっぱりフジロックは最高でした。なにが最高なの?と聞かれると言葉で説明するのが難しいのだけれど、苗場までの道のりも、そこで聞く音楽も、飲むビールも、そこに集う仲間たち(1年に1度、ここでしか会わない仲間も含めて)、全てが最高なのです。ありふれた言葉かもしれないけど、苗場でのあの4日間には毎年確実に素敵な魔法がかかっている。一緒にその時間を過ごしてくれた仲間たち、今年も本当にありがとう。

昨年の参加が叶わなかったこともあってか、いつもはビール飲んでグダグダしてる時間が多い僕でも今年は例年以上にライブを見て回った気がします。ベストアクトはKendrick Lamar。世界トップレベルのHIP HOPのステージングと”キレ”みたいなものを文字通り体感させてもらいました。

さてさて、2年ぶりに行ったフジロックですが、今年は色々と感じたこといくつかをピックアップしてつらつらと書いてみます。

1.ついに始まった生配信

海外ではもはや定番化しているフェスの生配信(かくいうこのnoteもアメリカ・lollapaloozaの配信見ながら書いています)ですが、2018年になってようやく日本でも実現。しかもいわゆる4大フェスと言われるフジロックで実現できたことは、今後のフェスの在り方も含めて非常にメモリアルだったと思います。

国内フェスの生中継という枠組みで考えれば、これまでもROCK IN JAPAN FES.のWOWWOW中継やMETROCKのエムオン!中継はありましたが、今回のフジロック配信が革新的なところは、配信プラットフォームが圧倒的知名度を持ち、かつ世界中からアクセス可能なYouYubeであったことです。海外在住者の視聴がどの程度あったのかは公開されていないのでわかりませんが、今回の配信で興味を持った外国人が来年以降参加する見込みはかなり増えるのではないでしょうか(ただし、後述のとおり対応策はそれなりに必要になるのではないでしょうか)。

今回のフジロック配信の意義や影響は音楽ブロガーであるレジーさん( @regista13 )が非常にわかりやすくまとめていらっしゃるので紹介させてください。

「音楽を楽しむ」という観点に限れば「フェス会場にいるか/いないか」は関係なくなるだろう。音楽が目当ての人(提供価値の「①出演者」を重視する人)は会場外からステージにアクセスし、仲間でフェスそのものを楽しみたい人(提供価値の「②出演者以外の環境(衣食住)」、「③参加者間のコミュニケーション」を重視する人)は皆で会場に足を運ぶ。そんな世界がいずれ訪れるかもしれない。(上記リンクより一部抜粋)

今回、地元の友達数人が会場に来る予定だったのですが仕事でこれなくなってしまったんです。しかしながら、彼らも職場や自宅で生配信を見ていたこともあってLINEグループでリアルタイムでやり取りをしていたことから、お互いの距離を感じさせずにまるで会場で一緒にライブを楽しんでいるような感覚を味わえたのは新鮮でした。そう行った意味では会場の外/内の壁は壊れ始めているのかもしれません。

配信について最後にもうひとつ。今回、日本の若手バンドが案外配信に参加していないことに驚きました。もちろん日本ならではの権利関係のあれこれとかもあって難しいのかもしれませんが、出演ステージのキャパ以上に大きなチャンスを掴めうるのが配信のメリットであるはずなので、来年はもっと配信可能アーティストが増えることも望みます(僕自身が来年配信参加の可能性高いとうことも理由のひとつ)。ただ、今までフェスの配信が実現できてこなかった日本において、フジロックの配信を行うためには想像もつかないような努力と調整があったのだろうと思います。関係者のみなさま、本当にありがとうございます。

2.言語の壁について

今年のフジロックは例年以上に言語の壁を感じることが多かったです。具体的に言えば、①アーティストとオーディエンスのコミュニケーション②会場運営側と外国人参加者のコミュニケーション、の2点です。

①については、実はこれまでのフジロックで感じることはほとんどありませんでした。ただ、Twitterでも盛り上がっていましたがN.E.R.Dのライブで色々と感じいることがありました。
(半分、僕の想像も入りますが)海外でのHIP HOPシーンの盛り上がりと日本国内におけるソレは大きな壁があることはサブスクリプションサービスの再生回数やフェスのヘッドライナーを見比べてみると明らかです(この部分にも言語の壁は潜んでいるのかもしれませんが今回は割愛)。

N.E.R.Dのファレル・ウィリアムズは自他共に認める親日家であることから、今回のライブで日本のオーディエンスに対して、HIP HOPのライブでのノリ方を教えたかったように思えます。
そのため、彼はステージ上を縦横無尽に走り回り、サークルの作り方やモッシュや合唱のポイントをそれはもう献身的にレクチャーし続けました。しかしながら、オーディエンスの多くが英語がわからなかったこともあり、ファレルの煽りに対する反応はオーディエンスの動きではなく「イエー!」という歓声のみという状況が続いていました(合唱煽られたパートの無音は見ていても辛かった)。

僕自身も決して英語が得意な方ではないので、ファレルの伝えたいことの半分も理解できていなかったと思います。翌日のKendrick Lamarのステージでは、N.E.R.Dのことが伝わっていたのか、海外では合唱パートになる部分もほぼ全てKendrickがラップしていたのも印象的でした。
このステージ上と下の温度差みたいなものを現場でまざまざと体験して、(日本人がもっと英語に強くならなきゃならない!みたいな話は横に置いておくとしても)来年以降は例えばモニターにMCの簡単な日本語訳をつけたりしたほうがいいんじゃないか、とすら思ってしまいました。甘ったれるな、と方々から怒られそうですが・・・・。この言語の壁問題は、来年も続いていくのでしょうか。気になるところではあります。

②について。今年のヘッドライナーがN.E.R.D & Kendrick LamarというHIP HOPのレジェンドであることに加え、普段フェスに出ることがないBob Dylanが大トリということもあり、会場には例年以上に海外から参加者が多かったように思います(個人的には白人が例年以上に多かった印象)。
会場の看板は運営側の準備もあり、英語での表記がかなり目立っていたように思えますが、今回の不幸は開催当日に台風がぶつかってしまったということです。台風をあまり経験することのない地域から来日した方もいるのか、外国人参加者の多くは数百円の雨カッパやビニール袋を被るだけというように装備も甘く、吹き荒れる風雨にかなり体力を削られていたことと思います。
また、非常時ということもあり、会場内やシャトルバスへの案内はほぼ日本語のみで英語を耳にすることはほぼありませんでした。あまりに強すぎる雨で体力を持って行かれてしまい、僕自身も深夜2時過ぎにはホテルに戻ったのですが、そのときの体験が以下です。

台風が大暴れする会場の凄まじさはここ数年ではダントツで過酷だったこともあり、運営の方々も現状を把握し対応していくだけでとても大変だったと思います。僕らが楽しむために動いてくれていたことに頭が下がるばかりです。ただ、前述のようにYouTube生配信の実現により、来年は今年以上の外国人参加者がやってくる可能性も十分考えられるため、会場内アナウンスや非常時の英語対応などは、今後フジロックが海外に開いていくためにも必要なことなのではないかな、と思いました。
一方で、台風の中困っている外国人参加者に声をかけて助けている日本人の姿も数多く見かけました。フジロック参加者の優しさは宝ですね。

3.参加者のマナーについて

今年のフジロックは、例年以上に会場内でのマナー問題も話題になっていた印象があります。

主に①アーティストの写真撮影②喫煙マナー③場所取り(椅子問題)、の3点が焦点だったのでしょうか。

①については、オフィシャルHPで禁止を謳っていますが会場で実際に注意されているところはほぼ見たことがないという状況。正直なところ、僕自身は撮影している人が煩わしいとか感じたことがないので、あまり意見がないという感じです・・・。海外フェスでは撮影が当たり前だからOKという意見はちょっと強引かなぁと思うものの、撮影者をひっきりなしに注意している方がむしろ煩わしいなぁと感じることがあったり、出演者が自らのinstagramでオーディエンスの撮影した動画をアップしたりするのを見てると何が正しいのかはいまいちわからなくなりますね。

②について。フジロックは会場内の禁煙エリアを定め、それ以外は喫煙OKというルールをひいている国内では数少ない喫煙者にも優しいフェスです(国内フェスにおける今のマジョリティは喫煙可能エリアを定める方式)。そういう観点で振り返ると、(非喫煙者である)僕が見た限りでもそこまで悪質な喫煙はなかったように思えます。ただし、火のついたタバコが子供の目線あたりを横切る危険性の高い歩きタバコだけは本当にやめてほしい。将来のフジロックを支えてくれるであろう子供に嫌な思い出(に止まればいいけれど)を残すような危険な喫煙については、空気を読まずに積極的に注意していこうと思っています。

③について。ここ数年話題にあがる”ヘリノックス組み立てたまま運ぶ問題”もそうですが、今年は椅子に関するマナーは例年以上にひどかった。

ここ数年、キャパと動員の関係があっていないと指摘されがちなRED MARQUEE。テント内部での椅子設置は禁止されているにも関わらず使用している人たちを相当数見ました。それによってRED MARQUEEに入れなかった、見れなかったという方も相当数いたはず。フジロックが敷くルールは、みんながお互いに譲り合うことを前提にしたものしかないはずなので、この部分はみんなで啓発し合いながら無くしていきたいなぁと思います。

上記はフジロック終了数日後の僕のツイート。フェスバブル時代を経てなお、国内には大小様々なフェスが存在しています。そしてここ数年、僕の中にあり続ける疑問のひとつが、それら全てのフェスを同じ軸で比較し、評価をすることが正しいのか、ということです。
僕自身は2000年のROCK IN JAPAN FES.(以下、RIJF)がフェスの原体験ですし、参加回数が一番多いフェスという意味でも、自分のフェス思想の根っこにあるのはRIJFだったりします。
が、様々なフェスに参加して思うのは、それぞれが目指す姿が違うのだから同じ切り口で優劣までをつけるのは参加者側のエゴなのではないかということです。確かにRIJFの快適さは国内フェスでもトップクラスであり、そのために主催者が多大なる努力をしていることも様々な点から伺い知れます(参加するたびに頭が下がります)。ただし、その快適さの素晴らしさを、ソレよりも優先すべきテーマを有しているフェスに当てはめ、だからダメなのだと指摘しても、そのテーマを愛している人たちの気分をかき乱すばかりであまり建設的ではないのでは?と感じるわけです(もちろん参考にしてほしいという意見は大歓迎だと思うのですが)。

そして、夏フェスイメージのマジョリティを形成しているのがRIJF系統のフェスであり、その参加者の声が一番大きいのではないかということを感じることが多いここ数年。
誤解を恐れずにいえば、他フェスがマナー問題で物議を醸すとき、ファッション誌のフェスファッション特集が槍玉に上がるときに前提になっているのはRIJFの基準なのではないかといういうことです。
上述のまとめに取り上げられている方のおっしゃりたいこと、おそらくフェスの出自が同じであろう僕もわかる部分が大きいのですが、その表現にRIJFのルールを是とした比較があるからこそ、快く思わない人もいたんじゃないでしょうか。

フェスバブルが弾けるとか、似たようなフェスが多すぎるとか、そう話を一旦部屋の外に置いておけば、ここまで沢山のカラーがあるフェスが全国で開催されている状況は、控えめに言っても音楽好きたちにとって天国だと思います。それらフェスがいい形で持続的発展を行っていくために、我々参加者側もフェスのテーマを汲み取りながら、ときに意見をぶつけ合いながらも前を向いていくことが一番素晴らしいのではないかなぁと感じた次第です。

めちゃめちゃ長くなってしまったうえに、もっと音楽のこと書けよって話ですよね。ただ、また来年あの天国に戻れるよう、そして戻ったときにあの場所を自分だけでなく誰かにとっての天国にもなるよう、今年感じたことをしっかりと書き留めて置きたいと思い、とりとめもなく書いてみました。
だけどね、これら差し引いても一日中笑顔がやまないくらい愛せてしまうのがあの場所なんです。みなさん、また来年あの場所で新年を迎えましょう!僕もまた1年間頑張ります!

最後に。今年僕の周りではフジロック初参加の友人がとても多かったんです。で、彼らが口々に言うのが「フジロックって毎年こんなに環境過酷なのか?」ということ。いやいや、今年の台風は相当特殊ケースだと思うので、今年あれを経験した人はきっと来年もっと楽に過ごせるはずです!

P.S. 今年はなぜかハイジカレーと相性が良く、3日間で3回もgetできました!関係者さん、来年も今年並みの販売量を期待しております!!

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