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性病検査から始まる新しい生活…な話②


(前回の記事の続きです)


さて、今回は2回目の検査(確認検査)の結果を聞きに行ったところから始まります。
いくら書いても思い出しても悲しくも怖くもないし、後述しますが初対面の担当医の方にも「あなたは大丈夫そうだね」なんて言われる始末。
そりゃあ今の僕にできることは、現代医学の進歩に期待しつつ、ただ日常をこなすだけなのですよ。

ということで、あまりしんみりすることもなく検査の結果を聞きにいくことにしました。

人生が変わった日の話(過去記事より)

ところでいくら強がっていても、多少(?)のメンタルにおけるダメージはありました。そりゃそうですよね…日本においては重大疾患であり、内部障がいに認められている不治の感染症を患ったんですから。でもそれが慢性疾患に変わりつつあることも事実なんです。
そして、本当に自分には全く何も症状が感じられないんです。だからこそというか、見えない何かに自分が蝕まれてるっていうか。悲しいとか怖いとかとは違う、およそ僕の知ってる言葉では表せない何か、それがずっと頭なのか心なのかの中にいるわけです。それが何かはまだ分からないけど…。

兎にも角にも誰に相談するでもなく、とりあえず万が一の偽陽性の可能性(期待はしていないにして)も白黒ハッキリしてやろうじゃないか!って感じで、先日検査を受けた施設を訪れました。

その日も無料の即日検査があるためか、受付の中では何人かの方々が慌ただしく準備を進めている中…先日の検査後に渡された小さな紙を提示すると、その日はフードコートで使うようなプラスチックの丸い番号札を渡されました。しかも『1番』。
あー、僕以外に確認検査に回された人はいなかったんだな…とか思いつつ、もし仮に検査の結果が陰性だったらわざわざ待たせることもないんだろうって気がして、そうやって少しずつ僕の中でほんの少しだけあった淡い思いは消え去りました。

誰もいない待合室で、コロナ感染予防のために壁際に向かって置かれた椅子に座り、この後に起きることを想像してみました。
きっとどこぞのネット記事だかブログで読んだ通り、僕はHIVに感染してるっていうことが確定する。それから感染症についての説明を受け、病院に行き詳しく自分の状態を知るように言われる。さらに大きな病院にかかるための紹介状をもらい、精神的なケアのためにソーシャルワーカーの人に不安に思ってることを相談する。こんなもんかな。

そんなことを考えていると、ついに運命が大きく変わる瞬間が訪れるのです。

『1番の方ーっ!』、そこには僕しかいないのにわざわざ番号で呼ぶのも変な感じだなって気がしました(笑)そして前回同様に一番奥の部屋に通されて、その日の担当のドクターと向かい合い椅子に座る。どうやら検査結果は封筒に入れられていて、誰も中身を知らない体でドクターがこう言いました。

『結果はこの封筒の中に入っていますので、とりあえず開封しますね』

できる限りの予習もしたし、もう覚悟はできていました。僕はHIV陽性なんだ。だからって今すぐに死ぬわけじゃない。ただこれからも今まで通りに生きる中で、できる限りHIVってやつを抑え込む努力をするだけなんだ…きっと何も変わらない。

『こちらが先日の検査結果で、あなたはHIV-1型において陽性であることが認められました』

はい。それ以外他に言うこともなく、ただ話を聞いていました。おおよそ僕が思ってた通りの話。ただその日いたドクターが僕の家からそこそこ近い病院で勤務していると聞いて、いくつかあった候補の中からすぐにそこで診察を受けることを決めました。
検査場ではあくまで匿名なんで、紹介状はもらえどいつ行くかなんてのはなかなかしない話らしいです。でも2日後にそのドクターが外来で診察をしていると聞いて、その日に行きますってとこまで決めました。善は急げ!って感じだったと思います。

当事者になってこそ見えるもの


実はHIV感染症が発覚しても、意外とすぐに病院に行く人は少ないようです。心の整理やらお金の工面やら…何週間、何ヶ月と悩む人もいるようで、そういえばそういう不安は確かにあると思います。
でもそんなことよりも、どうやったら今のままでいられるのか。僕にとっては医学の進歩に対する興味(?)の方が大きかったんです。僕が知る限りHIVを抑えるためには一日に一錠の薬を服用するだけ、病院に行かない理由は僕には見当たりませんでした。

それからドクターが紹介状を書いている間、別室に案内されてソーシャルワーカーの方と話をしました。
『何か不安に思うことはありますか?』『これからどうしたらいいか迷っていませんか?』
だいたいのことを調べ尽くした僕には何も聞くことがなく、ただ『大丈夫です』とだけ返事をしました。ソーシャルワーカーの方は少し戸惑った表情をしながら、一応テンプレ通りの説明をしてくれました。
一通り説明を受け部屋を出るとドクターが紹介状を渡してくれました。『少しでも治療は早い方がいいけど…あなたは大丈夫そうですね(笑)』と言われ、僕も思わず笑ってしまい『そうですね(笑)』と返事をしました。


一連のやり取りが終わり、その日の検査を受ける人たちを横目に施設を出ました。まぁ…こんなもんかって感じで自販機でコーヒーを買って、なんとなく色々考えながら二駅ほど歩きました。
ふと信号待ちで開いたカバンの中には『〇〇医療センター、感染症内科 担当医御侍史』と書かれた封筒。これが僕のこれからを左右するんだと思うと不思議な気持ちになりました。

どういうスタンスでHIVってものと向き合うべきか、僕には正解がわかりません。ただ生涯で未だ経験していない、しかも多くの人が経験しないような、何かとてつもないものと…これから一生付き合っていかなきゃいけないんだっていう気はしています。
悲観するのもいいのかもしれません。側から見れば僕みたいなヤツはあまりにも楽観的に見えるかもしれません。でも、いずれにしても進む方向は2択だと思うんです。

治療するか、放置するか。

どうも僕はまだ人生に未練があるようなので治療という方向に進むつもりですが、とあるHIV陽性者の方のブログでは『あの時思いっきり泣いてれば良かった』なんて書いてあったりして…今のところ特になんともないけど、いつか僕もそう思うんだろうか?と考えたりします。

今やインターネットの力でこの手のブログや記事なんて山ほどあるし、調べれば似たような文章で綴られたものがたくさんヒットします。
何年も前にHIV感染症が発覚した方は、ほとんど症状が治まって更新が滞ってたりするくらい…更新頻度については僕に人のことは言えませんが(笑)


ということで、僕はHIV-1型の陽性者であることが判明しました。冒頭でも書いた通り『現代医学の進歩に期待しつつ、ただ日常をこなすだけ』ではありますが、今後僕と同じような境遇になられた方のために…なるべく事実に沿って、またゆるゆるっと記事を書いていこうと思います。

さて、次回は初めて感染症内科を訪れたときのお話です。(これはもはやブログってやつでは…?)

僕はお気持ちだけでも十分嬉しいのです。読んでくださってありがとうございます🥰