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神もおまえの助手か? 『ポニイテイル』★17★

「見続ける――」

「そう」

「みんなを見るのが、レエさんのお仕事?」

「そこに誰かの目があるということはすごく大切なことなの。大切なのに、そういう場所って、この世界にはけっこう少ないんだ」

「オレにはぜんぜんわからない」

「なんで? ウチにはメッチャわかるよ」

ハムスタは小刻みに何度もうなずく。

「それってさ、神さまや妖精さんと同じでしょ。なるほど、レエさんが魔女として全部見てるから、このツリーではみんなキラキラしたくなるんだね。あの人もなんだかキラキラしてる気が……」

「まさに、そう!」

「ゼンゼンわかんねーな。ていうかさ、花園、1つ聞いていいか?」

「ん?」

「お前さ、神とか妖精を信じてそんな態度なわけ? トイレでマンガ読んだり、菓子食ったり、宿題やんなかったり。神のバチが当たると思わないわけ? もうちょっとなんつーの、真面目に」

「マジメだよ、ウチは」

「どこが」

「ウチが誰もいないトイレでマンガをがんばって読んでるのは」

あどは言葉を切って、神に告白するように言った。

「神さまにウチが、思いっきり幸せだってトコ、見てほしいから」

「あい?」

マカムラは両手を上げて天を仰いだ。

「幸せだってトコ? なんで? 思いっきりパンツ下ろしてカッチョ悪い姿をさらしてるのに、それを神に見てくれと?」

「パンツ下ろしてないよ! 神さまにまっすぐ届けばいいの、ウチがメッチャ感動して、楽しんでいる姿が」

「感動している姿? そんなの届けてどうする」

「運んでもらうの。そのマンガを描いた人の心に。もしそのマンガを描いた人がもう死んじゃってたら、その人の魂に。ウチの感動をそのまま伝えてもらう」

「は? なんだその発想。わかんなっ」

「あたしにはわかるよ」

レエは頷くと、ドクターペッパーを一口飲んだ。あどはレエの細い体へ抱きついた。それはもう、何年も前から友達だったかのように。

「マカムラッチみたいな、妖精も見えない男子にはわからないよ」

「なんか、ムカつくな」

「ほら、今日、クッキーもらったじゃん」

あどはランドセルを下ろし、小箱からクッキーを取り出した。

「ふうちゃんのラブラブクッキー。これを食べると……」

もぐもぐとハムスタマウスが動く。

「うまーーーい! って思うでしょ。あ、レエさん食べます?」

「ありがとう。大丈夫」

「でね、ウチはすぐ、この感動を神さま、お願いふうちゃんにそのまま届けてってお願いするの」

「神もおまえの助手か?」

「だって、そんな難しいことできるの、神さまくらいでしょ。マカムラッチできるの? できないでしょ」

「直接、自分の口でうまいぜ、って言えばいいじゃん」

「言葉だとほら、どこがおいしいのかとか、他にもっと言い方あるでしょとか、その言葉まちがってるだとか、言うのが早いだとか遅いだとか、空気を吸えだとか読めだとかいろいろあんでしょ」

「……」

「だからもうぜんぶ、今のウチの心をそっくりそのまま、見ててよ神さま、伝えて妖精さんってお願いするっきゃないでしょ」

「……」

「どうしたの?」

「なんか……オレ、今、一瞬いきなりスッゲーわかった」

マカムラは呆然としながら小声でつぶやいた。

「そっか。だから、妖精カードか」

***

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ポニイのテイル★17★ ここまでのアクセスデータ公開

★完全にチョコレートの妖精さんのおかげです。昨日、手作りのクッキーとチョコレートをフライングゲットできました。

★塾の子どもたちの間では、バレンタインはもはや告る日でもなんでもない日らしいですが(もちろん、私だけのためじゃないのですが)わざわざ作ってくれる時間や手間ひまを思うと嬉しいです。以前在籍していたある男の子は時間を守る子だったのですが、ときどき『すみません、今日遅刻しちゃいます!』と連絡をくれる日があって、そういうときはケーキを作ってくれたり、スィートポテトを焼いてくれたり、プリンを作ってくれたりしている日でした(その後、近所のパン屋さんで仕事をしていました)。

その時間と手間、技術と表現してくれた勇気と想い。これらにあふれるくらいいきなり感謝したくなってしまうのは、noteでいろいろな表現を目にしたり耳にしたりしたときにも生じる感覚で、私自身も、この章を読み直して改めて、あどが言った

この感動を神さま、お願いふうちゃんにそのまま届けてってお願いするの

という気持ちに近い感情を抱いています。幸せなことにしょっちゅう。

ただあどのように、それをトイレでお願いしていても、なかなか届かない場合があるから、私はその都度形にすることにしました。それが新しく始めたエッセイ『note つくる、つながる、『即』届ける』シリーズです。

noteをたくさん見ていると、まったく知らない相手なのにときどきコメントをしたくなるわけですが、コメントについては私自身も思うところがあって、それなら直接コメントで言葉を交わす代わりに、文章の形にして思いを表すことにしました(=まったく新しくない、文章の王道的使用方法)。

というわけで、即届けるシリーズ、第1回目はこちら。 第2回目はnoteの公式による『ウィンタースポーツについてのnote募集』について、即とどけたいと思っています(→とどけました)。

★ところでチョコレートといえば、『ポニイテイル★3★』の編集後記で取り上げた『将棋のチョコレート』のキャッチフレーズが思い浮かびます。それは

時には甘い一手を



▲将棋チョコレート『将棋デショコラ』

時には甘い一手を――このフレーズを息子ハルキと私はとても気に入っていて、よく2人で将棋を指しているときや、サッカーやゲームでつめが甘い失敗をしてしまったときに使います。そしてnoteのスマホでのリスト表示のされ方が変わったのに伴い、物語の本文中から、キャッチ―なフレーズを探し、章タイトルにする必要性がでてきました。『時には甘い一手を』のようにタイトルだけでも1つの表現となるように選び、さらにその言葉を作者自身が受けて、この編集後記『ポニイのテイル』を毎回書いています。あっ、今気づいたのですが、これは一人プレイの即とどけるシリーズですね……。

記事は1000字くらいが読みやすいという諸先輩の意見を参考にして、物語の1章あたりの区切りを心持ち短くしてみました。またサムネイルの位置も変わったので、写真のトリミングを考えました。引用した★3★の写真だけガジガジになっています。これを直したいのですが、写真のもとになったマッチ箱が紛失中なので、保留になっています。

★本文を短くしても編集後記が長くなったら意味ない・・・というわけで、編集後記の一部が有料になっています。有料マガジンとの塩梅もちょっとわからず、いろいろと決めかねているので、変更もたくさんあるはずです。有料の方のnoteをリサーチしながら、形にしていきたいです。まずは本当に数少ない部数ですが、よろしくお願いします。また、今後の有料の回では下記のように、ダッシュボードを集計し、物語を読んでくださっている方と情報を共有できたらと思っています。

第1回ダッシュボード集計 

2018年2月13日(ビュー - スキ)

01 それらしくマッカッカ:132-6

02  ジャマイカのおみやげ:104-7

03 そうあれは保育園の頃:104-7

04 魔法学校の感想文:109-4 

05 思い出す場面はひとつでいい:151-5

06 その日はララの誕生日:170-5

07 ブラックサンタ:258-4

08  真面目バージョンでお願いします:278-5

09 俺の指輪はペリドット:322-6

10 イモ堀の方が1億倍:323-7

11 ドキドキするだろ:338-11

12 突いてちょうだいユニコーン:324-11

13 デカみたいだね:341-12

14 せいぜい毒グモレベルだろ:347-22

15 死体を捨てたときに開けたのか:399-19

16 今夜殺す子どものリスト:480-28

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