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ユニコーンのジャンプ力『ポニイテイル』★52★

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「それより早く図書館へ行きましょう。日付けが変わったら大変です」
「やだ」
「え? 誕生日パーティーですよ?」
「いい。行かない。パーティーなんかやめよう」
「ええ!」
「行こう! ウチの学校、案内してあげる!」

あどはユニにまたがると、ヤケになって遊びまくりました。ユニコーンといっても、ユニはポニイなので、背中に乗っても見晴らしはぜんぜんよくないのですが、ユニのしっかりとした二つの耳をにぎりしめて学校の中をうろうろ探検していると、6年近くいた場所なのにぜんぜんちがう景色に見えるから不思議です。


でも、明日からは……
人間はウチだけなんだ……

あどはユニの背中にのったまま、水道の蛇口に手がとどくたびにひねって、あたりを水びたしにしたり、階段を5段飛ばしで下りてもらったりして、誰もいない夜を満喫しました。


「ユニ、次は体育館に行くよ!」

ユニは体育館というものが何か知りませんでした。
暑いかなと思った体育館は、校舎よりも涼しくて、ライトをつけるとまぶしい光が目に飛びこんできました。もうちょっと暗くしたかったのですが、天井にぶらさがっているたくさんのライトの明るさは、中間に調節できません。明る過ぎるか真っ暗しか選べませんでした。


「もういいですか? そろそろ図書館へいかないと日付けが……行きましょう」

もう30度目くらいの提案を、あどはあっさり無視します。ユニはかなりあせってはいるものの、どこまでも我慢強いようで、少女に無視され続けても声をあらげず、頭の中へやさしく語りかけてくれます。

「ところで、この広い場所で、いつも何をしているんですか?」
「めったに来ないけどね、ここは。ゴロゴロゆかに寝転んだり、プーコと話をしたりだね」
「ふーん、そうなんですか」
「ウラギリ者はもう、来ないけどね。いっしょに卒業しようとか言ってたくせに。ウソつき。作った話も帰ったらぜんぶ捨ててやる!」
「作った話?」
「めちゃくちゃな、ウソの話。ハナが10メートルのゾウの話とか……どうでもいいし。何が生まれつきだとこまらないだよ! ウチ、完全なボッチじゃん! こまりまくるよ!」

ここで泣いたらたぶん負け。あどは目に力を入れ、涙がこぼれるのを防ぎました。金色のひとみはというと、さっきから体育館の天井ばかり見ています。その視線の先にあるのは、ちょうどあどが『ホコリ川』を空想したあたりです。くだらない話。あどが大好きな、悲しい場面なんて出てこないバカみたいな話。
傷ついた少女は涙をこらえてリクエストしました。

「もしかして、ジャンプしたらあそこに届く? ユニコーンのジャンプ力ってすごいんだよね? 見たい見たい! ねぇ、やってみて!」
ユニは2本の前足を高く上げたので、大ジャンプを披露してくれるのかと期待したら、そのままペタンと床にすわってしまいました。

「ボクが大人になったら、あんな低い所、簡単に届くと思います」
「今はムリ? やってみてよ! ウチのジャンプはこのくらい!」

あどは全力で跳ねました。何センチ飛べたかはわかりません。

「次はユニの番。ねぇ、ウチよりは飛べるでしょう?」


『ポニイテイル』★53★へつづく

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