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催眠術が失敗する3つの原因

催眠術がうまく行った、うまく行かなかったという話をよく聞きます。

うまく行けば術者の功績、うまく行かなければ被験者の性質の問題にする人も少なくありません。

果たしてうまく行かないのは本当に被験者に原因があるのでしょうか?もしかすると、術者に問題があるかもしれません。

というのも、私は「以前に呼んだ催眠術師では全く掛からなかった」と言われることが非常に多くあります。そして、それを言ってきた人はほぼ例外なく催眠感受性が高く、幻覚まですんなり行けるタイプでした。

催眠術に掛かりやすいのにも関わらず、催眠誘導がうまく行かないのは術者側に問題があると推測できます。

そこで、今回は催眠術がうまく行かない原因のうち、被験者の要素を除いた3つを書いていきます。

1.術者の要素

見るからに怪しい人は催眠をする上で有利にも不利にも働きます。ハマる人であれば非常に効果的なので、多人数を相手にするショー形式の場合には良いのですが、対個人にやる場合はリスクになります。

簡単に言ってしまうと、信頼感があり影響力が強くなる外観であることが望ましいです。コミュニケーションの研究で既にこの分野は進んでおり、ある程度お決まりのパターンがあるのでここで紹介します。

影響力の要素として以下の3つが挙げられます。
1.容姿外見
2.話し方
3.ポジショニング

容姿外観:

容姿が清潔感が最も大事な要素で、服だけでなく手や爪、靴、髪型などで嫌悪感を抱かせないのが最低ラインです。

清潔感のない人は完全に駄目です。

特に異性の場合、手や爪が汚れている人、汗ジミが出来ている人、匂いがきつい人が近づくことに嫌悪感を覚えることがあります。それらが気になって催眠に集中できなかった(掛からなかった)という話も聞いています。

姿勢が悪かったり、話し方が特徴的すぎる人も同じ原因で催眠誘導率が下がることがあります。

1ランク上の服装という考え方も有名ですね。

上下揃いのスーツが最上級で、一番下はTシャツとジーンズってやつです。相手よりも少しだけいい服を着ることで説得力や影響力が増すので、必須ではありませんが、意識しておいて損はありません。

姿勢が良いことで信頼感が高まりますが、姿勢を直すのはかなり大変です。今までに姿勢についてネガティブなことを言われていなければ、無理に直す必要はありません。

筋肉的に姿勢が維持できない人もいるので、そういうった人は筋肉トレーニングや、格闘技、武術をやるとかなり改善されます。特に武術は立ち方に極意があると考えるところが多く、そこから教えられることもあります(太極拳などは正に身体の操作を重視していますね)。

話し方:

しっかりと響く声が良いと言われています。ハミングをしたときに顔の前部がしっかり響いている人は発声がしっかりしています。できてない人はハミングをして顔が響く音程や強さを探してみてください。そして、その状態で発声するとより響く声になります。

話し方のテンポでは速すぎず、遅すぎずを目指します。

遅すぎる:自信が無い、頭が悪そう
速すぎる:落ち着きがない、緊張している

理想はややゆっくり話すことですが、遅すぎると上述のように逆効果です。話し方が速い人は聡明な印象もあるため、ゆっくり話すのが合わない人はやや速めを意識した方が良いと言えます、滑舌が悪くならない範囲で。もちろん速すぎるのもよくありませんが、遅すぎるよりはマシです。

これも姿勢と同じで、今までに聞き取りにくいと言われたり、声に問題があると指摘されたことがなければ無理に直す必要はありません。

ポジショニング:

何か資格があれば最高ですね… 問題があるとすれば、最近の人達はすぐに調べる傾向があるので、中途半端な資格、取るのが簡単だと言われている資格はすぐに分かることです。その程度の資格しか無いのであれば、何も言わないほうがマシなくらいです。

自分と相手のポジションをしっかりと確立させる必要があります。言葉は悪いですが、舐められてはいけません。対等な感じを出しつつ、やや相手より上の立ち位置にいたほうが誘導はスムーズになります。そのためにも容姿外観も合わせて、ポジショニングが大事になります。

自信について:

自信のない態度は催眠の誘導率を下げる要因になりますが、虚勢も相手に悟られると同じことが起きます。

催眠術に、虚勢と謙虚さは必要ありません。ただ自信のあることを語り、自信のある手法を取るだけで誘導率はグッと上がります。

自信をつける方法は単純で、正しい知識を身につけることと場数を踏むことの2つです。

前者に関しては、”The Oxford Handbook of Hypnosis”の内容を知っておくとかなり違ってきます。熟読する必要はありませんが、古い研究から比較的新しい研究や結果を知り、ある程度催眠に対する理解を深めることで自信に繋がります。

最低限、被験者の質問に答えられるだけの知識を持っておくとで信頼関係を築きやすくなります。これも同様に、被験者は馬鹿ではないということを頭の片隅に入れておくべきです。教えられたことが真実であるかどうか調べる可能性があるため、正しくない知識を話していると知られると次の機会から催眠術に掛からない可能性が出てきます。

2.事前の説明不足

催眠術を始める前の説明で、充分な信頼感を得ることが出来ないと誘導率が下がることがあります。

相手によっては説明なんて全然なくても掛かるって人もいますが、やっておいて損はありません。事故を減らすためにも説明は必要ですし、説明をすることで催眠誘導率が上がる可能性があります。

私と知人に共通する持論ですが、説明が終わった段階で相手が催眠に掛かるかどうかはほぼ決まると考えています。術者の要素に不備がなく、充分な説明をしたのであれば、ほとんどの人は催眠術に掛かります。

説明をしすぎると被験者の期待を削ぐことになり良くない、なんて意見もありますが、経験上そんなことは全くありません。むしろ、説明で相手と顔を合わせた段階から既に催眠術は始まっています。

説明については、前の投稿でも述べているように、安全であること、主導権は常に被験者にあること、催眠状態が簡単に解けることを最初に説明するようにしています。次に、催眠術がどんなものかの説明をしますが、ここは長いので省略します。

1つ言えるのは、理論や例え話は自信が身につけた知識から出たものであるべきです。生兵法は大怪我の元ではありませんが、中途半端な知識で自信がない状態で語ると、その自信の無さが相手に伝わる可能性があります。これは信頼感の低下を招き、誘導率を大幅に下げることになります。

気功と称して催眠術を行う人がいますが、これは説明を放棄しても違和感が無いため、実は効率的だったりします。怪しさは増すので必ずしも良いとは言えないものの、上手い解決方法ではあります。


さて、ここまでは一般的なビジネス書や催眠術の入門書にも書かれていますし、巷でも比較的よく聞く情報だと思います。そんなの分かっているんだよ!という声が聞こえてきそうですね…。

ここからは催眠術を失敗しがちな人がやる過ちについて語っていきます。ラポールを築いた後の話なので、最初の2つの要素に問題がない無いのが前提です。

少し似たような話だと、弛緩と緊張を例えに出す人もいますが、基本的には書籍などにはあまり載っていない内容です。もっというと、弛緩と緊張だけでは全く言葉が足りていません。もう少し踏み込んだ内容になります。

3.暗示誘導の接続問題

今回の本筋です。

催眠術を失敗する人によくありがちな問題として、暗示誘導の接続が悪いことが挙げられます。

例えば、ブック&バルーンテストやペンデュラム(振り子)を使ったテストを行い、それから硬直の暗示を始める人がいますが、これをやると誘導率が落ちます。

これはよく見かける手順ですが、実は大きな問題があります。何が問題か分かりますか?

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