フォローしませんか?
シェア
相地
2019年3月1日 16:39
たぶん、いろいろ理由はあったはずだ。このままだとこごえてしまうとか、放っておけないとか、そういう。でも最たる理由は、なつかしい匂いがしたからだ。 だから、うずくまっていたその子の手を引いたのだと思う。 その子は、ほこり除け用としか思えない薄っぺらい布をまとっているだけの、みすぼらしい格好をしていた。肌着を何枚も着こんでいる僕でさえ震えているほどの寒さなのに、その子はそんな素ぶりを少しも見せ
2019年3月1日 16:38
星がまたひとつ流れた。 おそらく、あれが今晩最後の星だろう。空は、もう白み始めている。 絶やさないようにしていた焚き火も、薪はあらかた燃えつきて炭になり、煙が立ち昇るばかりとなった。ひえびえとしていた空気はやわらぎ、かと思えば体が湿ってくる。 彼女は、僕の膝に頭を乗せたまま眠っている。 夢の中にまで寒さが沁みているらしく、眉をひそめると、腰までずり落ちていた毛布を、自分で肩まで引っ張り