7/4
5:34起床。
天気は晴れ。
涼やかな空気が、肺を満たす。
どうにもできないことも、
どうにかできることもさ、
きっといつかは、灰になる。
日なたより、
日かげにいたい。
日なたがあるから、
日かげがあるとか、
そんなの、どうだっていい。
「身を粉にする」ってことばがある。
「身を粉にして働く」っていうのが、正しい使い方だけど、
「身を粉にして生きている」って使っても、いい気がする。
ばらばらになりそうなほど、
こなごなになりそうなほど、
僕は、これまで生きてきた。そして、今も。
だから、
日なたに出るなんて、とんでもない。
日かげにいることで、
なんとか形を保てているのに、
日なたに叩き出されたら、
僕はきっと死んでしまう。
陰日向に咲く。
……なんて器用な真似は、僕には出来ないんだ。
でもさ、
日なたのこと、嫌いなわけじゃないよ。
むしろ、好きだよ。見てる分には。
そこにいる人たちは、
きらきらと輝いていて、
腹の底から笑っていて、
いかにも、幸せそうだ。
そんな人たちを眺めていると、
こっちまで幸せな気分になれる……わけじゃないけど。
でも、悪くはない気分だ。
じめじめしたニュースを目にするよりは、よっぽど。
うらやましいな。
そりゃ、
あの人たちだって、
日かげでこっそり、
泣いたり喚いたりすることもあるんだろう。
でもさ、
出来るだけ、日なたにいたいって思ってるんだろう?
たとえ、雨に打たれても、雪が吹雪いても。
止まない雨は無いって、空を見上げながら。
僕は、尊敬する。
不幸にも幸せにもなりたくなかった、僕は。
ふいに、
すぐそばで、だれかの気配を感じた。
パートナーだ。
――行かないの?
パートナーは、首をかしげる。
――あなたは、行きたい?
僕は、質問を質問で返す。
――わかんない。
あなたが行かないなら、行かないし。
あなたが行きたいなら、行ってみたい。
つまりは、僕のさじ加減ひとつってことだ。
――別に、行きたくないわけじゃないんだけど。
――『けど』?
――僕なんかが、行ってもいいのかな。
パートナーは、
わかんないな、という風に首を振った。
――あなたは、『なんか』って付けられるような人じゃないよ。
――……そうかな。
――そうだよ。
――……じゃあ、行ってみようかな。
僕は、
膝に付いた芝を払って、立ち上がった。
――でも、やっぱり緊張するな。
――大丈夫、大丈夫。
――本当に?
――大丈夫だよ。だって、2人だから。
――……そうだな。それなら、たしかに大丈夫だ。
僕らは手をつないで、
日なたへと一歩、踏み出した。
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