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5:34起床。

天気は晴れ。
涼やかな空気が、肺を満たす。

どうにもできないことも、
どうにかできることもさ、
きっといつかは、灰になる。

日なたより、
日かげにいたい。

日なたがあるから、
日かげがあるとか、
そんなの、どうだっていい。

「身を粉にする」ってことばがある。

「身を粉にして働く」っていうのが、正しい使い方だけど、
「身を粉にして生きている」って使っても、いい気がする。

ばらばらになりそうなほど、
こなごなになりそうなほど、
僕は、これまで生きてきた。そして、今も。

だから、
日なたに出るなんて、とんでもない。

日かげにいることで、
なんとか形を保てているのに、
日なたに叩き出されたら、
僕はきっと死んでしまう。

陰日向に咲く。
……なんて器用な真似は、僕には出来ないんだ。

でもさ、
日なたのこと、嫌いなわけじゃないよ。
むしろ、好きだよ。見てる分には。

そこにいる人たちは、
きらきらと輝いていて、
腹の底から笑っていて、
いかにも、幸せそうだ。

そんな人たちを眺めていると、
こっちまで幸せな気分になれる……わけじゃないけど。
でも、悪くはない気分だ。
じめじめしたニュースを目にするよりは、よっぽど。

うらやましいな。

そりゃ、
あの人たちだって、
日かげでこっそり、
泣いたり喚いたりすることもあるんだろう。

でもさ、
出来るだけ、日なたにいたいって思ってるんだろう?

たとえ、雨に打たれても、雪が吹雪いても。
止まない雨は無いって、空を見上げながら。

僕は、尊敬する。
不幸にも幸せにもなりたくなかった、僕は。

ふいに、
すぐそばで、だれかの気配を感じた。

パートナーだ。

――行かないの?
パートナーは、首をかしげる。

――あなたは、行きたい?
僕は、質問を質問で返す。

――わかんない。
  あなたが行かないなら、行かないし。
  あなたが行きたいなら、行ってみたい。

つまりは、僕のさじ加減ひとつってことだ。

――別に、行きたくないわけじゃないんだけど。
――『けど』?
――僕なんかが、行ってもいいのかな。

パートナーは、
わかんないな、という風に首を振った。

――あなたは、『なんか』って付けられるような人じゃないよ。
――……そうかな。
――そうだよ。
――……じゃあ、行ってみようかな。

僕は、
膝に付いた芝を払って、立ち上がった。

――でも、やっぱり緊張するな。
――大丈夫、大丈夫。
――本当に?
――大丈夫だよ。だって、2人だから。
――……そうだな。それなら、たしかに大丈夫だ。

僕らは手をつないで、
日なたへと一歩、踏み出した。

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