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擦り切れるほど、(夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない/宮崎夏次系)

Q.友人はいますか?
A.いることには、いる。
   大学時代の友人が2、3人ほど。
   あちらにとって、僕は友人じゃないかもしれないけど。

Q.定期的に連絡をし合う相手はいますか?
A. パートナー。
    あと、たまに母親。

好きなものは 世の中にいっこでいい
失くしたらおしまい そんな感じの
だってさ
大切なものに代えがあるのは さみしいから
――『明日も触らないね』より引用

やさしい人に、憧れる。
憧れるのは、やさしくないから。
僕が、やさしくない人だから。

「羨ましい」

僕はいった。
やさしいやさしい、パートナーにいった。

「羨ましいって?」
「あなたが、やさしい人だから」
「あなただって、そうじゃない?」
「……そういうところが、やさしいよね」
「別に、やさしさでいったわけじゃ。
 それに、やさしさっていうのは、
 余裕があるときじゃないと、できないよ」
「余裕?」
「自分に余裕が無かったら、
 自分以外になんて、やさしくできないよ」

僕は、友人が少ない。
……あ、
あのライトノベルのタイトルじゃなくて、
僕のことです。
僕は、このnoteで、
パートナー以外の人について、あまり話さない。
それは、ただ単に、
他に、密に交流のある人が、いないからだ。
知り合いはいる。
いくらでもいる。
でも、友人はいない。
はっきりと、友人だと呼べる人は、1人も。

Q.友人は欲しいですか?
A.いいえ、別に。
   
友人がたくさんいるのは「いいこと」。
友人があまりいないのは「悪いこと」。
だったら、
そもそも、他人と交わらなければいい。
でも、
生きていくためには、
そういうわけにはいかないのが、世の常だ。

汝の隣人を愛せよ。
汝の隣人を助けよ。
他人のために生きろ。
自分のために生きるな……。

僕はずっと、
他人のために生きていた。
こうしなさい。
ああしなさい。
ずっと、それに従ってきた。

たとえ、
その「他人」が、
僕を蔑んでも。
僕を罵っても。

そしたら、壊れた。
僕も、
僕の人生も。

壊れて、壊れて、
もう、他人のために生きたくない。
僕は、
ただただ、そう思った。

……パートナー?
パートナーのために生きるなんて、してないよ。

僕の人生は、僕のもの。
パートナーの人生は、パートナーのもの。

パートナーのそばにいるのは、
パートナーのためじゃない。
他ならぬ、僕のためだよ。

僕が、パートナーのそばにいたいから。
僕が、パートナーと生きていたいから。

他は、なにもいらない。
他に、大切なものなんて無い。

好きなものは いっこでいいんだ
明日も会いたいと思える そんな感じの
――『明日も触らないね』より引用

Q.あなたは今、幸せですか?
A.ええ、とても。

数え切れない、
数えたくない、
無数の不幸の上で、
僕らは笑っている。


引用:宮崎夏次系「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない:第一話 明日も触らないね」第1巻,講談社.

宮崎夏次系「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」(2014年)

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