10/14。「月の部屋で会いましょう」うん。今、行くね。
5:12起床。
天気は晴れ。
あなたがいてくれるから、僕は。
隣を見ると、パートナーがかたつむりみたいに丸くなって眠っていた。それ、癖なのかな。頭を撫でてみると、ちょっとだけうごうご動いた。いとおしいな、と思う。このいとおしい背中を、これからも見ることができるんだと思うと、うれしくなる。
昨日は、色々あった。色々あったので、僕は大いに荒れた。(最初にいっておくと、パートナーじゃなくて、父さんが主な原因。)泣き叫ぶ、物を床に叩きつける、ベランダから飛び降りようとする……。こんなに荒れたのは、初めてだったかもしれない。でも、最終的に平静を取り戻せたのは、パートナーのおかげだ。
パートナーは職業柄、冷静に対処してくれた。僕が暴れているときは、何もいわずに見守っていて、いざ命の危険がありそうなときは、後ろからぎゅっと抱きしめて、何もいわずに止めてくれた。
ふり返ってみると、本当、すごい人だなと思う。僕が暴れているときも、ようやく鎮まったときも、パートナーは、何一つ変わらなかった。パートナーは、どんなときでも僕と向き合ってくれる。僕はいつも、それに救われている。僕は、こんなにすごい人と一緒にいるんだな。それって、とっても、ありがたいことだな……。
昨日の夜は、僕がカレーを作る予定だったんだけど、僕はめちゃくちゃに暴れた後ですっかり腑抜けていたから、代わりにパートナーが作ってくれることになった。ごめんね、と僕がいうと、大丈夫、とパートナーはいった。パートナーは、微笑んでいた。こういうのを聖母っていうのかな、なんて。そんなことを思いながら、僕は漂ってきたカレーの匂いを嗅いだ。
パートナー作のカレーは、とてもやさしい味がした。カレーのルーが2かけしか残ってなかったから、色々と手を加えてくれたみたいだ。ほろほろと崩れたかぼちゃが、口の中でさらにほろほろと解ける。おいしい。
「おいしいよ」
「よかった」
「ありがとう」
「ううん」
今日は、僕は休みだけどパートナーは仕事の日。だから、パートナーの好きなものを作って待っていようと思う。何にしよう。本人に訊いてはみたんだけど、何にしようって悩んでいたからな。……うん。何か、やさしいものを作ろう。昨日、パートナーが僕に作ってくれたみたいに、とびっきりやさしいものを。喜んで、くれるかな。喜んで、くれるといいな。今日は、いい日になりそうだ。
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月の部屋で会いましょう/レイ・ヴクサヴィッチ(翻訳:岸本 佐知子、市田泉)(文庫版:2017年)
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