Shall I Dance?(MirrorDance/androp)

「よかったら、一緒に踊りませんか?」
それが、僕の口癖。

「どうして、そんなに踊りたがっているの?」

そう訊かれたら、どうしようかな。
そうだね……。どうして、かな。理由は、特に無いかな。

無い? そんなはずは、無いだろう。物事っていうのは、何にだって理由があるんだから。

そうなの? でも、そんなこと言われたって、無いもんは無いよ。大体、そんなものが無いとだめなの? そんなものが無いと、生きていけないの? どうして、そんなむつかしいことを考えなきゃいけないの。

……。

……。

……。

……あはは。何にも言えなくなっちゃったね。むつかしいことなんて、考えるからだよ。そりゃ、むつかしいことっていうのは、必要になるときもあると思うよ。たぶんね。でもさ、自分で自分をがんじがらめにしちゃうことも、あるんじゃないかな。だから、少なくとも今はさ、そんなことは忘れようよ。ほら、ほどいてあげるから。

……。

まだ、喋んないの? しょうがないなあ……。顔、上げてよ。手、挙げてよ。ね、簡単でしょ? むつかしいことなんて、考えなくてもいいんだよ。……そういえば君、僕とそっくりだね。顔と……それに、指の節まで。まるで、合わせ鏡だ。

……踊っていいの?

お、喋ったね。

……踊って、いいのかな。

いいよ。だって、何が悪いの? ここには僕ら以外、誰もいないんだよ? だから、誰にも咎められないよ。もし咎められたって、そんなの、僕らには関係ない。だって、咎められることなんて、何一つしてないんだから。僕らはただ、踊りたいだけなんだ。

……踊りたい。踊りたいよ。

ふふ。ようやく、言ってくれたね。ほらほら、早く行こうよ。……ああ、そうだ。理由、1つだけあったかもしれない。

……何?

僕ね、君に会いたかったんだ。一緒に、踊りたかったんだ。ずっと、ずっと。

……。ねえ。

何?

僕、踊ってみたい曲があるんだ。

はねる はねる
光が射して
もっと早く
まわる まわる
手を繋いで
踊り明かす
――androp『MirrorDance』より

ふーん、それがいいの?

うん、これがいい。

何だ。君も、僕と踊りたかったんじゃないか。

……言うに言えなかったんだ。

あはは。これで、隠し事は無しだね。じゃあ、始めようか。

9/11更新

MirrorDance(「door」収録)/androp(2011年)

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