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高専出身ライトノベル作家がVTuberになるまで(前編)

 VTuberをこんなに見かける今なのに、そういえば、自分はまだなっていない。

 原稿作業もひと段落した12月、作家業ではない方のお仕事も無事に納まり、ほっと一息つきながらそんなことを思いました。

 たいへん由々しき事態です。ならばさっさと動かねば。

 というわけで、年末年始の時間を使い、VTuberになって実際に動画を一本撮ってネットに上げてみました。みなさんこんにちは、高専出身ライトノベル作家藍月要です。

 今回やったことをざっとまとめると、

・3DモデルデータをVRoidで作る
・DAWにセットしたVSTプラグインでボイチェンする
・3teneの画像認識フェイストラッキングを用いてモデルを動かす
・PowerDirectorで素材を編集して動画にする

 こんな感じです。
 はじめてのことばかりだったので、たいへん勉強になりました。

 ほんとうはひとつの記事でまとめて公開するつもりだったのですが、なぜかアホほど長くなったので分割して投稿します。

 

①モデル作成編 〜VRoidとアホ毛のキングコブラ〜

「そんなわけでVTuberになろうと思って。いろいろやんなきゃいけないけど、まずモデルをVRoidで作るつもり」
「え、それほんとうの話? ほんとうにやるの?」
「うん」

 12月末のある日。私が頷くと、昼食に誘った友人のYは「え〜、いいじゃん!」と言った。
 Yは高専時代からの友人である。クラスも研究室も一緒だった。

 Yの部屋に行って、一緒にVRoid(pixiv社製の3Dキャラクターモデリングツール)を試してみることに。
 なお、Yの部屋は三半規管がちょっとおかしくなりそうなほどに防音が効いていて、常人の住処という感じがまったくしなかった。最高である。

 さっそくVRoidをダウンロードしてインスコ、起動。
 無編集のモデルはこんな感じです。

 小さく右上にも書いてある通り、VRoid、実はまだVer0.5。β版です。
 そのせいか(とても革命的ですばらしいツールであることは疑いようがないんですが)、いくらかまだまだ厳しい部分もあったり。

 とにかくやってみる。髪を描いていきます。

 さらっとできたように見えるけど、まずここからむずかしかった。キャラクターの髪の毛ってどうなってるんだ……? みたいな疑問と戦い、答えを出していく作業。

 そう、藍月もYも普通に絵が描けない! 素人コンビである。
 そしてVRoidは、pixiv社が出しているだけあって、『絵を描ける人が3Dキャラを簡単に作れるように』というようなコンセプトで作られたツールです。

 きつい戦いだ。

 本来、自分たちのようなキャラ作成の素人は、自由度がある代わりに技術を要されるVRoidではなく、既存のパーツを組み合わせて手軽にキャラを作れるVカツを選ぶべきなのだ。
 ただ、ちょっと理由があって、今回Vカツは採用できなかった(詳しくは後述します)。

 ともあれ、Yと一緒にがんばって、ちょっとずつそれっぽくしていく。前と横の髪ができた。

 この通り、後ろはまだ。

 ここからが、よりむずかしい。なぜなら藍月の趣味により、今回のキャラクターはサイドテールにする予定なのだ。まとめ髪を作るのは、単純に流した髪にするよりもたいへん。

 がんばっていく。
 後ろから見て、左上のあたりにサイドテールが来るものとして、毛の流れを作ります。そこに髪が集まっていく的な。

 したっけ、サイドテールをくっつける!

 ……なんて簡単に言うけども、これがやはりたいへんだった。

 そもそもVRoidではどのように髪を描くかと言うと、
①頭の周りにある、『髪が乗っかるフレーム』の形を調整する
②フレームの上に髪を描く
 的な流れです。この『髪が乗っかるフレーム』は、

 サイドの髪ではこのように設定する。白い格子がそれです。

 例えば、こんな感じに膨らませてみると、

 こうなります。

 で、あのサイドテールではどうなっているかというと、

 ちょっとわかりにくいんですが、『髪が乗っかるフレーム』を頭の中へ埋まるように歪ませて実現しています。この、狙った位置にサイドテールをぶち込む調整が、正直とてもたいへん。泥臭くやるしかなかった。

 なんかもっとスマートにやる方法がきっとあるのだろうけど、いかんせんβ版のツール、公式非公式両方とも、あまりリファレンスが充実していない。甘えてないで、自分でいいやり方を発見してリファレンス提供者となれって話ですね。

 ともあれこうして、それっぽい感じにできあがってきました。

 でも、そう、髪をまとめているというのなら、髪ゴムやらシュシュやらがなくては。

 作ってみる。

 どうでしょう! なかなか可愛く、かつ自然にできたと思います。

 ですが実は、VRoidには小物を作る機能はまだ実装されていないんですなので、

 このシュシュは、髪の毛を丸く作って、色を変えてねじれを与えて実現しています。髪の毛で髪の毛をまとめるという、画期的かつ再帰的なソリューションです。
 狂気

 さて、ここからさらに足していきます。なにをかと言えば、みんな大好きアホ毛です!
 なくてもよかったかもですが、どうやって作ったものかという試行錯誤を楽しみたい、的なごく普通の人間が持つ自然な気持ちから導入を決めました。

 まあ言うて、二次元文化に親しんでいれば、アホ毛はよくよく目にします。
 VRoidの取り扱いにも慣れてきたし、イケるっしょ!

 ………………。

 …………。

 ……。


 ……?

 ちょっと別角度でも見てみる。

 あれ〜?

 すっごくバカっぽいぞ! アホ毛っ子というか、変なバカにしか見えない。
 高さとか長さとかちょっと変えてあがいてみる。

Y「ちっちゃいキングコブラが威嚇してるみたい」
藍月「たしかに」

 キャラ設定だとしても、意味があまりわからない上に可愛くもないので却下です。

藍月「ていうかアホ毛ってこっちの方向にクルってなってるもんなんだっけ」
Y「もうそれすらわからなくなってきた。逆にしてみよう」

 うーん。
 なんか違う。行き詰まりを感じる。なぜだ、アホ毛なんてほんとうに、日常的に見ているのに。

 ……そうだ! 日常的に見ているのだ! ちょっと改めて、いつも目にしている正しい例を確認しよう。

 さっそく起動したのはこちら。そろそろ義務教育に導入されてもいいだろうコンテンツ、『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』です(画像は記事作成時に開催されていたイベントのもの。は? エッモ……最高か……。最高なのかアイマス……)。通称はミリシタ。

 キャラクターが歌って踊ってくれるタイプの音ゲーなので、3Dモデルを確認できます。
 アホ毛持ちの子はちょいちょい居ます。例えばこの人、桜守歌織さん。

 こうして見ると、アホ毛が低くて長いですね。なるほど。
 もちろんアホ毛高めの子も何人かいるのですが、なんか違和感のない形に仕上げられている。さすがとしか言いようがない。
 そちらは真似できそうにないので、比較的簡単そうな、この歌織さん方式でいくことにしました。

 完全に余談ですが、藍月はミリシタで高山紗代子を担当しています。

 現在ゲーム内で投票イベント開催中ですので、紗代子(高山バスターブレイド紗代子先輩)に熱き一票をお願いします。頼むぞ!

 いや、そんなこと言われても紗代子のことが全然わからなくてはどうしようもないですよね。
 ごくごく簡単に言うと「努力をしまくれば叶わない夢はきっとないはず敵わない天才もきっといないはず少なくとも喰らいついてはいけるはずだからやるしかないやるしかないやるしかない!! 全力しか知らん!!! 的な超絶熱血スーパーガムシャラ持ってる手札全ブッパガールだけど本質的にはとても自己評価が低く自分にできるのは努力だけでそれがなくなったらなんにもないと思い込んでいる、迷わず前に突き進む強さと、己が流す涙を身体から心から溢れていく灼熱の炎で蒸発させてしまい気づけていない今にも壊れてしまいそうな危うさの両方を秘めた、アイマス開闢以来もっともほっておけない最高の塊」が高山紗代子です。

 熱き一票を頼む! 頼むぞ!!!!!!! 
 ちなみにそんな努力派極北の紗代子と投票イベントで争っている目下のライバルは、アイマス界における才能の代名詞、そう、星井美希です。なんの因果だ、エモすぎる。

 閑話休題。

 VRoidの話に戻ります。歌織さんを参考にして、

 はい、これでどうだ!
 ちょっと角度を変えてもう一枚。

 いい感じじゃないですか? ずいぶん自然になりました。やはり正解を参照するのは正しいやり方だ。

 また話が逸れて恐縮ですが、『詳しい解説はないが、最終的な正しい形だけは知ることができる……という環境で、自分の手元のものをなんとか正解に近づけていく』能力は、高専時代に嫌というほど鍛えられた気がします。逆算解析・再現能力というか、リバースエンジニアリング力というか。
 ごく個人的な見解ながら、(優秀な人材なのかどうかはさておいたとしても)高専生・高専出身者はこの能力が異様に図抜けている気がする。
 座学でも実習・実験でも、それができねば生きていけぬ環境であったからだろう。その代わり社会常識とかが犠牲になった。かなしいなあ。大してかなしいと思えなくなってしまったことが一番かなしいかもしれない。

 さて、これでほとんど完成なんですが、ちょいちょい跳ねた髪があるとより活発な感じがあって可愛かろう。
 ということで、元気な髪束をすこし足していきます。

 おっけい!!!
 Kawaiiがここにある。ウェルカムKawaii、バイバイキングコブラ。

 そのあと、ぼちぼちYの部屋から自分の家に帰還し、このモデルをさらに自分好みにチューニングして……。

 ほいきたSUGOKU:Kawaii!!!!!!! 
 一番大変だったのはサイドテールの位置を下げたことです。職人芸的な調整作業。

 可愛すぎる。無敵か。

 目と服ですが、もちろん自分でやったものではありません。こちらは髪型よりもダイレクトに絵心(というか普通にイラストの実力)が必要になるので、さすがに挑戦するガッツはなく。

 しかしそこはpixiv社のサービス、エコシステム内に対策が用意されていました。他のユーザーの自作品がBOOTHで売っているのです。

 使用規約などを確認の上、
【VRoid】瞳テクスチャセットVol.2【20種類】(画像+PSDデータ)
【無料版あり】アシンメトリーゴシックドレス【VRoid】 (ご支援版)
 こちらのふたつを使用させていただいています。ありがてえ。
 無料版もあったんですが、技術には敬意と対価を払わねばという気持ちで、両方とも一応支援版を購入させていただきました。

 このようにして、なんとかモデルは仕上がりました。この時点で12月28日とか、そのあたりだったと思います。

 通りいっぺん触るうちに「ここがこうだったらもっともっと最高だよVRoid〜!!」みたいな意見が溜まっていったので、せっかくだから公式に投げた方がいいだろうかとは思う。ただ、自分はVRoidの本来的な想定ユーザー層ではなさそうだから、ちょっと気が引けたりもする。あとで考えよう。

 この後、(ボイチェンを含めた)音声まわり、バーチャルボディ動かしソフトまわり、動画撮影まわり、動画編集まわりの環境構築と実践の話になっていきます。

 なんでこんなにモデル作成の話が長くなったんだろう。途中で関係ない話とかはしてなかったと思うんですが。
 人生には不思議がいっぱいだ。ミリシタやろ。

 続きは次の記事で!

みんなのご支援まってるにゃん!!