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【Episode 1】「You, 写真集作っちゃいなよ」確かに感じた可能性

#0

「人生は何が起こるか分からない」

月並みな表現だが、わたしは今このことを身をもって感じている。
程度の差こそあれ、他の2人もきっと同じように感じているだろう。

今年2月に息子を出産したわたしは、子どもの成長に合わせて、柔軟に働き方をデザインできる力をつける必要性を感じていた。
そこで以前から無料診断を受け、自分の行動を決める際の指標としてきたエレメンツコード(以下、エレコ)をベースとしたビジネス講座『アビリティデザイン講座』と、エレコのコミュニティに7月から参加した。どちらもオンラインで参加でき、子育て中の自分にはありがたかった。

参加を決めた時点では、ゆくゆくは自宅で英会話教室でも開業するのかな、と漠然と考えていた。幼い頃から英語を習い、英語と子どもに関する仕事をしている身としては無難な選択肢だと思った。
育休明けは今の職場に復帰予定だが、今後必要に応じて働き方を変えられるよう、少しずつ準備を進めるイメージでいた。

あれから数か月。
すでに英会話教室案は、わたしの脳内の「ゴミ箱」とでもいえるフォルダに仕分けられていた。「完全に削除」されるのも時間の問題だ。
その空いたスペースにはまったく違うこと ー ある女性のフォトブック製作のことで占められていた。

オンライン上の共有フォルダ(脳内ではなく、実際のフォルダだ)には、「彼女」が長い手足を活かしてポーズをとり、内在する様々な「自分」を表現する写真がずらりと並んでいた。

彼女はもともと表現者だ。
とはいえ表現方法のレパートリーに、フォトブックのモデルという形が加わるとは、本人も想像していなかっただろう。

この物語のもう一人の重要人物である「彼」にしたってそうだ。
冊子の構想に始まり、写真を撮り、文章を書いてそれらを編集する。内容に注目すると、今回のプロジェクトにおける彼の役割は、彼の従来の仕事の範疇ともいえる。

しかし今回のプロジェクトは、従来の仕事とはあらゆる面で異なっていた。
ひとことに冊子と言っても、ジャンルは多岐にわたる。その中でも、写真集やフォトブックと呼ばれる類の冊子を手掛けることになるとは、検討もつかなかったはずだ。まして、このスピード感で。

わたしたち3人は、エレコのコミュニティを通じて出会った。
出会ってからまだ3か月も経っていない。
3か月前はお互いの存在を認識もしていなければ、誰の頭にも、フォトブックのフォの字すら浮かんでいなかった。

最初にフォトブックの話が出たのは7月14日。
それから僅か1か月半後の9月頭の時点で、既に撮影は大方終わり、冊子のレイアウト作成に取り掛かっている。
(「彼」いわく、冊子のコンセプト設定だけで半年かかる場合もあるとのこと。今回のプロジェクトがいかに破天荒なスピードで進められてきたか、お分かりいただけるだろうか)

まったく時空が歪んでいるとしか思えないが、これらはすべて現実に起こっていることだ。

一体、何がどうなってこうなったのか。
それを話すには、少し時間をさかのぼる必要がある。

さかのぼるといっても、ほんの2か月程度なのだけど。

#1

7月9日、土曜日。
この日はアビリティデザイン講座の初回講座日だった。

毎回の講座後には、次回の講座までに取り組むべき個人課題とグループ課題が与えられる。受講生は、講座の主催者でありエレコ発明者の林原琢磨さんによって3人ずつの小チームに振り分けられ、この小チームでグループ課題に取り組む。
この日の講座の最後に、チーム分けが発表された。

わたしはまみーご、そして、南富良野でボディサロンを経営している、メグさんこと石附メグミさんと同じチームになった。
まみーごとは、彼女が企画した「姿勢の使い方チェック」イベントの打ち合わせで、講座の数日前に既に一度ふたりで話していた。
Prologue Side A参照)

講座終了後、早速Facebookメッセンジャーで3人のグループチャットを立ち上げ、簡単なやり取りを始めた。
お互いのエレコ属性が分かると、グループでの立ち位置も決まりやすい。わたしたちの3人の間でも、エレコ属性が「水風」のまみーごがチームを引っ張り、「地水」のメグさん、「地」のわたしがついていく構図がすぐに出来上がった。

それぞれの都合の良い日時を出し合った結果、7月14日、早朝6時からZOOMでグループ課題に取り組むことになった。頑張って起きよう。

#2

7月14日、木曜日。
6時からのZOOMに起きられるか心配していたら、なんと4時半に目が覚めてしまった!

初回のグループ課題は、まずはチームメンバー同士で話し、お互いを知ろうというものだった。わたしたちは現在の仕事内容や、自分が持つスキル・経験、これからやりたいことなどを順番に話した。

わたしは自分のスキルとして英語のほかに、
・MS OfficeなどのPCスキル
・インターネットでの調べごと
・計画を立てること
などを挙げた。
正直、英語以外の3つは、スキルと呼べるレベルなのか迷ったが、仕事で日常的に行うことなので一応挙げた。

その後、「これからやりたいこと」のテーマについて、まみーごがこんなことを言った。

「それぞれの良さを活かせるように、プロデューサーの立場で裏方から人を采配する経験をしてみたい。反対に自分がプロデュースされて、プレーヤーとして人前に出るような経験もしたい」

両方とも興味があるし、どちらがより向いているのか、現時点では分からない。でも強いて言うなら、プロデューサー業の方かなあ、とのこと。
どちらにしても「水風」らしい発想だと思った。

しかし、同じ日の午後にはもうまみーごの考えは変わっていて、3人のメッセンジャー宛にこんなメッセージが届いた。

「やっぱりプレーヤーとして、前に出る方法というかやり方も考えていきたいなーと!どんなことができそうだろ?」

なんとも「水風」らしいスピード感に感心しつつ、まみーごに向いている方法ってなんだろう?と、わたしは考えた。

もともとダンサーということで、人前に出る経験はたくさん積んできただろう。まだ画面上でしか会ったことはないが、まみーごには画面越しでもはっきりと感じられる華がある。

ふと、数日前にまみーごがFacebookに載せていた、とある写真を思い出した。

彼女が旅先や日常生活の中で様々なファッションを身にまとい、楽しそうにポーズを撮っている数々の写真。それらをコラージュして、一枚の画像にしたものを投稿していたのだ。
どの写真のまみーごもキラキラと魅力的で、自分を表現することを楽しんでいる様子が伝わってきた。もちろん、その投稿にはたくさんの「いいね!」「超いいね!」がつけられていた。

これは誰にでもできることではないな、と思った。
少なくともわたしには、そんな発想は逆立ちしても出てこない。

そしてわたしは、すべての発端となる次のメッセージを送った。

「まみーごの写真集作っちゃえば?って思った!
超~思いつきね!興味なければ無視して」

#3

正直、まみーごがどう受け止めるかはまったく分からなかった。
まみーごがいくらファッションが好きで、ポージングが得意だとしても、自分の写真集を作ることに興味があるかどうかは別の話だ。

するとすぐにまみーごから
「写真集は、、ハードル高い笑笑」と返信がきた。

わたしは
「Facebookの写真コラージュ、ほんとに素敵だと思ったし、いいと思うけどね。あくまでひとつの案として参考になれば♡」と返した。

しばらくふたりでやり取りをしているとメグさんが会話に入ってきて、
「私も写真集賛成!」と頼もしいメッセージをくれた。

まみーごは「需要はあるのか…?」と気にしていたが、これにはメグさんもわたしも「需要はコミュニティ内にあるよ♡」とすかざす返した。
3人中、本人をのぞく2人が賛成。まるでオセロで、相手の石を両側から挟みいくような状況だ。

ところで、わたしが写真集作成をここまで強気で推せたのには、ふたつの理由があった。

ひとつは、例のコラージュが心から素敵だと思ったから。

そしてもうひとつは、コミュニティの人たちの力を借りれば、どういう形にしろ完成までこぎつけられると思ったからだ。

コミュニティに参加してまだ2週間程度ながら、ここには本当に様々なスキルやバックグラウンドの人が集まっているなあ、と感じていた。
その人たちの力を借りたり、足りない部分はさらに人づてでのネットワークを頼ったりしていけば、なんとか写真集の形をしたものを作ることはできるだろう、と。なんとも他力本願ではあるが、確信めいた自信があったのだ。

実際にわたしは、その時点で頭に浮かぶプロジェクトメンバー案をまみーごに伝えた。あの人とあの人の力を借りて…
「ほーらでーきた♡笑」と。

まみーごからは、「やばい笑」とひとこと。
「ホントに出来てる」とメグさん。

自慢することではないが、わたしは写真集の製作経験なんてなく、どういうプロセスで作られるかも全く知らなかった。大体こんな手順だろうなー、という想像をもとに、プロジェクトメンバー案を考えた。
なにが「ほーらでーきた♡笑」だよ!と、今となっては自分の無鉄砲さに辟易するが、あの時はとにかく根拠のない自信がみなぎっていた。

ちなみにこの時挙げたメンバー候補に、こみーも入っていた。
こみーの自己紹介などから、冊子を作っている人だという情報をなんとなく知っていた。もしも印刷関係で分からないことがあれば聞いてみよう、くらいに考えていた。

こうして「まみーごの写真集」というアイデアが誕生したが、この時は本当に決行するかどうかまでは話さなかった。
その決定は、翌日開催されたコミュニティ内のライブ配信「怪獣大決戦」に持ち越されることになる。(詳しくは次回のEpisode 2でお伝えする)

#4

同じ日の晩、わたしは毛色が異なるもうひとつのZOOMミーティングに参加した。
「第一回ぷよぷよ会」だ。
(ぷよぷよ会についてはPrologue Side Bを参照)

コミュニティ内のぷよぷよ好きが5人集まり、オンライン対戦をしたり、その戦況に周りからガヤを入れたり、ぷよぷよとまったく関係のない話をしたりと、なんともほのぼのとした空気の中で交流を楽しんだ。その中ではこみーによる、連鎖の組み方のレクチャーも行われた。

最初はぷよぷよ会メンバーだけの内輪の空間で進行していたが、途中からコミュニティのFacebookグループページで、その様子を急きょライブ配信した。
すると既に23時半を回っていたにもかかわらず、多くのメンバーが配信を視聴し、当のぷよぷよ会メンバーも予想だにしなかった盛況ぶりとなった。このゆるくほのぼのとした空気に、癒しの効果があったようだ。
夜22時に始まったぷよぷよ会は、なんと日付を超えた0時半頃まで続いた。

楽しいひと時を終えて寝室に向かうと、翌日も仕事を控えた夫と、両手を万歳のポーズに広げた息子が先に寝ていた。

朝4時半に目覚め、長い一日を終えたわたしは「なんだか色々と楽しくなりそうだな」と考えながら眠りについた。


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