【Episode 5】ロケ地選定会議。距離なんて関係ない…とも言いきれない!

#17

10月10日リリースに向けて動き出したまみーごの写真集プロジェクト。
全体的に時間の余裕がない中、特に急を要するタスクがあった。
8月4日、まみーごの誕生日の写真撮影計画だ。

7月21日、木曜日。
こみー加入の話が出る前日。

「今ね!決まってるやつ!とやりたいやつ!」
そんな書き出しとともに、まみーごから理想の撮影プランが届いた。

箇条書きの撮影プランのトップに
「8月4日誕生日にひまわり畑で撮影(詳細全く未定笑)」
と、ばっちり書かれていた。

「よし!8月4日に間に合わせるように早急にコンセプトとか決めよう!ひまわり畑の場所の目処は立ってる?なければリサーチしてみるよー」
「うそでしょ、、目処たってなさすぎてリサーチめちゃくちゃありがたい、、」

わたしは例のごとく、
「ひまわり畑 関西」「ひまわり畑 関東」
というキーワードでそれぞれネット検索し、ひまわり畑の情報がまとめられたサイトをまみーごに共有した。

「早速ありがーと!あいしてるぅ」
まみーごってほんと、憎めない。

まみーごは大阪に住んでいる。
撮影は関西で行うのかと思いきや、まみーごから「関東に行こうと思う」と話があった。実はこみーがカメラも少しやっているから、撮影も彼にお願いしようとのことだった。

それから本格的にロケ地の話をしたのは、3人でのミーティングの翌日、7月28日のメッセンジャーでのやりとりの中だった。
まみーごの誕生日まで、残り一週間しかない。

こみーは千葉の市原に住んでいる。
まみーごは成田着の飛行機で向かう予定とのこと。
そうなれば、千葉県内のひまわり畑で撮影するのが妥当だろう。

わたしも2人には会いたいが、生後5ヶ月の息子を連れて、日帰りで神奈川の自宅と千葉を往復するのは難しいだろうと感じた。そのことを2人に伝えると「この前あーりんが言ってた神奈川のひまわり畑はどう?」と、こみーが提案してくれた。

神奈川のひまわり畑、というのは、横須賀市にあるソレイユの丘のことだ。前日のミーティングで、以前訪れたことがある、いいところだよと話した。

しかし…

「ここ、わたしはありがたいけど、こみーめちゃめちゃ遠いと思うよ…?」

少し経ってこみーから「直線で移動したい(笑)」とのコメントと共に、自宅とソレイユの丘をそれぞれピン止めしたgoogle mapの画像が送られてきた。
ソレイユの丘は三浦半島、こみーの自宅は房総半島に位置する。東京湾を隔てて向かい合う位置関係にあり、陸路では東京を経由してぐるっと回る必要がある。

実際にはフェリーを利用すれば「直接で移動」も可能だが、そこは塩梅というものがあるだろう。

その日は結論が出ず、ロケ地の決定は2日後の7月30日に持ち越された。

#18

7月30日、木曜日。
まみーごの誕生日まであと5日。

わたしは候補地として、千葉県成田市にある成田ゆめ牧場を提案した。そこで2人が撮影した後、都内でわたしも合流して3人で会えないかと考えた。

まみーごは、往路は成田行きの飛行機だが、撮影後にわたしに会うため、帰りは新横浜発の夜行バスを使うことも検討してくれた。
さらにこみーも、
「まみーごの移動距離がすごい増えちゃうけど、最終的に新横浜からバス乗るのなら、前日の3日から横浜にいようかなと思ってて!この前挙げてくれたソレイユの丘以外にも、神奈川でひまわり畑ないか探してみる。息子さん連れて遠出するの大変だからわたしが動くよー!」と提案してくれた。

「こみー!!こみーのその行動力、大好き!!」とまみーご。

2人の気持ちは本当にありがたい。
しかし、神奈川のひまわり畑は県央や県の西側に多い。ソレイユの丘こそが、3人全員にとって最もアクセスの良い神奈川のひまわり畑なのは間違いなさそうだった。
しかし、成田からも市原からも片道3時間程かかる。

うーん、あと少しで決まりそうなのに。

その日の晩。
わたしは仕事から帰宅した夫に、ロケ地選びが難航していることを話した。
ひと通りの話を聞き終えると、夫はわたしにこんな提案をしてくれた。
「それなら、うちに泊まればいいじゃん!」

うち、というのは、夫の実家のことだ。実は夫は千葉出身で、実家から成田ゆめ牧場まで車でアクセス可能な距離だった。

わたしもそのことには気づいていた。しかし8月4日は平日、夫は仕事だ。
その状況で「うちに泊まる」というのはつまり、息子とわたしの2人で義実家に帰省することを意味する。

自分で言うのもなんだが、義両親との関係は良好だ。
それでも夫抜きで義実家に泊まったことはない。
「さすがにそれは悪いんじゃない…?」とわたしは躊躇ったが、
「いやいや、むしろ喜ぶと思うよ!なー(息子のことだ)にも会えるし!おれ抜きであやかとなーがうちに泊まるってなったら、おれも嬉しい!牧場までの送迎もお願いしたらいいよ。喜んでやってくれるよ!」
と、夫はノリノリだった。

翌日の8月1日、月曜日。
わたしは義両親に電話をかけた。
自分がいま携わっている写真集プロジェクトの概要を手短に話し、8月3日から4日にかけて、息子と2人で泊まらせてもらえないかと尋ねた。

義母は好奇心旺盛な人物で、息子の嫁が関わっているプロジェクトの話を「面白そう!」と聞いてくれた。そのうえで「あやかさん、うちにはあやかさんもいつでも帰ってきていいのよ。送迎も夫が喜んでやるから。また詳細が決まったら教えてちょうだい」と、温かく了承してくれた。

わたしはまみーごとこみーにこのことを伝えた。
まみーごからは、「2人の愛をめっちゃ感じてすんごく嬉しい」との連絡がきた。
そして関空から成田までの航空券の手配を済ませ、成田近辺で宿を探すことになった。
ただでさえ大阪から成田への大移動ではあるが、成田到着後の移動の負担はだいぶ減る。

移動の負担が減るのはこみーも同様だ。これで東京湾に沿ってぐるっと移動する必要も、はたまたフェリーで東京湾を渡ってくる必要もなくなる。

わたしはというと、移動距離はそれなりにある。
だが、結果的に当初諦めていたひまわり畑での撮影に立ち会うことができ、さらにわたしと息子が帰省することで夫や義両親が喜んでくれるのならば、これ以上のことはない。

「ゆめ牧場で会いましょう!」
わたしは2人にそうメッセージした。

#19

8月2日、火曜日。
まみーごの誕生日の2日前。

3人でZOOMミーティングを行い、撮影当日の流れを打ち合わせた。

まみーごは8月3日に成田に到着し、成田近辺のホテルに前泊する。
翌朝、こみーとまみーごは電車で移動し、牧場の最寄り駅から運行している無料シャトルバスで成田ゆめ牧場に向かう。

わたしは息子を連れて夫の実家に前泊し、当日は義父の車で成田ゆめ牧場まで送ってもらう。そこで2人と合流する。
ちなみに義父の車は軽自動車で、後部座席には息子(義両親にとっての孫)のためのチャイルドシートが設置されている。運転手である義父、わたし、そして息子の他にもうひとりピックアップして一緒に向かうことも可能だが、2人のうちどちらかだけというのもなんなので、それはしないことにした。

その後、急いで成田ゆめ牧場に撮影許可申請書を提出した。写真集の製作にあたり、まみーごからこみーやわたしへの委託料の支払いや、クラファンでの資金集めが発生するためだ。
友人同士のフォトシューティングを装ったとしてもきっと問題はなかったと思うが、やるからには正規の方法で、胸を張って作ったと言いたいね、というのが3人の総意だった。

さらには写真集の方向性やまみーごの衣装、3人の業務提携契約についても煮詰めることができた。ロケ地が無事に決まったことで、プロジェクト全体が一気に加速度を増して動いていく様が痛快だった。わたしは2人にこう言わずにはいられなかった。

「てかさ、われら3人の連携プレーすばらしすぎないか…?って、自分も当事者ながら思う」
「わたしの行動も連携プレーの1つにいれてくれるのであれば、、!」と、まみーご。もちろん、彼女の行動力がなければ始まらない。
「まじで思う。みんな素晴らしい」と、こみー。そしてこう続けた。

「このメンバーすごいのが、この企画をこのスピード感でできることだと思った!知り合いは事業の名前とコンセプト考えるのに半年打ち合わせしたって言ってた(笑)」
「うん、10月10日リリースって聞く人が聞いたらご冗談を…ってなりそうだけど、ほんとに10月10日には実物が出来てそうでびっくりしてる!」
「たしかに、このスピード感だと10月10日余裕な気がする」

思いつきがきっかけで生まれたプロジェクトが、周りの方の後押しを受け、少しずつではあるが実現に向けて確かに動いている。3人全員がそれを実感していた。

翌日に控えた義実家への「帰省」に向けて、わたしは荷造りを始めた。

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