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【Episode 2】運命を決めた?!怪獣大決戦

#5

7月15日、金曜日。
まみーご写真集案が生まれ、ぷよぷよ会でフィーバーした翌日。

この日はコミュニティで、異色のライブ配信イベントが控えていた。
その名も「怪獣大決戦」である。

コミュニティでは、メンバー主導のイベントが連日活発に開催されている。
真剣にビジネスを学ぶもの、先のぷよぷよ会のようにひたすら楽しむためのものなど、趣旨は様々だ。

その晩の「怪獣大決戦」は、エレコが「風」属性のメンバー3人が、某SF大作映画のごとく互いをぶった切り合う…といった内容が告知されており、発表当初からコミュニティ内にざわめきが起こっていた。

今宵登場する3大怪獣のうちの一体が、前日わたしが写真集作成を提案した彼女…まみーごだった。

「怪獣大決戦」は21時から。
普段なら夫と夕飯の時間だ。この時間帯はコミュニティのイベントのゴールデンタイムながら、家庭を優先することにしている。
しかし、その日は夫の会社で飲み会があり、帰りが遅くなるとの連絡を受けていた。

「観るしかないな」と思った。
まみーごの雄姿を、リアルタイムで見届けなくては!

#6

その日の昼間、こみーからメッセージが届いた。

「あーりん、おはよー!昨日は遅くまでごめんね。体調どうですかー?」
「全然!むしろ私の都合で22時開始に付き合ってもらっちゃって。体調も大丈夫!ありがとー!」

前日のぷよぷよ会が22時と遅めの開始だったのは、わたしの「家族タイム」が落ち着くタイミングに、ぷよぷよ会のみんなに合わせてもらってのことだった。おかげでゆっくり参加でき、非常にありがたかった。

実はこの頃、こみーと近々会う方向で話をしていた。
発端は数日前にコミュニティの朝活で、こみーが自分の「やらかし話」をシェアしたことだ。仲間内で刊行しているエッセイを印刷会社に入稿する際、右綴じと左綴じを間違えて注文してしまった。その結果、文章は縦書きにも関わらず、ページ自体は左から右へと進む、少しまぬけな冊子が出来上がったというのだ。売り物にならないため、先着で欲しい人に差し上げます、と募っていたところに手を挙げた。

郵送での受け渡しも可能だが、ちょうどこみーが神奈川方面の知人を訪ねる旅行を計画するとのことだったため、そのときに受け取ることになった。

日程調整の話をしたあと、わたしは前日披露されたこみーの連鎖テクニックを絶賛した。
こみーは、ぷよぷよ上達の秘訣を教えてくれた。
その秘訣とはいたってシンプルで、

「練習だよ。常にイメージするんだ。ぼーっとしてるときも連鎖を組むイメージをするの」

とのことだった。
なるほど。イメージのチカラってすごい。

#7

さて、時刻は21時。
3体の怪獣による決戦の火蓋が切られた。

当時生後5か月だった息子はまだ就寝時間が不規則だったが、その日は20時過ぎに寝てくれた。
決戦を見届ける準備は万端だ。

ちなみに念のためだが、「怪獣大決戦」と言えど、本当に暴れて戦うわけではない。笑
無礼講の本音トーク会のようなものだ。

配信開始からしばらく経つとまみーごが
「昨日あーりんに写真集どうって提案されて」と、例の話を切り出した。

ライブ配信中、オーディエンスはチャット機能で自由にコメントができる。まみーごが写真集の話をするとすかさず

「あ、写真集いけそう」
「よし、今年中に出そう」

とのコメントが入った。
コメントの主は、エレコの開発者で、コミュニティの主催者でもある林原琢磨さんだった。

琢磨さんのコメントを皮切りにチャット欄には
「売ってくれ」
「もうやるしかないやん♡」
「わたし買いまーす♡」
と、熱い声援が続々と寄せられた。

そんな中、またしても琢磨さんが
「とりあえず、8/4に写真とろ」と、さりげなく次のマイルストーンを置いた。
8月4日は、まみーごの32歳の誕生日だ。

それを受けてチャット欄には
「サニー!」「Sunny!」と、写真集のタイトル案が提案された。

こうして配信開始から40分弱、
神野まみ 1st写真集『Sunny』
という具体的なフレーズが共有された。
なんというスピード感だ。

わたしはチャット欄に「計画立てまーす」とコメントした。「計画を立てること」は、曲がりなりにもわたしのスキルのひとつだ。
そしてそのままもう一つのスキル「調べごと」を発動。「写真集 作り方」と検索し、具体的なノウハウを調べ始めた。

#8

配信は引き続き、写真集の話題で持ちきりだ。
チャット欄にはロケ地、クラウドファンディングの特典、音楽プロデュースや動画などのプロモーション戦略といったアイデアが続々と寄せられた。

もはや「やらない」という選択肢は残されておらず、いつやるかを決める流れだった。

わたしはその流れを時折チェックしながら、写真集の作成方法が説明されたwebサイトをいくつか流し読みした。

出版社に持ち込む場合、入稿から出版まで数か月を要する。すでに7月だから、年内リリースは現実的ではない。
一方、写真プリントなどの印刷業者に依頼する場合は、入稿から数日程度で納品可能なことも分かった。それにしても年内リリースの場合、すぐに動き出す必要がある。

そんな中、ライブ配信で突然「10月リリース」案が出た。
10月!10月末だとしても、3か月半しかない!

このとき計画担当として「10月はさすがに難しいのでは…?」と言うこともできたはずだ。
しかしわたしは10月と聞き、そこから連想ゲームのごとく、とある日付を思いついてしまった。

こんなことを言ったら、自分で自分の首を絞めることになる。
でも言いたい。どうしても言いたい。

ええい、言ってしまえ。

「10月10日
(ten+とお → おてんとうさまの日)
リリースでいかがでしょうか」

チャット欄に入力、送信。

10月10日。
お「てん」「とう(とお)」さまの日。
我ながら『Sunny』のリリース日としてこれ以上の日はないと思った。
(なお、その日は大安だ)

ほどなくして琢磨さんから「はい。決まり」のコメントが入った。
こうして「神野まみ 1st写真集『Sunny』」は10月10日(月祝)リリースに向けて動き出すことになった。

わたしは「計画立てまーす(2回目)」とコメントした。

#9

配信終了後の22時半頃、夫が帰宅した。
わたしは夫に、事のあらましを矢継ぎ早に話した。夫は「へえーおもしろそうだね!頑張って」と言い、風呂場へと向かった。

タイミングを同じくして、まみーごからメッセージが届いた。
「あーりーん!!いやほんと、まだお給料全然払えんけど、ほんと秘書をお願いしたい」

わたしは数日前の琢磨さんのFacebook投稿を引き合いに出し、「まみーごがお給料払えるように、私が頑張ればいいかな?」と返信した。
「たしかにーー!!!」と返ってきた。

それから「作成中w」というコメントと合わせて、PC画面のスクリーンショットをまみーごに送った。このときわたしは、以前勤めていたIT企業で使っていたプロジェクト管理ツール『asana』で、写真集プロジェクトのタスクを思いつくままに追加していた。

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「いやもうほんと、あなた最高」と、まみーご。
わたしは「ありがたきお言葉^^」と返した。

「あーりんのやること見えてきた?やりたいこと!」
「こういう裏方サポートはほんとに楽しい。あとは、自分の理想とする生活スタイルと両立できるかどうかかなー」
「あーりんならできそうだけどなぁ。それこそ計画立ててくれれば、ここまでにこれだしてね!わたしは家族タイムだから!みたいにいってもらえるもんね」

わたしは思い切って、気がかりだったことをまみーごに伝えた。

「例えば、出張とかがめちゃくちゃ多いと少し違うかもしれない、正直」
「出張??」
「例えばそれこそロケハンとかさ」
「ついてこなくてもいいよ!どうだったか報告する!もしくは出張部隊作ればいいよね」
「ほんと?」
「わたしロケハンにあーりんがいるイメージなかった!いい意味で!裏で動かしてくれる秘書♡」

一般的な会社だと、こういう要望は「わがまま」で片付けられ、なかなか受け入れられないだろう。
この先どうなるかは分からないが、まみーごが理解を示してくれることが心底ありがたかった。

「まずはこの半年、精いっぱい頑張るね」
「うむ!この半年でお互いがどれをどれだけシェアしたりサポートするかが見えたらいいね!おんぶにだっこは違うと思うし」

その後も、お互いを尊重し合い、感謝し合うやり取りがしばらく続いた。
間もなく日付が変わろうとしていた頃、まみーごが突然「半年後って、、、どーなってるんだろ」と言った。
半年後というのは、アビリティデザイン講座が終わる時期を指していた。

「もうまみーご日本にいないのでは…?あ、英語必要になったら教えるから言ってね」
「住む家とかあるんかな、、なんか転々としてるかも!別荘を石垣島にはもちたい!笑」

石垣島かあ。
実はわたしは、手帳の最後のページにウィッシュリストを書いていた。叶えたい夢を100個書き、潜在意識に働きかけるというものだ。全貌は恥ずかしいから秘密だけども。
その中に「石垣島に行く」という項目があった。

物は試しと思い、まみーごに
「私ね、家族で行きたい旅行先リストに石垣島も入っているの。秘書価格で別荘使用可能?笑」
と聞いてみると、間髪を入れず
「もちろん、むしろ合鍵わたす」
と返ってきた。そしてその実現に向けては、
「あーりんの秘書力も必要になってくるのでよろしゅう!」
と、ちゃっかりくぎを刺された。望むところだ。

「石垣島別荘建築も計画化せねばね」
「あ!それまじで進めてほしい!めっっっちゃゆっくりでいいけど!ステップだけでも知れたらやる気でる!」
「じゃあ、写真集計画の次に作るね♡」
「頼もしい、、とりあえずなんか思い付いたらあーりんにいおう、、」
「言って言って!こうやって考えてみること自体、計画力の底上げになるからありがたいー」
「わーい!なるほど!あーりんのWINにも繋がるんなら躊躇なくいえるぜ!」

そんなやり取りをひとしきりして、最後にわたしは
「では、そろそろ寝るね!まみーごのストーリー楽しみにしてる♡」
と送り、床についた。

翌朝スマホを確認すると、まみーごから
「うん!おやすみーー!わたしのストーリーの隣にはいつもあーりんが、、♡笑」
とのメッセージが返ってきていた。

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