レンタル木﨑というエンタメ。
レンタル木﨑、というイベントをご存じだろうか。
名前の通り、祇園の木﨑さんを自由に貸します、だから、木﨑さんを使って面白いことやってみませんか?という斬新なイベントである。
このイベントが行われたのは、つい一週間前の2月9日。
一週間前の話にもかかわらず、なぜ私がnoteに書き留めるまでになったのか。
それは、このイベントにエンタメが詰まっている、そう感じたからである。
そもそも私がこのイベントを観に行ったのに、大した理由はない。
私が祇園さんのファンであり、今回木﨑さんをレンタルした6人の面々がどのようにして面白さを、彼の良さを引き出すのかが気になった、単にそれだけのことである。
今回のイベント自体、初めて打たれたイベントだったこともあり、お客さんの入りとしてはそこまで多かったわけではない。
しかし、配信もあったこのイベントは配信期間が延長されるまでになった。
そこまでになったのだ。
面白さを伝えないわけにはいかないだろう、そう思った。
レンタルした人たちが木﨑さんを使ってどんなことをしたのか、ざっくり説明しようと思う。
・真輝志さん
彼は、木﨑さんの「立ってこれー!」の栄枯盛衰を本人に一人芝居してもらうというスタイルを取った。
冒頭のセリフで「若い子たちはあんまり知らないと思うが、僕には『立ってこれー!』という一発ギャグがある…」(ニュアンス)
(ここで言う若い子たちとはどのくらいまでの人を指すのか、という疑問はあったが、少なくとも20歳の私は知っている)
(ボケだと分かった上で書いている)
そのギャグ自体を知っているとはいえ、生まれた経緯に関してはそこまで詳しくもないので、こんな感じで生まれたのかというざっくりとした略歴を知ることが出来る。
栄枯盛衰というものの、そのギャグ自体は別に終わったわけではないと一ファンは思っている、とだけ前置きしておく。
(これもボケだと分かっている)
生まれた経緯からざっと流れ、最後の結末はエンタメとして終わりを迎えた(設定になっている)。
かなり長尺のセリフを一度も嚙まず、一人芝居を広いステージの上で繰り広げる木﨑さんを見ることが出来た。
・カベポスター 永見さん
彼は、自分自身はステージでストーリーテラー形式を取り、卒業式の呼応スタイルで呼応する部分のセリフを別室にいる木﨑さんに言ってもらうのではなく、表情を使って表現してもらうというスタイルを取った。
木﨑さん曰く、当日まで何をするか永見さんからは一切聞かされておらず、ずっと不安とのことだった。
しかし、永見さんの創り出す木﨑さんを使ったエンタメは、事前に内容を知らない方が成立していたのだ。
その場でセリフを聞いて表情を作る木﨑さんの器用さも然ることながら、木﨑さんの顔が好きだという永見さんの形に合った、素敵な演目であった。
最後にもう一度繰り返された”あの”表情は、引き出した永見さん、そして当の本人も知ることのなかった表情であった。
・翠星チークダンス 木佐さん
今回のイベントの中で、私が最もレンタルした人の世界観に引きこまれた、そんな演目だった。
最初は、十何年ぶりに大学時代の女友達から連絡が来るところからスタートする。
他愛もない会話が繰り広げられる中で、途中で話の風向きが一気に変わる。
『共通の友人であった女性が殺された。』
そこから話は一気にホラー味を帯び、最後のシーンでは客席から若干の悲鳴が上がるほどのものとなった。
祇園さんが今の漫才スタイルになるまでは、暗めのコントが多くその辺りを彷彿とさせた。
木﨑さんの芝居がとても自然で、着ていた衣装も木佐さんの要望で、実際自宅で着ていらっしゃる私服だったこともあり、全体の雰囲気を通して違和感を感じることは一切無かった。
私が、この演目に一番惹かれた理由は、私自身が本が好きだからである。
何が関係してるんだ、本のほの字も出てこないじゃないか、そう思うだろう。
実際、本なんて出てこないし、仰る通りなんだが、私が本を読む時の感覚を説明したいと思う。(は)
物語を読むにつれて、話は進んでいく(そりゃそうだ)が、脳内で映像化してドラマのようになるのが、私の読み方である。
木佐さんが木﨑さんを使って作り上げたエンタメというのは、その脳内で再生されているドラマを現実世界に落とし込んだ形だったのだ。
だから、私にとっては具現化された小説を読むように見ることが出来た感覚が最高にハマったのである。
話中には、いくつか仕掛けがある(木佐さん談)という凝った作品であり、何度も見返したくなる、そんな演目だった。
・爛々 大国さん
彼女は、今回レンタルした人で唯一の女性だった。
彼女にはファッションセンスがとてもあり、木﨑さんはそれをよく楽屋で褒めているということから、彼女的に褒めてほしいポイントを当てるというスタイルを取った。
木佐さんのホラーの後に、この企画は癒しだった。
(いかに怖さを極めていたことがよく分かるだろう。)
大国さんの着替えを待機している間は、木﨑さんが小話をしたり駄々をこねたりと大国さんオーダーの木﨑さんが、いい意味で暴れていた。
見ている側としては、絶対に当たらないポイントを褒めてほしいのか、大国さんと思いながら、微笑ましい雰囲気の演目でとても素敵だった。
・ダブルアート タグさん
彼は、違うイベントで映像編集を手掛けているやり手である。
事前に彼のTwitterでグリーンバックのところで木﨑さんがなんかかしやっている(やらされている)動画を拝見していたのでどんな作品が仕上がるのか楽しみにしていた。
何のために言わされたのか分からないセリフの数々、何のためのポーズか分からないまま指示通りに動いた木﨑さん。
完成形を見るや否や、ここがこうなったのね!と合点がいった様子。
終始そんな感じで、細かいところにもこだわりが詰め込まれており、映像作品なんてこれっぽっちも作ったことない私からしてみれば、どんな風にどうしたのかは分からないけど、なんかとにかく凄いということだけは分かった。(素人)
途中には、ネイビーズアフロのはじりさん、ジュリエッタの井尻さん(韻踏んでんのかと思った)も出演しており、編集の協力者としてポートワシントンの笠谷さんもいらっしゃった。
世界観としては謎に包まれていたが、木﨑さんの知らなかった一面を知ることが出来たので、ファンとしては大満足である。
・ロングコートダディ 堂前さん
さて、最後のレンタルした人となった。
堂前さん自体、謎多き人なのでどんな感じで来るかなと思っていた。
箱を開けてみたら、コンセプトとしてはマジックショーだった。
まぁ、普通のマジックショーにならないことは前述で察していただきたいのだが。
木﨑さんがマジシャンの格好で出てきたところまでは、普通だった。
次に堂前さんがバニーガールの格好で出てきたので、衝撃的すぎた。
(全体的に細身なので、羨ましいことこの上なかったが。)
演目としては、箱の中からマジシャン脱出というシンプルなもの。
見ている人たち参加型のエンタメで、なかなかコミュニケーションの取りづらいご時世が続く中なので、一緒に楽しんでいる感があってとても良かった。
最後に、まさか木﨑さんをレンタルした真輝志さんまで巻き込まれていくとは、誰も予想だにしておらず、暗転していたステージの中にぽつんとあるロッカーの中から、明転して2人出てきたときは、客席から驚愕という感じのリアクションが感じられた。
(私もそのリアクションをした一人なんだが。)
この一連の流れを見て分かる通り、堂前さんの謎ワールドに木﨑さん諸共、客席にいた私たちまで引き込まれ(巻き込まれ?)、よく分からないけど面白い、そんな演目だった。
さぁ、どうだろうか。
観終わった後の充実感は近年稀にない感覚で、今年行った漫才劇場の企画・イベント物でもっとも良かったと言っても過言ではない。
(今年始まってまだ1ヶ月半なんだが。)
このイベントを考えた作家さん、主催を快諾(?)した木﨑さん、レンタルした6人には一人ひとりに金一封を気持ちだけでも差し上げたい。
二回目も決定している、と最後に木﨑さんがおっしゃっていた。
行くしかないでしょう、絶対に。
祇園のファンとしてはもちろんだが、このイベント自体のファンとしてとても楽しみにしている。
次は、どんな木﨑さんを見られるのか。
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