見出し画像

模擬試験前後の対策はどうあるべきか?

「模擬試験対策」をすべきか、すべきでないか?―学校としての姿勢
石川県の小中学校において、全国学力調査直前に、授業時間を使って過去問対策を行っていたことが明るみに出て、行き過ぎた事前対策だとして問題になっています。管理職の指示で学校ぐるみで組織的に行われたものか、教科担当が個人的に行ったものかはわかりませんが、少なくとも「わが校の、わが市の平均点を他よりも高くしたい」という思惑が動機となっていることは確かです。学力調査の趣旨を無視し、授業を削って対策し平均点を上げて見栄えをよくしようといった料簡の狭さがその批判の的になっているわけです。しかしより根源的には、児童生徒個々を、全体の平均点を上げるためのn=1に過ぎない存在に還元してしまっていることに問題がある気がします。ここには2つの根本的な「欠落」があります。一つは、児童・生徒個々の学力の到達度を把握し、その定着・向上を図るという学校教育の本質的な姿勢の欠落です。もう一つは「全国学力調査」を学びの成果を測る指標として機能させPDCAサイクルに位置付けるカリキュラム・マネジメントの視点の欠落です。こうした姿勢・視点をなおざりにし、「全国学力テスト」ひいては児童・生徒を、相対的な優劣を図るための手段として扱うという過ちを犯しているわけです。行為そのものが批判されるのは当然として、そうした行為に及ぶ学校教育現場の「本質的な目標の見失いぶり」こそ憂慮すべきではないでしょうか。

 しかしながら、実際問題としてこうしたアセスメントテストを受けるにあたって、児童生徒一人一人がその力を十分発揮するために、問われ方や時間配分などを知っておくことは必要ではないでしょうか。また学校として普段の授業との関連を意識づけることは、学びの方向性の確かさを補強する意味でも大切なことだと考えます。このことから、アセスメントテスト事前事後対策に必要な視点が見えてきます。事前については①児童生徒が個々に自身の資質能力の強みと弱みを把握できているか(把握できるような指標を明示しているか)②授業者が、アセスメントテストで求められる資質能力と普段の授業のねらいとのつながりを児童生徒に説明できているか、この2点が重要です。つまり、ここが意識されず言及されないまま、ただ過去問をやらせるのが「対策」であり、この2点について普段から児童生徒・授業者双方の共通理解がなされている状態で過去問に取り組むならば、それは「準備」として位置づけられます。つまり、「対策」と「準備」の違いは、カリキュラム・マネジメントがしっかり機能しているのか・いないのかの違いだといえます。この視点なしで「対策は是か非か」を論じても、「卑怯だからやっちゃダメ」という表面的な結論どまりで、「対策に走りたくなってしまう学校」が抱える根本的な課題に目が向けられないままで終わってしまいます。

 事後については、各設問ではかられた資質能力はタグ付けされているので比較的に対策はしやすく、傾向として不得意だったポイントに重点を置いた授業改善を行うことができます。こうした、事前・事後を貫くアセスメントテストの位置づけと伸ばすべき学力について、全教員が共通認識を持ち、日々の指導に当たることが何よりも重要なのではないでしょうか。学校現場においては「事前対策アリかナシか」という単純な議論に終始せず、こうした事案をきっかけとして学力形成の本質に目を向け、学校の教育目標・身につけさせたい資質・能力、学力について共通理解を図り、一貫性を持った具体的な手立てを考え実践する道筋をつけたいところです。



 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?